2016年09月06日

活動報告

日本デザイン学会 グッドプレゼンテーション賞 受賞記念インタビュー・村井貴さん

 

日本デザイン学会の第63回春季研究発表大会(2016年7月1日~3日/長野大学)において、村井貴さん(CoSTEP 特任助教)が「ウェブデザインの体系的分類に関する研究」でグッドプレゼンテーション賞を受賞しました。本賞は数多くの研究の中でも、特に優れた内容を有しており、今後の概要作成や発表のあり方の規範となるものが評価されて受賞者が決まります。今回は村井さんに受賞記念インタビューを行いました。

 

 

ーー 研究の目的を教えてください。

 

インターネット上に無数に散らばるウェブサイトのデザインを分類して、“系統樹”と呼ばれるものを作っていくのが目的です。系統樹というのは一般的には生物の分類に用いるものですが、これを私の専門分野であるウェブデザインに適用できないかと常々考えていました。系統樹を使うと、生物間の類縁関係を視覚的に描くことができます。この手法を応用して、本研究ではウェブデザインの類縁関係を明らかにします。生物の進化のプロセスに比べ、ウェブデザインの進化は驚くほどの速さで進んでおり、その来歴をまとめようにもなかなか収拾がつかない状況に陥っています。長い時間をかけて人間の手で鍛えられてきた分類学の考え方で、ウェブデザインを客観的にまとめ、ウェブデザイン史に資することができれば、研究としては成功だと思っています。

 

ーー 現在はどのあたりまで研究が進んでいるのでしょうか。

 

まだ、スタートしたばかりの状態です。日本デザイン学会の大会では、現段階で考えている研究の構想を披露して、他の研究者から意見を頂戴するのが目的だったのですが、まさかグッドプレゼンテーション賞をいただけるとは夢にも思っていませんでした。研究のスジとしては悪くはないということなのだと信じて、このまま進めていく予定です。ただ、順調に進むかというと、そう簡単ではないと考えています。生物学における類縁関係はDNAの塩基配列の変異に基いているので、客観性を確保できますが、それに相当するものをウェブデザインの中から見つけなければいけません。それが当面の課題です。

 

ーー 大会で発表するにあたり、プレゼンの秘訣などありましたら教えてください。

 

なにも特別なことはしていませんが、敢えて挙げるとするなら、“自分の言葉”で伝えるということでしょうか。よくやりがちなのが、事前に完成度の高い原稿を用意しておいて、それをただ読み上げるスタイルの発表です。これをすると、抑揚がなくなってしまいますし、目を原稿に落とすので、来場者の方々の顔を見ながら訴えかけることができなくなってしまいます。原稿を用意してもいいですが、何度も何度も練習して諳んじるところまでいけば、発表の時は読み上げなくても、流暢な言葉が出てくるはずです。だから、私は練習を繰り返しました。

 

(第63回春季研究発表大会での口頭発表の様子)

 

どんなことにも近道はありません。愚直に真面目に取り組むことが、やはり正しい道なのだと思います。加えて、大切なのは練習を誰かに見てもらうことですね。スライドのデザインや話の進め方など、微に入り細に入りアドバイスをもらうと、プレゼンの質はぐっと高まります。私は練習の際、城間祥之先生(札幌市立大学大学院デザイン研究科 研究科長・教授)に見ていただきました。我流で進めていると気づかぬところでミスをするものです。城間先生から客観的な視点で指摘を受けたことで、内容がより精緻になったと思います。城間先生には感謝の念しかありません。

 

ーー 今回の受賞はこれからのCoSTEPでの教育研究活動に生かせられそうですか。

 

もちろんです。私はCoSTEPのスタッフですから、CoSTEPのために自分はなにができるのかを四六時中問い続けています。ウェブデザインを教えつつ、その背景にあるものも伝えながら、それを実践的あるいは学術的なレベルまで高めていくことで科学技術コミュニケーションの新たな地平を開くのが私のミッションです。今回の研究発表は学術的なレベルのものであり、その意味ではこれからの教育研究活動に役立つ成果であると考えています。

 

CoSTEPのスタッフは多種多様なバックグラウンドを持っており、それがCoSTEP最大の強みだと思っています。CoSTEPではコミュニケーションデザイン、科学展示、映像、ライティング、社会学、アート、インタビュー、生態学、ウェブデザインといった専門分野を持ったスタッフがお互いに切磋琢磨しながら、厚みのある教育研究活動を目指しています。例えば、本研究における系統樹のアイデアは同僚スタッフとのやりとりの中でヒントを得ました。自らの専門性を高めることは大切なことですが、時に近視眼的になって、袋小路に陥ることがあります。そんな時に、異分野の研究者・実務家からアドバイスをもらえると、思わぬ突破口を開くことができます。CoSTEPの力の源泉はまさにそこにあると私は確信しています。

 

ーー 最後の質問です。ちょっと嬉しいことがあったようですね。

 

はい。日本デザイン学会では研究発表する際に、概要集と呼ばれる原稿の提出が求められるのですが、その原稿がJ-Stageに登録された後に、系統樹研究で著名な三中信宏先生(国立研究開発法人・農業環境技術研究所・生態系計測研究領域 上席研究員)のツイッターで紹介されました。これは受賞の喜びに匹敵するくらい感慨深いものがありました。本研究を進めるにあたり、三中先生の著作は絶対に通らねばならない道です。まだ途上の研究であるにもかかわらず、ご本人の目に触れたことは嬉しい限りですし、今後の励みにもなります。

 

(概要集の原稿と表彰状)

 

あと、これは全くの偶然なのですが、私が聞き手を務めた第89回サイエンス・カフェ札幌「働き方にも、いろいろアリ ~社会性昆虫に見る 組織の持続可能性~」(2016年7月31日開催)のゲストである、長谷川英祐先生(北海道大学大学院農学研究院 准教授)と三中先生は旧知の間柄のようで、不思議な縁を感じています。なにかおもしろいことができたら素敵ですね。