2017年06月28日

授業レポート

「社会の中での科学技術コミュニケーターの役割-科学ジャーナリストを例に-」(6/10)隈本邦彦先生の講義レポート

 

一條 亜紀枝(2017年度 本科/社会人)

 

 

隈本邦彦先生(江戸川大学 メディアコミュニケーション学部 教授)は、20年以上にわたりNHK報道局で科学報道を担当した科学ジャーナリストであり、現役の科学技術コミュニケーターであり、CoSTEPの設立者の一人です。ご自身の経験と知見、実際の科学報道を紹介しながら、科学技術コミュニケーターに期待されることをお話くださいました。

 


 

科学者と社会のギャップを埋める者

科学は専門家だけが知っていればいい。そういう時代は終わり、専門家ではない一般市民の生活に科学技術が深く関わるようになりました。1970年代には、四大公害病が問題となったことで、科学の進歩は幸福をもたらすだけではないことに人々は気づきます。

科学が外に開かれたとき、露になったのは、科学者と市民との意識のギャップです。それを埋めるのが科学技術コミュニケーション。その一つとして科学ジャーナリズムはあり、科学ジャーナリストは科学コミュニケーターの典型例です。


 

 

科学ジャーナリズムの現状と課題

科学者が研究成果を発表する場はシンポジウムや講演会が多く、市民が科学情報を得る手段はテレビや新聞が多いです。また、人が何かを決断するとき、誰かの意見を参考に直感的に判断するという方法を取っています。だからこそ、科学ジャーナリストの役割は重要です。

しかし、科学ジャーナリストは少ないのが現状です。しかも、科学関係のニュースとニーズが高度化・多様化しているのに、体系化された育成はされていないといいます。

 

科学者のありかた、科学ジャーナリストのありかた

今年4月に放映された百日咳のニュースを事例に、科学者の主張の裏を取る必要性を学びました。どんな立場の科学者がどんなことを言っているのかを知らなければ、事実ではあるけれどフェアではない情報を発信してしまうことがあります。

隈本先生が1980年代後半から1990年代前半にかけて手がけた「院内感染問題」の報道からは、科学者とメディアが協力することで、世の中を良い方向に動かせることを学びました。

トランスサイエンス問題を提唱したワインバーグ博士の言葉を挙げて、隈本先生は、科学者の第一の使命は、「科学でわからないことは、正直にわからないと言う」ことだと話します。科学ジャーナリストは、科学者に第一の使命を果たすように促すこと、基礎的な科学知識を身につけること、影響力と正確さのバランスを取りながら報道することが求められます。

記者の主観と客観、記事のインパクトと誇大報道など、受講生たちから重要な質問が出ました

 

科学技術コミュニケーターへの期待

理想は、科学者と市民のあいだに科学技術コミュニケーターがいて、双方向のやり取りを担うこと。現実は、科学者側の科学技術コミュニケーターが多いそうです。だから、CoSTEPの受講生に期待されているのは、市民の味方である科学技術コミュニケーターになること。「専門知識をもった科学者と、外に向けて表現できる科学技術コミュニケーターが協力して、世の中を正しい方向に動かしてほしい」という隈本先生の思いを肝に銘じて、私なりの科学技術コミュニケーターを目指します。