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見つめ直そう

 CoSTEPが10年目を迎えました。ひとえに、多くの方々から頂いた支援の賜物です。厚く御礼を申しあげます。

 節目を迎え、これまでの成果に誇りを持ちたいと思います。でも、真摯に見つめ直すことも大切だと思います。そこで私は、憎まれ役を買って出ることにしました。皆様から頂いたご厚意にお応えすることになると思いますので。

 科学技術コミュニケーションの推進が謳われてから、もう9年。なのに、科学技術コミュニケーションはちっともその存在感を示しえていない。私は忸怩たる思いで一杯です。

 しばらく前のある新聞に、こんな記事がありました。「新型の出生前診断の検査項目が、アメリカで急速に拡大され、ほとんど症状の出ない異常も含むようになってきた。日本でも同じ動きが出てくる可能性がある。早急に国民的な議論を始める必要があるのではないか。」

 大手メディアは「国民的な議論が必要だ」と締めくくります。では、だれが、どうやって、国民的な議論の場を作り、運営していくのでしょう?科学技術コミュニケーターの出番ではないのでしょうか?(これはもちろん、ほんの一例です。)

 科学を理解し信頼する「仲間を増やす」。科学技術コミュニケーションの重要な任務です。それと同時に、仲間と仲間が立場や意見を異にするとき、それらステークホルダー間に「対話の架け橋をする」。これも重要な任務でしょう。

 後者の任務は、科学技術コミュニケーター「個人」には難しい。でも「組織」には、できる可能性があります。挑戦する社会的責任もあります。首を突っ込んでも簡単にうまくいくとは、もちろん思いません。しかし始めないことには、何も変わらないでしょう。

 「CoSTEP私史」をまとめてみて、気づいたことがあります。CoSTEPはこれまで、本体の活動とは別に、その周囲に様々な実践活動―自ら計画したものもあれば、外からの依頼に応える形で行なったものもあります―を配置することで、活動に厚みを加え、多様性も作り出してきました。「対話の架け橋をする」ことに挑戦し、もがいてきたのだと思います。

 CoSTEPは、「実践を通して学ぶ」ことを標榜してきました。そこで学ぶのは、単なるスキルではなく、科学技術コミュニケーションです。単なるスキル教育に陥らないためにも、多様で厚みのある実践活動を行うことが大切ではないでしょうか。

 研究者や市民と積極的に交流するなど、「現場」に出て行くことも軽視してはいけないと思います。研究室でネットの情報を見ているだけでは限界があります。CoSTEPは大学内にあるのですから、このメリットを活かさない手はないでしょう。

 大学といえば、MOOCs(Massive Open Online Courses)を北大でも開始する予定だと聞きました。そしてCoSTEPも関与する予定だとか。MOOCsは、科学技術コミュニケーションの展開にも、大きな可能性を秘めていると思います。CoSTEPの、そして科学技術コミュニケーションの、いっそうの発展に繋げてくださることを祈念します。

2014年7月

北海道大学大学院理学研究院特任教授
CoSTEP 初代 代表
杉山 滋郎