2017年03月22日

活動報告

第93回サイエンス・カフェ札幌「石の中の銀河 ~太陽系の記憶は地球深部に眠る~」を開催しました

栗原利奈 (2016年度本科/学生)


2017年2月19日(日)に、北海道大学総合博物館・理学院准教授の山本順司さんをゲストにお招きして、第93回サイエンス・カフェ札幌「石の中の銀河 ~太陽系の記憶は地球深部に眠る~」を開催しました。

 

※記事の後半ではカフェの中でいただいたご質問と、それに対する山本さんの回答を紹介しています。

 

寒さが厳しい2月ですが、山本さんのお話を聞きに140名近い参加者が紀伊國屋書店に集まりました。今回のカフェでは、これから北海道大学を目指す若い世代に研究者と話す機会を設けたいという思いから、山本さんとより近い距離でお話しできる「学生ゲスト」も募集しました。また「参加者全員と話したい」という山本さんの希望から、なるべく参加者の声を吸い上げられるようにリアルタイムに質問できるシステムを使用しました。

 

(最前列に座る学生ゲストの皆さん。山本さんのお話にドキドキしながら開始を待ちます)

 

「私たちはどうやって生まれ、そしてこれからどうなるでしょうか。」
自身のルーツを探すこの問いに、山本さんはご自身が専門としている地球化学の視点から答えようとしています。山本さんによると石を分析することによって得られる情報から、地球の奥深くや太陽系の歴史を知ることができるそうです。誰もが見たことのある「石」から、宇宙のことまで分かるかもしれない。そんな壮大なロマンとともにお話は進んでいきました。

 

(140名近い参加者が集まりました。いよいよカフェが始まります)

 

第1部は「石からわかる地球の内部」についてのお話でした。地球の内部に直接触れるには地下深くまで掘らなければなりません。しかし人類が実際に到達できているのは、深さにしてわずか10kmほどです。これでは山本さんが知りたいマントルまでは届きません。
そこで考えたのがマントル捕獲岩を使う方法だと言います。マントル捕獲岩とはマントル内で発生したマグマが地表に噴出するまでに、マントルの石が捕獲されてきたものだそうです。その中でもかんらん岩を分析することで、地球の内部の圧力や化学的な情報を得られるとのことで、そのための分析機器も自作する徹底ぶりには驚かされました。

 

(指し棒にしていたのは実は「牛殺し」という石割ハンマーの柄。しなりがいいんだとか)

 

続く第2部では地球の話から拡大し、「石からわかる太陽系」についてお話をしていただきました。はやぶさプロジェクトでは小惑星から太陽系の歴史を知ろうとしていますが、山本さんは小惑星が使えるなら惑星である地球も使えるはずだと考えました。そこで注目したのが地球内部の情報と地球の大気です。それらを調べて隕石と同じような情報が得られれば、地球から太陽系形成の謎が解き明かせることになるそうです。
調査のために時には深海まで赴くという山本さんのお話に、参加者は興味津々でした。

 

(深海を調査している時のお話。調査はなかなかハードだったようです…)

 

お話の最中には一番前の席に座る学生ゲストや会場から様々な質問が飛びました。
第3部の質疑応答では「山本さんはどうして石探しをしているのですか」という鋭い質問もありました。それに対する山本さんの答えは「自分のルーツを知りたい」とのこと。子どもの頃から世界がどうやってできたか、これからどうなっていくのかということに非常に関心が高かったそうです。宇宙飛行士を目指した時もあったそうですが、地球も宇宙だと気付いてからは、地球を調べることでこの宇宙の始まりを知ろうと思い始めたとのことでした。

 

(高校生を中心とした学生ゲストが積極的に質問してくれました。中には小学生のゲストも!)

 

山本さんは北海道大学総合博物館の教員でもあることから、今回のカフェでは山本さんのお話にちなんだ展示も行いました。山本さん愛用の道具や今回のポスターで使用された「地球石」、研究対象の石などを並べて、参加者が手に取りながら見ることが出来るようにしました。また山本さんのお話を聞くことで、展示資料の間にあるつながりやストーリー性を見出して欲しいというメッセージを込めました。終了後には参加者と山本さんのお話に花が咲いていたようです。

 

(ポスターデザインに使用された「地球石」。今は山本さんのお部屋にあります)

 

(展示を手に持ってじっくり見ています。その先に太陽系が見えるでしょうか…?)

 

(参加者に展示の解説をされる山本さん。愛用の道具に関するエピソードも面白いです)

 

道端に転がる身近な石ころから、地球の、さらには太陽系の歴史が分かってしまうかもしれない。そしてそれは私たちのルーツにもつながってくるのかも・・・。そんなロマンと驚きを感じさせてくれる山本さんのお話でした。

 

(学生ゲストとスタッフの集合写真。カフェが成功に終わり笑顔が溢れます)

 

今回のカフェでは学生ゲストをはじめ、リアルタイムでコメントが投稿できるQ&Aシステム、展示解説など、参加者とゲストの対話が生まれるような工夫をいたしました。いただいた様々な意見を参考にしながら、今後もより良い対話の場のための工夫を続けてまいります。

 

【お知らせ】
山本さんは皆の力で展示を作り上げたいとの思いから、現在クラウドファンディングにも挑戦されています。目標金額は80万円。このお金で北大博物館に100万分の1スケールの地球断面図パネルを作りたいとのことです。
*詳細は以下のURLをご参照ください。
https://academist-cf.com/projects/?id=40

 

 

本イベントは、CoSTEP対話の場の創造実習の受講生が企画・運営を行いました。

対話の場の創造実習:
片島幹太
栗原利奈
越谷由紀
藤井真知子
増田到

 


===カフェの中で寄せられた参加者からの質問に山本さんがお答えくださいました。以下で紹介します===
 

*カフェの中ですでに回答されたものに関しては省略しています。

 

【Q&Aシステムに寄せられたご質問】

~地球に関するご質問~

 

・地底人っているのですか?? by宇宙人

 →今のところ学術誌への報告はないようです.

 

・ハワイの火山から出てるのと、日本の火山から出るのは違うモノなの? byナビオ
 →ハワイの火山から出る溶岩は水晶の成分が少ないものばかりですが,日本の火山から出る溶岩は水晶の成分にかなりばらつきが見られます.このばらつきの主な原因としては,マグマが地球深部から上昇する途中で水晶成分の少ない鉱物が生まれ,マグマから取り去られるためという可能性と,マグマが上昇する途中で周りの岩石と混じり合ったためという可能性が提唱されています.そのほかにも日本の下に沈み込んだ海洋プレートそのものが溶けてマグマとなって上昇してきたためという可能性があります.

 

・何故「40億年」より前の状態を保存していると分かっているのでしょうか? byあろさわ
 →正確に言いますと,40億年以上前の状態がそのまま保存されているわけではありません.地球内部にも放射性核種(ウランのように放射壊変を起こすもの)が存在します.それらが放射壊変を起こすと放射壊変起源核種が生まれ,地球内部に蓄積されます.そのため,古い時代から隔絶された場所が地球深部にあったとしても,その化学組成は少しずつ変化します.しかし,放射壊変に関係しない元素や核種に注目した場合,特に海洋島溶岩から隕石に見られる化学組成に似た値が報告されつつあります.こういった成分が地球形成後随分経ってから地球深部のみに入り込む可能性は考えにくいので,地球形成直後から孤立したものではないかと推察されるのです.

 

~宇宙に関するご質問~

 

・はやぶさのプロジェクトにも関わっていたのですか? byこうた
 →私自身はまったく関わっていませんが,北海道大学で一緒に働いているメンバーらはサンプルの化学分析に携わっています.2020年にはやぶさ2が持ち帰ってくるサンプルも彼らの元に届くと思います.成果をご期待下さい.

 

~山本さんに関するご質問~

 

・第3125代温泉名人表泉家とは、どういうものですか? by猫にゃん♪
 →大分県別府市の観光協会が実施している温泉道段位認定システムで,指定された温泉を数多く経験した方に段位を進呈しています.その最高ランクが名人かと思いきや,実は表泉家の名人になると裏泉家への挑戦権が与えられます.みなさんもどうぞ挑んでみてください.

 

・山本先生の胸ポケットにあるものは?
 →熊の手スタイルの差し棒でした.ほかにもオパールでデコレートされた差し棒も愛用しています.

 

・現役の研究者から見て、いまの中高生に学んでおいてほしいこととは何でしょうか? by創成
 →将来なりたい自分を思い描いて,それに必要なものをどん欲に学んでほしいです.それとともにほかのことへの好奇心も持ち続けてほしいです.

 

・どうして先生はこの研究を始めたのですか? by赤星
 →私たちのルーツを知りたいという子どもの頃からの素朴な疑問に答えるためです.歴史学や考古学にも興味を持っていますが,人類を生み出したこの地球や宇宙の進化過程を知りたいと思って今も研究を続けています.

 

・山本先生はどちらの立場なんですか?(物理、化学)
 →真実の地球内部像は一つしかありません.ですから観点によってモデルが異なるのはおかしなことで,どの観点から見ても矛盾がない地球内部像を求めて研究を続けています.現在は物理的地球内部像が主流ですが,化学的地球内部像と明らかな矛盾があるため,劣勢な化学の立場が潰えないよう踏ん張っています.

 

【質疑応答の時間に寄せられたご質問】

~地球に関するご質問~

 

・宇宙人(地球以外に生息する生物)の有無は確認されていますか?それともスピリチュアル的に信じますか? byほのか
 →単純に宇宙人は地球のほかにもいるだろうと思っています.それは,ほかの太陽系と比べて,私たちの太陽系がそれほど変には見えないからです.少なくとも,生命体がほかの太陽系にもいることを否定する根拠を持っていません.

 

・もう地球の海底まで(日本の近くの海はもっと深いと話していたが)行けるようになったのですか byゴウ
 →はい.無人潜水艇はもちろんのこと,有人でもまっすぐ海底に降りるだけならマリアナ海溝の世界最深部まで行けるようになっています.しかし,そこで横方向に動いて探索することはできていません.しんかい11000が建造されたら行ってみたいですね.

 

・地面のどのくらい深いところまで見れるんですか byあやね
 →ソヴィエト連邦がコラ半島でおこなった超深度掘削で12262 mまで掘られています.これは地殻上部を見たことになります.マントルに到達するためにはこの3倍以上掘らねばなりません.

 

・石の中の圧力をなんで測ると地球のことがわかるのかが、まだわかんないです byかなこ
 →火山が噴出させる溶岩の中に,地球深部の石が捕獲されていることがあり,それを捕獲岩と呼んでいます.この捕獲岩を調べれば地球深部のことがわかるのですが,どのくらい深いところからもたらされた岩石なのかがわからないと,調べた結果をどのように解釈したら良いか判断できません.例えば地下5 kmだと地殻ですし,地下50 kmだとマントルなので,捕獲岩がどのくらいの深さにいた岩石なのか調べないとその学術的価値が発揮されないのです.

 

・どうしてかんらん石を採取するんですか?(他の鉱物じゃだめなのかなぁと)。あと、なんで玄武岩?なのかなぁって byボンゴレイ
 →かんらん石は溶ける温度がかなり高い鉱物です.逆に言うと,マグマが冷えるにつれて最も早く結晶化する鉱物です.ですからマグマがまだ深い場所にいた頃の情報を最も多く含んでいる鉱物だと考えられます.次に玄武岩についてですが,マントルのかんらん岩が溶けてできるマグマは玄武岩の成分を持っています.ですからマントルの情報を調べるには玄武岩が最も適しています.

 

・流体包有物について。液体はどのようにして固体の中に入るのですか? byだんろ
 →いろいろな可能性がありますが,マントルの場合について記します.マントル(岩石)の中をマグマ(液体)が上昇するにはマントルを割るか溶かすしか術がありません.そのようにしてマントルを構成している鉱物の隙間や割れ目をマグマが通過すると,その通り道は高い圧力によってふさがっていきます.そしてマグマの一部が鉱物内に取り込まれ,鉱物に入りやすい化学成分が抜け出すと二酸化炭素や水が残ります.これがマントルの流体包有物です.

 

・流体が含まれる捕獲岩の%は? byハジメ
 →私の経験では,ほぼすべての捕獲岩に流体包有物が見られます.ただし,その流体の成分は捕獲岩によって異なるので,地球深部では様々な流体が縦横無尽に動き回っているのだろうと思っています.

 

・かんらん岩は何故、マグマに溶けないのか byタクト
 →かんらん岩を構成している主要な鉱物の中で最も溶ける温度が低いのは単斜輝石で,それでも1400°Cくらいまで溶けません.捕獲岩に単斜輝石が残っているならば,その温度は単斜輝石の溶ける温度より低かったということでしょう.

 

・マグマによって地上に出てきた石で最も深いところから来たものはどのくらいの深さからなのですか by4DT
 →ブラジルで採れたダイアモンドの中に,下部マントルの温度・圧力環境で安定な鉱物が見つかっています.ですから660 kmよりも深いところにいたダイアモンドだと考えられています.当然ですが,このダイアモンドを運び上げた溶岩はそれ以深から上昇してきたということですね.

 

・アポイ岳あたりのカンラン石とハワイとかのカンラン石はどう違うのでしょうか by4DT
 →アポイ岳のかんらん岩はプレート同士の衝突によってマントルの一部がめくれあがったために現在地上で見られるものです.ですからその衝突の過程で様々な現象が起こっており,マントルの姿と言うよりは,プレートが衝突した事故現場を見ていると考えた方が良いでしょう.一方でマントル由来の捕獲岩はマグマによってマントルから数十日間程度で運び上げられたものであるため,マントルのスナップショットと言えると思います.

 

・様似のカンラン岩の分析で地球内部のことで何か解明できたことはありますか
 →大変多くのことがわかっています.あれだけ大規模にマントルから地殻まで一連の岩石構造が観察できる場所は地球全体を見渡しても大変珍しいため,日本の真下に一体どのような岩石が存在するのか,またそこでどんなことが起こっているのか,それらを如実に見せてくれるのが様似のカンラン岩です.ぜひ「アポイ岳地質研究所」をおたずねください.

 

・北海道では「かんらん石」というと、アポイ岳が有名ですが、アポイ岳のかんらん石はハワイのに比べて研究目的には向いていないのでしょうか? byしま
 →研究目的によって使い分ければ良いと思います.アポイ岳のかんらん岩はプレート衝突によってめくれ上がったマントルです.ですからプレートの衝突過程やプレート衝突帯のマントルそのものを探るには大変重要な試料となります.一方,マントル由来の捕獲岩はマントルのスナップショットですし,アポイ岳のかんらん岩よりも深いマントルからもたらされた岩石もあるので,マントルそのものの実態を知るためには重要な試料となります.ハワイの溶岩に含まれるかんらん石は,その溶岩が生まれた地球深部の情報を保持している可能性があるので,かんらん岩ではわからないもっと深い地球の情報を教えてくれます.

 

・地球物理・循環モデルでは、地球が冷えているという説明がありましたが、その場合、地球年代とともに地殻の厚みが変化している可能性はあるのでしょうか
 →地殻とはマントルの上にある層で,様々な岩石で構成されています.この層の厚さは温度と直接関係しないので,時代とともに地球が冷えて地殻の厚みが増すということはありません.ただし,マントルの最上部付近と地殻を含むリソスフェアと呼ばれる比較的硬い岩盤の厚さは温度と相関があると考える説があります(ほかに水分量と相関があるとの説も有力です).ですからリソスフェアの厚さは時代とともに増大しているのかもしれません.

 

・現段階での、全マントル対流と二段対流への見通しは?
 →私自身は二段のマントル対流の方がすべてのデータを整合的に説明できると考えています.しかし,不完全な全マントル対流という両者の中間的な状態が真実という可能性もありますね.

 

・このグラフの縦軸は何でしょうか。
 →炭素質コンドライトの濃度を基準に、それぞれの希ガス元素の濃度を描いたものです.例えばエンスタタイトコンドライトのヘリウム濃度は炭素質コンドライト中の〜倍といったことがわかる図にしました.

 

・大気や地球内部の希ガスの組成が炭素質コンドライトに似ているという事は、初期の地球に炭素質コンドライトが多く降り注いだという事ですか
 →正確に言いますと,少なくとも希ガスについては炭素質コンドライト由来のものが地球深部や大気に多いということです.大気は地球誕生の数億年後に降り注いだ隕石や彗星からもたらされたという説もあるため,必ずしも地球形成時の成分とは言えないかもしれませんが,「初期」の成分とは言えるでしょう.

 

・原始太陽系(の地球)の希ガスの組成、各元素の割合は同じ(だった)のですか?同じだとすると、どういう理屈でそうなのでしょうか? by下山
 →図の説明が足りなかったようです.炭素質コンドライトの全希ガス元素の濃度が一定に見えているのは,2種類の隕石と大気,ハワイ溶岩の希ガス組成を比較しやすくなるよう,炭素質コンドライトの希ガス組成を基準にしたためです.それぞれの希ガス元素の絶対濃度はかなりばらついています.

 

・子供のころ、火山の近くに住んでいて、土の中に混ざっているキラキラしたカケラ(ビンのカケラでない)をよく拾っていました(1~2mmくらい)。今回いただいたかんらん石と溶岩の砂に似ていると思ったのですが、あれも火山や地球内部に由来するものですか?石英、高温水晶では?と思っているのですが… by Y.K
 →何かの結晶かもしれませんね.鉱物の色や形,光沢,割れ口の形状などで鑑定できることがあります.北海道大学総合博物館の3階に2017年8月4日オープンする「鉱物・岩石標本の世界」展示室に是非お越しください.鉱物の鑑定法を紹介する予定です.

 

・地球内部の熱源として放射性物質の核分裂反応もあるのでしょうか by Oちゃん
 →はい.これがないと地球は既に冷えきっていると考えられています.

 

・原発の核ゴミを地殻深部に保管する計画中である。マントルの大循環であろうと限定的循環であろうと、地殻への影響があるのかないのか、先生の見解をお知らせください by aucu
 →何十万年間程度の時間スケールであれば安定に存在した岩体は地球のいたるところに存在し,日本にもあります.ただし,これからの何十万年間も安定であるかどうかはわかりません.核廃棄物を埋設するのであれば幾重にも安全対策をほどこす必要があると思います.

 

・ハワイの溶岩VSリュウグウかけら、両方の長所短所は? byおめが
 →地球の材料を探るという研究の上では両者とも重要です.リュウグウが教えてくれるであろう揮発性元素の初生比とハワイの溶岩や大気が持つ値とを比較することによって,この地球や太陽系で起こった出来事が見えてくると思います.

 

~宇宙に関するご質問~

 

・はやぶさ2の動力はなんですか byゴウ
 →最初の打ち上げ用エンジンのほかに,スイングバイのための地球の引力やイオンエンジンによる推力が主要なものです.

 

・移住できそうな星の可能性はあるのでしょうか byひつじぐさ
 →実際に月に降り立った人間がいるわけですから,少なくとも短期間であれば月に住むことはできそうですね.SpaceX社による火星移住計画も刺激的ですね.

 

・宇宙化学的には、宇宙の年齢はどう知る byひやま
 →宇宙の年齢は宇宙背景放射の観測から導き出されました.残念ながら宇宙化学的なアプローチで推定された宇宙の年齢は今のところありません.

 

・宇宙の誕生、137億年前とありましたが、ある本では138億年前とありました。一億年の違いは誤差の範囲内でしょうか?私は気になります。
 →プランク衛星の観測による誤差には精度と確度の2種類があります.宇宙背景放射の観測はかなり精密にできるようになっており,精度としては1億年未満の誤差で宇宙の年齢が求まるそうです.しかし,それから求められた宇宙の年齢の確かさがどれくらい保証できるかは私にはわかりません.計算には複数の仮定が介在していますので,その仮定一つひとつの確かさを再検討していけば1億年の違いに意味があるかどうかはっきりするでしょう.

 

・ビックバンという現象が起きてからどのような力がはたらいて惑星などが形成されたのですか byなるたる
 →ビッグバンが起こってから惑星が生まれるまでに随分多くの過程があります.ビッグバンの後,しばらく経って宇宙の温度が下がるとともに水素やヘリウムが生まれ,互いに引き合って恒星が生まれました.その中で鉄までの元素が核融合で作られ,超新星爆発によってさらに重い元素が作られました.私たちの太陽系はその吹き飛ばされた塵が集まって形作られたものです.

 

・その昔、隕石はその成分(星の中のどの部分が起源か)によって、岩石質隕石と鉄ニッケル質隕石とに分類されると聞いたことがあるのですが、それと、エンスタタイトコンドライト・炭素質コンドライトの関連について教えてください byアキクサインコ
 →隕石は大きく3種類に分類されます.鉄隕石・石鉄隕石・石質隕石です.石質隕石の中でコンドルールと呼ばれる球状の組織が観察されるものをコンドライトと呼び,そうでないものをエイコンドライトと呼んでいます.エンスタタイトコンドライトはエンスタタイト(頑火輝石)を多く含むコンドライトで,炭素質コンドライトは揮発性成分を多く含むコンドライトのことです.

 

・エンスタタイトコンドライトと炭素質コンドライトのどちらが起源なのかということがわかるとどんなメリットがあるのか聞き逃してしまったので、よかったら教えてください byはやぶさがんばれ
 →地球の希ガスを含む揮発性成分の起源物質として,両者のコンドライト隕石が有力候補として度々議論の的になっています.地球の材料が何なのかがわかれば,地球の成り立ちから将来まで様々なことを考えやすくなります.例えば,地球の重要な熱源となっている放射性元素の濃度がわかれば,現在の地球内部の温度がわかるかもしれず,今後どれくらい地球が温かく存在できるのかも推察できるようになるでしょう.

 

・地球上のサンプルは、空気や水で「汚染」されているということですが、宇宙の小惑星が何かで「汚染」されているという事はないのですか?
 →小惑星も汚染されていると思います.特に小惑星の表面は太陽から降り注ぐ粒子が撃ち込まれ続けているため,はやぶさ2でも挑戦するように,表面を少しはぎ取ってから観測したり,サンプルを採取したりする工夫が必要になるでしょう.

 

・アメリカの小惑星探査、核に似たものをサンプルリターンするとか。情報保たれてる? byひやま
 →オシリス・レックスのことでしょうか.それでまちがいないようでしたら採取するのははやぶさ2と同様に炭素質の物質です.

 

~山本さんに関するご質問~

 

・地球化学というスケールの大きな研究を長年続けていくうえでの原動力は何ですか byミドリ
 →私の場合,単純に「ルーツを知りたい」という好奇心が原動力となっていると思います.研究をしていて苦しいとかやめたいとか思ったことはありません.長年続けさせてくださっている皆さんにいつも感謝しています.

 

・先生がこの分野・研究に興味をもったきっかけは何でしたか? byみかりん
 →自分たちのルーツを知りたいという素朴な欲求に,地球や宇宙への好奇心をかき立てられてきました.

 

・いつ頃から石が好きでしたか?息子が石ばかり拾ってきて困っています。ハンマー持たせてあげるべきですか?砂岩なんてかんべんしてくれーです byしっぽ
 →実は石が大好きというわけではありません.あくまでも石はサンプルとして冷徹にあつかっていまして,必要ならば容赦なく破壊したり溶かしたりレーザーで穴を開けたりします.息子さんが石から何かを読み取ろうとしているのであればルーペや実体鏡をプレゼントするのはいかがでしょうか.

 

・高校生の頃からハンマーを使っていたと聞いた気がしますが、何に使っていたんですか byボンゴレイ
 →中学生の頃から宇宙飛行士になろうと思っていましたので,いつか月やほかの惑星に行った時に資源を掘り出せるよう,地学の勉強を高校生から始めました.そのついでに地学に関する部(物象部)に入部し,活動を続けているうちに顧問の先生からプレゼントしてもらったのが展示でお見せしたハンマーです.高校生時代はゾウの化石を追いかけ,地層や岩石を見ると叩きまくっていました.25年間経った今でも大切に使っています.

 

・これまで石を取りにどんなところへ行かれましたか byナビオ
 →20カ国ほどでしょうか.砂漠から海辺,深海底まで必要なサンプルがあると思えばどこにでも行きます.

 

【サイエンス・カフェのアンケートで寄せられたご質問】

~地球に関するご質問~

 

・水の惑星である地球で水の関わりは?
 →一言では表せませんが,例えば鉱物においては,その粘性や融点に大きな影響を及ぼします.鉱物が溶けるとマグマを発生させ,物質や熱を地球表層に運び上げます.粘性もマントル対流を支配する重要な要素ですから,やはり地球内部の物質や熱の循環に大きな影響を与えます.そのほかにも海や雨,流氷,雪,水蒸気が地球表層環境に与える影響を書き出せば何冊かの本になってしまいそうですね.

 

・海水・氷河の重みで表層位は変化するということでいいのか、その基準の指標のようなものがあるのか
 →はい.氷河によって地表の標高が上下することはよく知られています.高さの基準となるのはジオイドです.ジオイドを,少し厳密さを省いてなるべく簡単に言うと世界の海面の平均的な位置のことで,標高とはジオイドからの高さのことです.

 

・サンプルを採集する時のあれこれのお話をもっと聞きたい。
 →ありがとうございます.いろんなハプニングを経験してきましたのでお話することは山ほどあります.またサイエンスカフェなどで披露できればと思います.

 

~山本さんに関するご質問~

 

・海外で研究する時に注意することは何ですか?
 →日本人に会ったことがないという人ばかりの場所に行くこともありますので,日本人としての誇りを持って日本にいる時よりも気高く振る舞うことです.あとは最低限の言葉を覚えていくことでしょうか.水やトイレは必須用語です.

 

・研究のきっかけ、夢、目標をもっと詳しく聞きたい。
 →ありがとうございます.子どもの頃からなにげなく考え続けてきたルーツ探しについて,より深く,より実践的に取り組んでみようと思って今に至っています.自分としては当たり前のことをしているだけですが,同じような思いを抱いている方が結構いらっしゃるようで,そのような方々と一緒に探求の旅を続けているという思いが日増しに募ってきて楽しくなってきました.

 

・若い人たちにメッセージを。
 →まわりの人と同じことをしたり,過去の人たちがやってきたことの範囲内で動き続けたりするとリスクは低くなるでしょうが,より楽しくなる可能性も低くなるでしょう.昨日までの自分を越える日々を送ってみませんか.