2016年06月25日

授業レポート

「『表現としての科学』の可能性から科学を再考する」 5/28岩崎秀雄先生の講義レポート

金澤 幸生(2016年度 本科/社会人)

 

 

科学と芸術を「ぶつけあう」

 

今回の講師は、早稲田大学理工学部の岩崎秀雄先生。

岩崎先生はもともと切り絵を専門とするアーティストでした。生命科学の研究者としても活躍する中で、科学とアートを「ぶつけあう」活動を始めたと言います。先生の研究室には、生命論や生命思想にまつわる表現を核にしているアーティストが出入りし、作品が生まれています。

 

 

(左:岩崎先生の作品「Cluturing <Paper> cut」。科学論文を芸術の立場から再解釈した作品。切り絵、科学論文における図表、更に論文中のエゴイスティックな表現を切り取ったテキストに培養されたバクテリアが作る模様が絡み合っている。/右:岩崎先生の研究室に出入りしているBCLのアーティストユニットが手がけたプロジェクト「Common Flowers」。遺伝子組換え植物の所有権、また市民はそこにどのように関与するかを問う芸術プロジェクト。)

 

 

メビウスの輪を生きる

 

作品を元に、科学とアートの関係を解き明かしていく岩崎先生。人間が行う活動の総体をアートとして捉えた場合、アートの中に科学は存在しますが、科学は自然を対象としており、人間はその自然の中に存在している…そんな科学とアートのメビウスの輪のような構造が、先生の活動の核となっているそうです。

アートや科学を表現様式の違いとして位置づけ、人間は様々な表現様式を持っていると語る岩崎先生。その表現様式を、ある時は科学、ある時はアートというように、適切に使っていけることが教養ではないかと先生は説きます。

 

 

アートによる科学表現

 

現代の実験科学においては、実験におけるデータの考察だけではなく、実験結果の学会発表や論文の発表、そして研究費用の調達など、資本主義的な側面としての成り立ちがあります。そして、こうした側面には、不正行為などが必然的に生まれてしまう病理があると岩崎先生は指摘します。

資本主義的な流れに乗らなくとも、科学を続けていけるような手法はないか考える上で、アートによる科学表現は重要な示唆を与えてくれると言います。そして、岩崎先生は、研究室という集団で行う集団的な科学だけではなく、自宅での研究やアート作品といった代替手段を提案します。

 

(岩崎先生のご自宅のラボの写真)

 

 

「科学とは何か」科学コミュニケーションにおけるこの重要な問いを考える上で、アートによる科学表現は、私たちの科学に対する捉え方に大きな示唆を与えてくれました。そして、アートとの比較やアートによる科学表現から、現代の科学が持つ構造を今までとは違った視点で考えることができました。

岩崎先生、どうもありがとうございました。