2018年11月15日

活動報告

日本動物学会シンポジウムを共同で開催

 

10月21日(日)に公開シンポジウム「秘められた北の動物誌~海・川・森にその生態を追う」を総合博物館ホール(知の交流)で開催しました。北海道を主なフィールドとする3名の研究者が、クジラ・シマフクロウ・エゾシカの研究についてお話し、その後、65名の来場者と対話しました。

 

 

生物学の面白さ、北海道というフィールドの面白さ

 

本イベントは、当初9月15日(土)に日本動物学会第89回札幌大会と同日開催の予定でしたが、北海道胆振東部地震によって延期実施されました。山下正兼 札幌大会実行委員会 委員長(理学研究院教授)はその経緯を説明しつつ、生物学において生き物を直に見る意義と、なによりその面白さについてお話をして、冒頭の挨拶としました。

 

 

続いて20分ずつ、3名の研究者が話題提供をしました。いずれも北海道をフィールドに研究をしている若手・中堅の研究者で北海道大学出身です。しかし、その分析対象や手法はそれぞれ異なっており、動物学研究の幅広さを感じさせました。

 

 

浜辺の科学捜査班~イルカの最後の晩餐は~

 

北海道周辺の海には、40種類ものクジラが棲息しています。松田純佳さん(水産科学研究院/日本学術振興会 特別研究員(PD))はこの地の利をいかして、クジラの食性研究をしています。研究には、ストランディング、つまり浜に座礁・漂着した個体や、漁で混獲されてしまった個体を用いています。

 

 

松田さんは、行政や市民の方からストランディングの連絡が来たら、全道各地へ可能な限り急行します。そのサンプリングの様子を、豊富な写真を示しながらお話ししてくれました。胃の内容物の分析と、筋肉などの安定同位体比の分析を行ったこれまでの研究から、様々な種類のクジラは、沿岸から外洋、表層から低層までの空間で、異なる餌を食べてすみ分けていることがわかったそうです。

 

 

DNAから読み解くシマフクロウの歴史

 

表 渓太さん(北海道博物館 自然研究グループ・学芸員)は、全道各地のシマフクロウだけではなく、博物館に収蔵されている100年以上前の剥製からもDNAを抽出して分析をしていました。そのなかには、なんと1940年代に北大の札幌キャンパスで獲られたシマフクロウもあります。

 

 

表さんの研究により、現在のシマフクロウは遺伝的多様性が著しく減少していることがわかりました。例えば阿寒地域には1980年以前には4種類の遺伝的タイプがありましたが、現在は1種類しかありません。現在、個体数は若干増えつつありますが、遺伝的な多様性を維持するためには、生息地間の交流を促すことが必要、とお話をされました。

 

 

殺して活かす、エゾシカ学

 

最後のお話はエゾシカです。松浦友紀子さん(森林総合研究所 北海道支所 森林生物研究グループ・主任研究員)は、行動観察と解剖を用いてエゾシカの繁殖を研究し、現在もその専門を生かしてお仕事をされています。

 

 

エゾシカは1歳以上のメスはほぼ100%妊娠しており、自然死亡率は低いことから、非常に増えやすい動物と言えます。増えすぎたエゾシカは農作物を食べてしまうだけではなく、森林の生態系にも大きな影響をあたえてしまいます。個体数を適切に管理するためのひとつの方法は、エゾシカを衛生的においしく食べること。松浦さんはそのための研究にも取り組んでいます。「みなさん、エゾシカをおいしく食べてください」と言う言葉でトークは締めくくられました。

 

 

来場者との対話

 

10分の休憩時間の間に、来場者の方々には質問カードを書いて頂きました。後半40分はこの質問カードを使いながら、登壇者と来場者が対話する時間です。以下に一部を簡単にまとめてお伝えします。

 

(質問はホワイトボードに貼り、司会がそこからピックアップして質疑を進めました)

 

Q 死んだイルカの解剖はくさそうですが、魚を食べたくなくなることはありませんか?

A だんだんお肉に見えてくるので逆にお腹がすいてきます(笑)(松田さん)

 

Q シカ肉の料理でどんな料理がおしいいですか?

A 基本的に脂が少ないお肉なので、カツが失敗しない美味しいたべかたですね(松浦さん)

 

Q シマフクロウの遺伝的多様性を増やす方法とは?

A シマフクロウは川に沿って移動します。餌も川の魚なので、川の保全が重要になるでしょう。(表さん)

 

Q 個体数の適切な管理の上で猟友会や一般のハンターの人達との協力体制は?

A 私自身もハンターですし、情報を共有して捕殺をしています。とくに北海道のハンターはすごい数のシカを獲ってくれているので、個体数管理に非常に貢献してくれる存在です(松浦さん)

A 研究結果を関係官庁と共有したり、提言したり、ということはしていました。ただ、なかなか実現まで持っていくのは難しいです(表さん)

A ストランディング研究は「クジラが打ち上げられてるよ!」という一般の人からの情報がないと成り立たないですね。ぜひ御協力をおねがいします(松田さん)

 

Q 入学の時の勉強法などを教えてください

A うーん(笑)。これという方法は…。例えばフィールド研究をしたいなら今のうちから山歩きをしたりして体力をつける。そうするとできる作業量が他の人と大分かわってきます(表さん)

A 入った後のことも大事かなと思います。そういう意味で今からやりたいことがあるというのはいいですね。がんばってください!(松浦さん)

 

 

アンケート結果

 

アンケートには52名の方々に御協力をいただきました(回収率80.0%)。回答者のうち多かった層の上位は、16~25歳女性(11名・21.2%)、66歳以上男性(9名・17.3%)でした。イベントの満足度は、「満足」31票(59.6%)、「どちらかというと満足」14票(26.9%)、「どちらでもない」1票(1.9%)でした。

 

また、以下のような感想が寄せられました。

  • 「発表者の方の説明がとてもわかりやすく、研究の背景などがはじめに写真や映像で説明してくれたので、内容が入ってきやすかった」
  • 「研究的なデータと、現場を知るハンターさんや地域の人との連携に興味をもちました」
  • 「生物学部に所属する学生として分野の異なる研究について知ることができて良かったです。私も研究したいという熱意が大きくなったので、今後の勉学の源動力を大きくするとてもよい機会になりました」
  • 「質疑応答がとても長かったことはとても有意義だった」

 

全体としてご好評を頂けたようです。震災で延期されましたが無事実施することができました。来場者の皆様、関係者の皆様に感謝申し上げます。

 

(登壇者とスタッフ一同)

 

 

メディアでの報道

 

当日の様子は10月22日(月)の北海道新聞夕刊にも下記のタイトルで掲載されました。

イルカの「晩餐」、シマフクロウ分布… 北の動物の生態 3研究者が解説 札幌で学会シンポ」