2018年03月01日

活動報告

第99回サイエンス・カフェ札幌「究極超合金★タービンブレード~より硬く、より粘り強く~」を開催しました

2018年2月18日(日)、第99回サイエンス・カフェ札幌「究極超合金★タービンブレード~より硬く、より粘り強く~」を、紀伊国屋書店札幌本店1Fインナーガーデンにて開催しました。今回のサイエンス・カフェでは、工学研究院材料科学部門から三浦 誠司さん(マテリアル設計分野 教授)、大野 宗一さん(マテリアル設計分野 准教授)、林 重成さん(エネルギー材料分野 准教授)の3名の研究者にお越しいただきました。

 

雪の舞う寒い日でしたが、約80名の方が参加。この日は「超合金」がテーマということで、チラシや当日のプログラムも、全体的に特撮やアニメのようなテイストで統一していました。また独自に作成したタイトルコールのジングルを場面転換の際に使用し、さらに雰囲気を盛り立てます。ステージの前には、大きくプリントされた元素周期表を広げ、その上に元素のサンプルの入った小瓶を並べて設置しました。その他タービンブレードの現物や3Dプリンターで再現したジェットエンジンの模型なども横に並べ、実物を手に取りながら解説されました。

 

 

プロローグ

 

まずはプロローグとして、聞き手を担当したスタッフの西尾直樹さん(CoSTEP特任助教)から、この日の主旨やゲスト紹介、「そもそも合金とは」など基礎的な言葉についてなどの解説がありました。ちなみに西尾さんの赤い衣装は「メイプル超合金」のカズレーザー風とのことです。

 

 

第一話 いざ回転!超合金タービンブレード 主役:三浦 誠司
 

トップバッターは三浦さん。タービンブレードが使われている、飛行機のジェットエンジンと火力発電の発電機。それぞれ、材料である超合金の性能が上がることで、どのような効果があるのか、なぜ超合金の研究が重要なのかを解説していただきました。より高温に耐える超合金タービンブレードが実現できると、CO2排出量の削減や耐久性の向上による低炭素社会への寄与、メンテナンス性の改善、燃料費の削減による経済的効果も非常に大きいものになります。

 

しかし、タービンブレードは高温への強さだけでなく、遠心力への強さ、衝撃への強さ、酸化への強さの全てが揃っている必要があり、さらなる性能の向上は一筋縄では行きません。まさに究極の超合金である必要があるのです。

 

 

第二話 究極の組み合わせを探索せよ-元素の強さを「溶かす」、材料設計- 主役:三浦 誠司
 

引き続き三浦さんから、研究の内容について解説をしていただきました。現在ほとんどのタービンブレードは、ニッケルをベースとした超合金を使用しています。ニッケルは耐熱性、耐酸化性など様々な側面での強さを持ち、かつ他の元素を受け入れる許容性に優れているからです。しかしニッケルだけの力ではタービンの過酷な環境は耐えられません。さまざまな特性を持つ元素の「いいとこ取り」をしてより強い金属を生み出すのが合金の研究です。元素と元素を溶かし合わせることで、1+1+1が3以上になる。でも適当な組み合わせではうまくいかない。その最適な組み合わせを考えることが重要になります。

 

最近では、新たにニオブの可能性を模索する研究プロジェクトをスタートさせています。ニオブは塑性変形(物体に外力を加えて変形させ、その後、外力を取り去っても残る変形)に対する強さがニッケルに比べて25倍もあります。しかしこれまでニオブは耐酸化性など弱点が多く、実用化されてきませんでした。それを林さんのコーティングも含め、さまざまな研究と融合することで克服し、新たな材料の可能性を模索しようと研究を進めています。

 

 

第三話 メゾの結晶からのメッセージ- 「固まる」を観測し、計算する- 主役:大野 宗一
 

2人目のゲスト、大野さんの登場です。金属加工の基本は、「溶かして固める」です。三浦さんのお話は、何をどう溶かすかについての研究でした。大野さんは、溶かした金属がどのように固まっていくのか、に関わる研究です。

 

金属が溶けて液体になっている金属が、冷えて固まったときにデンドライトという樹枝状の結晶ができます。現在のタービンブレードは、そのような一つの結晶を成長させることで作られています。そのデンドライトの成長の法則は、数式で表現し、コンピューターを使ってシミュレーションすることができるのです。そうして再現されたデンドライト成長の映像は、顕微鏡では見ることのできない世界の姿を、参加者に伝えてくれました。

 

 

第四話 装着!サーマルバリアコーティングシステム -超高温環境からブレードを守る- 主役:林 重成
 

3人目のゲスト、林さんの登場です。三浦さんが「溶かす」、大野さんが「固める」だとすると、林さんは「守る」です。タービンブレードは、結晶が固まったら完成、ではありません。過酷な環境を長時間耐えて活躍するために、最後の仕上げが必要です。それが「サーマルバリア・コーティングシステム」です。

 

「サーマルバリア・コーティングシステム」は、金属との接着部の層、遮熱を受け持つ外側の層、そしてその間で環境を遮断する層の3層構造になっています。特に真ん中の層が重要なのですが、厚さはなんと0.003mm。林さんの「みなさんの飛行機の安全は、髪の毛の30分の1の薄さ守られているんです」との言葉は、かなりのインパクトがありました。

 

 

第五話 次はキミの出番(ターン)だ!(質疑応答) 主役:参加者のみなさま
 

質疑応答では、時間が足りないほどに活発な質問が出ました。もともと飛行機が好きで詳しいからこその、具体的で本質的な質問や、大学と産業界の連携といった広い視点からの質問など、内容も多岐にわたります。3人のゲストが、内容に応じて代わる代わる答えていきました。

 

 

 

 

エピローグ

 

最後に3人のゲストから会場の参加者へ、一言づつメッセージをいただきました。今や私たちは、気軽に国内外の各地を行き来でき、安定的に電気を使うことができていますが、その裏には、今回紹介されたような、最先端の研究の蓄積があったのです。今回のカフェでは、魅力的な材料の世界の扉が開かれたのではないかと思います。三浦さん、大野さん、林さん、ありがとうございました。