2014年09月18日

お知らせ

札幌国際芸術祭2014「サイエンスと映像で迫る!知床・ヒグマたちの暮らし」を開催

9月15日、CoSTEPが主催したイベント「All you need is wonder 〜サイエンスとアートが世界を変える〜(第一夜)サイエンスと映像で迫る!知床・ヒグマたちの暮らし」が札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)北3条交差点広場において開催されました。

 

 

語り手に北大獣医学研究科准教授の下鶴倫人(しもづるみちと)さん、NHKエンタープライズ自然科学番組部ディレクターの天野元裕(あまのもとひろ)さん、ゲストに動物カメラマンの新山敏彦(にいやまとしひこ)さん(ニューピークフィルム)を迎えて、北海道・知床に暮らすヒグマの生態に関する研究内容や、番組制作の裏側や番組に込めた思いなどについてお話を伺いました。科学と映像の協働によってどんな成果や価値を生み出すことができるのかということも隠されたテーマです。

 

 獣医学研究科 下鶴 倫人准教授

 

 新山敏彦カメラマン(左)と天野元裕ディレクター(右)

 

天野さんらNHK取材班は、30頭以上が暮らすヒグマ密集地帯、知床半島・ルシャ地区にて、下鶴さんたちのヒグマ研究チームの助けも借りながら、NHKスペシャル「知床 ヒグマ運命の旅」(2014年8月3日放送)という番組を制作しました。知床で4年間にわたりヒグマを撮影した膨大な映像素材を、下鶴さんらの綿密な調査記録に基づいて血縁関係などから紐解いたのです。大学とメディアが協働することで、ヒグマたちの血縁関係だけでなく彼らの個性や人生(クマ生)にまで迫ることのできた、かつてないリアルなヒグマ・ドキュメントです。

 

 

会場ではNHKスペシャルの予告編(5分)など、様々な映像を流しました。すると、たまたま通りかかった人も引き寄せられるように会場に来てくださいました。アンケートでは32名中13名が「たまたま通りかかって」と答えていて、映像が持つ力を感じました。参加した方の中でも「ヒグマそのものに興味」(19名)が最も多かったのはもちろん、「科学と映像というテーマに興味」(11名)、「NHKの番組に興味」(10名)という回答がありました。

 

 

野生のヒグマをここまで徹底的に追跡出来た取材は、世界でも初めてかもしれません。その原動力となったのは、NHKディレクターの天野さんや自然カメラマン・新山さんらの粘り強い取材ですが、それを下鶴さんら獣医学研究科・野生動物学教室メンバーたちの、徹底的な調査研究とたゆまぬ努力が支えていました。

下鶴さんらは、ヒグマ一頭一頭を個体識別して、どれくらいのヒグマがいるのか、どんな生活や繁殖行動をしているのか調べました。個体識別だけでなく、糞を拾ったり、体毛からDNAをとるなどしてヒグマたちの暮らしに迫っていきます。会場ではそうした研究内容や調査の様子について詳しく話してもらいました。

 

 

今回は来場者にヒグマ識別クイズをやってもらったり、ヒグマの剥製の毛皮を頭からかぶってもらう、頭骨を実際に手に持ってエゾシカと比べる、ヒグマの赤ちゃんと同じ重さの人形を抱いてもらうなど、たくさんの体験をしてもらいました。

また下鶴さんからは「ヒグマと出会ったらどうしたらいいか」という問いに対して、具体的なアドバイスももらいました。NHKの天野さんには実際にヒグマに出会った時の驚きや恐怖、どう対峙すべきかという心構えについて体験談をもとにお話していただきました。

 

 

NHKスペシャルでは、生後半年から追いかけていた若いオスグマの兄弟が、何度も知床の市街地に出てきてしまい、最後には悲劇的な結末を迎えます。過酷な現実ですが、人とヒグマが同じ大地で暮らす以上、避けられなかった事態といえます。野生生物と共存するとはどういうことなのか、非常に考えさせられるエンディングでした。

 

 

下鶴さんはこうしたヒグマたちの暮らしについて、これからもさらに科学的な事実を明らかにし、天野さんはそうした科学的データをもとに、視聴者の心に届く番組を作っていきたいとのことです。こうした情報を市民に伝えることで、ヒグマとの共存について考えるきっかけにしてほしいというのが2人の願いです。

あっという間の1時間半。アンケートに答えてくださった全ての方から「満足」だったという評価をいただくことができました。下鶴さん、天野さん、新山さん、どうもありがとうございました。