2017年08月11日

成果物

大震災のなかで 私たちは何をすべきか

編者:内橋克人
出版社:岩波新書
出版年月日: 2011/6/22
価格:778円


この本は、東日本大震災直後から「大震災のなかで私たちは何をすべきか」と自問自答しながらも現地で活動を続けた33名が、震災の意味、復興の形を綴った文集です。著者は、小説家の大江健三郎さんや精神科医の中井久夫さんをはじめ、医師、ボランティア、作家、学者など多様な立場の人たちです。編者である内橋克人さんの言葉から始まり、「3.11は何を問うているのか」「命をつなぐ」「暮らしを支える」「復興のかたち」の4つのテーマでまとめられています。

 

内橋さんは新聞記者を経て、現在は経済評論家として、本の執筆やテレビのコメンテーターなど、様々なメディアで評論活動を行っています。最近では、2016年4月にNHKの番組に出演し、「市場原理至上主義(新自由主義)が、地域社会の衰退や貧困、社会の分断をもたらしてきた」と日本経済の問題を指摘しています。

 

内橋さんは、この33名の文章から何を伝えようとしているのか。タイトルである「大震災のなかで私たちは何をすべきか」の答えがそこにはあるのでしょうか。内橋さんは「序のことば」の冒頭で、このように述べています。

 

「災害はそれに襲われた社会の断面を一瞬にして浮上させる。東北、北関東一帯を見舞った地震、津波、それに追い打ちをかける原発事故の“巨大複合災害”は、日本という国と社会の実相を余すところなくさらけ出した。滅多なことで人の目に触れることない真の“断層”の姿に違いない。」

 

地震はきっかけに過ぎません。震災による被害の原因は、震災そのものではなく、今の日本を作っている科学技術や制度の中に潜んでいる問題にあります。内橋さんはそれを “断層”と表現しています。“断層”とはいったい何なのでしょうか。1つ目の「3.11は何を問うているのか」では、その“断層”の実態について触れられています。

“断層”という大きなものが私たちの生活に与える影響は、想定外の場所で起きています。突然の死、家族と離れて知らない人との生活。2つ目と3つ目の「命をつなぐ」「暮らしを支える」では、今の日本で生きることの困難さと、それに向き合う人々の姿が書かれています。

 

「被災者にとって、被災地は“生活”の場だが、それ以外の者にとって。被災地は“事件”の場だ。“事件”の現場と思って赴くと、そこには“生活”がある。あたりまえのことに不意を衝かれる感覚。」

 

著者の1人である、湯浅誠さんの言葉です。この感覚の差が生み出すものによって、間違った方向へ復興が進められています。4つ目の「復興のかたち」では、あるべき復興の姿について書かれています。

 

東日本大震災以降も、熊本など各地で大きな地震が起きて被害を出しています。その中で、わたしたちは何をすべきか。向き合うべきは、地震の驚異ではなく、これからの日本がどのように発展、そして衰退していくのか、その背後にある要因なのではないでしょうか。私たちの身近にあたりまえのようにあるものが、災害をきっかけに生活をおびやかす存在となるかもしれません。

 

この本を通して、改めて自分の生活について考え直してみてはいかがでしょうか。

 

岩崎祥太郎(CoSTEP13期本科ライティング)