2017年12月15日

活動報告

日本科学未来館にて科学館選択実習を行いました

 

中野 恭子(2017年度 研修科/社会人)

 

2017年11月26日(土)、日本科学未来館(以下、未来館)にて科学館選択実習が行われました。これは、東京お台場のテレコムセンターにて開催された「サイエンスアゴラ2017」に併せて企画されたもので、本科生8名、選科生11名、研修生2名の合計21名が参加しました。

本実習は、施設見学と科学館で行われている科学技術コミュニケーション、また科学技術コミュニケーターの人材育成の現場の見学を目的としたもので、見学だけでなく未来館との情報交換、およびネットワーク作りのための交流会も行われました。

 


「対話を生み出す工夫」とは?

 

今回の実習に参加した受講生には課題が与えられました。「未来館では、どのようなところに『対話を生み出す工夫』があるのか。」館内を回りながら、それぞれが「対話を生み出す工夫」を探し、写真に収めて行きます。

まず、未来館の概要を知るために、二つのグループに分かれ、未来館の科学コミュニケーター、武田さん、梶井さんと共に、館内ツアーを体験しました。

 

(真剣な眼差しで武田さんを見つめる受講生)

 

(地球環境の展示について解説する梶井さん)

 

未来館には、展示スペース以外にも、最先端の研究を行うプロジェクトチームの研究室が入っています。科学館という一般の人に開かれた場に研究室を併設することで、研究のアウトリーチにもつながっています。

 

(東京大学「光電変換プロジェクト」。折り曲げられる太陽電池の研究)

 

ツアー終了後も、「対話を生み出す工夫」に引き続き着目しながら、各自展示やサイエンスミニトーク、ワークショップなどを見学しました。

 

(出生前診断について対話しながら考えるイベントも)

 

(未来館のシンボル展示Geo-CosmosとASIMO)

 

(ゲーム要素を組み込んだ体験型展示:未来逆算思考)

 

(特別展示「ビューティフル・ライス~1000年おいしく食べられますように」)

 

課題に対する答えの一つとして私が着目したのが「ビューティフル・ライス~1000年おいしく食べられますように」でした。
エントランスを抜けて最初に目に入る場所に位置するこの展示は、数千年にわたってアジアの食文化を支え続けてきた稲作と人間との関係の変遷を示すゾーンと、食に対する価値感を問う参加型ゾーンで構成されています。各ゾーンが比較的広く、ゆったりと配置されていることによって、対話を生み出しやすくデザインされているように感じました。また円を基調としたデザインによって、生態系や、稲作と人間の営みが巡っていることを、視覚的に感じられました。

 

(未来のお米を選択する展示)

 

体験型ゾーンには「火星の植物工場でつくるお米」「1000年以上続いた昔の米づくりを再現したお米」「肥料やロボットを活用して大規模生産するお米」「ご飯1杯分の栄養を食べやすいサプリメントにしたもの」の中から、未来のお米としてどのお米を選択するか、という展示がありました。
自然の循環をふまえて「食べる」という営みを見つめ直し、私たちがこれからも進む方向を探るこれらの「問い」には、4つの極端な選択肢だからこそ生まれるジレンマが存在し、またそのジレンマが来館者同士の対話を生み出していました。

 

 

互いの活動を知る。互いの考えを交換する

 

(未来館の方々との意見交換会)

 

施設見学の後は、未来館の科学コミュニケーターの方々と、受講生の意見交換会が行われました。古澤先生と奥本先生からCoSTEPの取り組み事例の紹介、そしてCoSTEP修了生でもある未来館科学コミュニケーターの高知尾さん(10期選科A)から、未来館の取り組みの紹介が行われました。互いの取り組みや、リスクコミュニケーションの在り方について、質問や意見が飛び交う場となっていました。

 

 

科学館選択実習を終えて

 

私が知っている科学館は科学の現象を展示したり、科学の不思議や面白さを体験する場所でした。しかし未来館は、社会と科学技術をつなぐ場所、そしてそのための対話を生み出す場所であることを実感しました。科学技術の現状と「問い」を個人レベルで考え、人類の未来を科学の視点で対話する場所です。日常生活では流れてしまいがちな科学に関するニュースを、新しい視点で「ハッ」と考えさせられる来館者も多いのではないかと感じました。

 

「なぜと“問う”のはなぜだろう?不思議に思う心を育もう!」

 

これは、「ノーベル賞受賞者からの問い」という展示にあった白川英樹さんの言葉です。
未来館の展示の中には「答え」ではなく、たくさんの「問い」がありました。科学技術コミュニケーターとして、どのような「問い」をデザインして、どのような対話を生み出していくのか。そのことが、世代を超えて、私たちが生きる世界について考える機会を増やすことに繋がるよう、これから何ができるか、何を伝えられるかを考えていきたいと思います。