2018年11月16日

授業レポート

「見せて守ることは可能か?野生生物保全のためのコミュニケーションのあり方」(10/31)愛甲哲也先生の講義レポート

 

倉本 龍(2018年度 選科B/社会人)

 

今回は、愛甲哲也先生(北海道大学大学院農学研究院 教授)から、「見せて守ることは可能か?野生生物保全のためのコミュニケーションのあり方」をテーマに講義をしていただきました。先生のご専門は「造園学」。とはいえ庭づくりや手入れをするわけではなく、自然公園の管理・運営を考える、日本では希少な学問領域です。「見せて守る」ことについて、野生動植物とそれを観察したい人間とのせめぎ合いを、それをコントロールしたい運営者の立場でお話していただきました。

 

自然に人間が入ることによる課題


例えば登山を行うときに、植物を踏みしめて轍のような跡ができてしまう(複線化)ことや、人が歩き、上った後が掘れてしまう(深掘)こと、トイレが無く草場で用を足すことなどの課題が現れます。また富士山などの人気スポットに押し寄せる人の適正人数を考えることも大切です。先生は「どのくらいの人を快適に、自然も壊さずに受け入れることができるか」を常に考えながら調査を行っています。

 

 

自然と人間との関係をコントロールする


本授業の主題として、あえて自分から動植物に近寄っていく人をコントロールするか、自然に影響が出ないようにするかを「レブンアツモリソウ」「ヒグマ」「シマフクロウ」の3つの話題提供がありました。

 

レブンアツモリソウは礼文島の原産で以前は北海道各地に分布していましたが、(おそらく素人ではない)大量の盗掘被害に遭い、現在では人が近づけないように木の柵と看板が設置されています。同じように登山道に柵やロープがある場合は、人が植物の領域に踏み入らないようにする目的が大きいです。

 

ヒグマについては、ヒグマの写真を撮りたくて人が近づいたり餌付けをしたりするパターンと、車道や釣り人の所へエサを求めてヒグマが近づくパターンとがあり、どちらも危険な状態を招きます。また国立公園内にいる場合は静観するか追い払い、市街地にいる場合は即捕獲するなどのガイドラインを決めている自治体もあります。

 

シマフクロウも個体数が減少して絶滅危惧種に指定されています。原因はエサの減少や生息地への人間の入り込みなどさまざまです。そこで、シマフクロウを守るために見守りカメラを設置する取り組みが始まりました。市民がインターネットを通して見守ることで愛着や保護意識が高まり、同時に巣への接近に対して監視をすることができます。

 

 

 

「見せて守る」ができるために


人間と自然との関係の間にはどうしても運営管理者による方策が必要です。例えば保護区の設定や観察の有料化、入場制限などの管理の側面と、関係者の意思決定期待の参加やモニタリング、立場を超えた協議など自分事として参画できる場づくりの側面の両面が大切になります。

 

「インスタ映え」をねらった写真を撮るために、気づかぬうちにあるべき自然を破壊する…管理の話を聞くにつれ、我々市民がしっかりとした知識と意識を持って行動することが必要だと痛感しました。

 

愛甲先生、ありがとうございました。