2017年09月30日

活動報告

第96回サイエンス・カフェ札幌「鶴の今昔、拝見つかまツル!~古文書から読み解くツルの生態~」を開催しました(前編)

 

山本 晶絵(2017年度 本科/学生)

 

9月10日(日)、北海道大学大学院文学研究科 専門研究員の久井貴世さんをゲストにお招きし、第96回サイエンス・カフェ札幌「鶴の今昔、拝見つかまツル!~古文書から読み解くツルの生態~」を開催しました。

 

(ゲストの久井貴世さん。「ツルと人との関係史」が研究テーマです)

 

9月の札幌はすっかり秋模様。北東向きに配置された会場に、秋の日差しが降り注ぎます。今回のカフェは、対話の場の創造実習の受講生(小川、谷口、鶴飼、橋本、山本)が中心となって企画・運営を行いました。

 

(この配置は初の試みでした。まもなくカフェが始まります)

 

 

ツルのいろは

 

久井さんのお話をより楽しむために、まずはツルに関するおさらいからスタートです。

 

(鶴飼さん。第1問の答えは意外とタンチョウ(単調)でしたね)

 

今回のカフェで話題の中心となるタンチョウは、実は明治時代以前の生息実態が十分に解明されていません。久井さんは、タンチョウを含む「過去のツル」の実態を明らかにすべく、研究に取り組んでいます。

 

 

ツルと久井さんの出会い

 

「いちばん好きな鳥はカラスです」
「ずっとツルに興味があった、と言いたいところですが……最初は猛禽類の鉛中毒を研究したいと思っていました」
「ツルとはビジネスライクの関係です」


次々と飛び出す、衝撃の告白。ではなぜ、久井さんはツルの研究を……?

 

(指し棒の先にもツル。実はこれ……靴べらでした!)


ツル研究との出会いは、大学生のとき。卒業論文のテーマを決める際、当時の先生からある古い資料を紹介されたことがきっかけで、「過去のツル」研究が始まったそうです。「札幌にもツルがいたんだ!」という驚きが、久井さんのやる気スイッチをONにしたとのこと。

 

 

ツルと人との関係

 

(聞き手は小川さん。話題は久井さんの研究内容へと移ります)


「過去のツル」の調査手法は、湿原に出かけてツルにインタビュー……ではなく、文献調査が中心です。
全国の図書館へ出かけ、ツルに関する記述がありそうな資料をひたすら読み(めくる)、ツルに関する記述を探し(みつける)、内容を検証します(よみとく)。そして、その成果を論文や学会で発信する(つたえる)のが、久井さんの研究の流れです。
今回のカフェでは、来場者の方も久井さんの研究の一部を体験しました。さて、この資料からツルを見つけられるでしょうか?

 

(この資料からツルを見つけられるでしょうか?久井さんによると、ツルに「呼ばれる」ことがコツの一つだそう)

 

資料を読み解いていくと、江戸時代の人びとがツルをかなり正確に識別していたことがわかります。ツルは当時の社会において、権威を象徴する極めて重要な鳥でした。そのため、多くの記録や情報が残っています。久井さんは、「ツルと人との関係」があったからこそ、自分は文献を用いて研究ができるのだとおっしゃいました。

 

(江戸時代の偉い人びとは、ツルを獲ったり、贈ったり、食べたりしていた……⁉)

 

 

鶴の品々、拝見つかまツル!


私たちは現在、ツルを獲ることも、贈ることも、食べることもしなくなりました。「ツルと人との関係」は今、どうなっているのでしょうか。
今回のカフェでは、久井さんの「鶴の品々(ツルグッズ)」をお借りし、会場後方に展示しました。おめでたい日によく見かけるツルですが、実は日常のなかの様々なところにも隠れていることがわかります。

 

(会場・展示担当の橋本さん。展示は開場前、休憩中、終了後と大盛況でした)

 

「ツルと人との関係」はかたちを変えて、現在に続いているのかもしれませんね。(久井さんの「鶴の品々」の詳細はこちらへ)
 

 

質問コーナー

 

休憩後は質問コーナーへと移ります。ツルのこと、研究のこと、保護活動との関係など、様々な質問が寄せられました。

 

(衣装替えをした久井さん(手前)と筆者。ホワイトボードには質問がびっしり!)

 

※カフェのなかで取り上げることのできなかった質問に対する久井さんのご回答は、記事を改めてご報告します。

 

 

今日のテーマは「サイエンス」でしたか?

 

最後は、私たち受講生が久井さんをサイエンス・カフェのゲストにお招きした理由について、お話ししました。それは、「生態」という言葉を辞書的な意味で「生活のありさま」と定義するならば、人との関係も含めた全体が、ツルの生態ではないか。この「重なり」の部分を扱う久井さんも「ツルの生態」学者ではないかと、考えたためです。

 

(いよいよ話はカフェのまとめへ)

 

これに対し、久井さんは「西洋の科学はツルならツルだけを研究対象にします。しかし、歴史鳥類学の手法を使った研究ではツルから人を、人からツルを浮かび上がらせることができます」とおっしゃいました。かつての江戸時代の本草学のように、「人との関わり」を通して対象を捉えることで新たな視点をもたらした点に、久井さんの研究の独自性があるのだと思います。

 

(水引がモチーフの赤いバッヂ。「ツルと人との関係」を思い出すきっかけとなることを願って、来場者の方々にもお渡ししました)

 

(カフェ終了後にみんなでツルポーズ!谷口さん(前列左)が描いた実物大ツルも一緒に)

 

科学とは本来、論理的・客観的・実証的なものとされます。しかし実際には、科学の対象や方法、成果は社会、経済、思想、宗教などの影響を強く受けているものです。科学は時代によって、さらには捉える人によって変化するものであり、必ずしも不変のものとして存在するのではないと、私たちは考えます。


今回のテーマが「サイエンス」であったかどうか、その答えも一人ひとり異なるでしょう。


科学という大きなテーマに対して自分たちがどうアプローチできるのか、あと半年のCoSTEPでの学びのなかで、引き続き考えていきたいと思います。

 

対話の場の創造実習:山本晶絵、小川恵子、谷口季子、鶴飼里菜、橋本慎太郎

 

※カフェのなかで取り上げることのできなかった質問に対する久井さんのご回答は、記事を改め「後編」としてご報告します。(10月上旬に公開予定)