2019年03月27日

成果物

チラシデザイン:第103回サイエンス・カフェ札幌「つかめヒカリ みがけセンス ~ミライをひらく人工光合成」

 

制作者:伊藤あおい(2018年度本科・環境科学院修士1年)/制作年月:2018年7~8月、10月

 

 

今回のサイエンス・カフェ札幌のテーマは、「人工光合成」。話し手は、工学研究院 助教の石田洋平さんです。未来のくらしを大きく変える夢の技術とうたわれる「人工光合成」。それはいったいどんな技術なのか、研究者は見えないものを見通す「センス」をどのようにして身につけていくのか、そしてそんなセンスをみがいていったら、科学は私たちにとってどんな存在になるのか。このカフェでは、大人から小学生まで楽しめるように人工光合成のしくみを紹介しながら、研究者の「センス」や、未来のエネルギーについて考えていく内容でした。

 

 

ラフ案が生まれるまで

 

この「人工光合成」というキーワードに、私は縁のようなものを感じていました。実は大学院の講義ので人工光合成を知ったばかりだったからです。やる気も俄然わいてきていました。しかし、象徴する形を思い浮かべるのが難しい分野ですし、クライアントである対話の場の創造実習班(以下、対話班)との最初のミーティングでいただいた「見えないものを見るセンス」「鮮やかで色とりどり」「人工的」「子供向け」「Eテレ感」といったキーワードを形にするのに、とても苦労することとなりました。

 

 

最初に取り組んだのは、片っ端からアイデアを書きなぐることでした。浮かんだ形や言葉をボールペンでとりとめもなくひたすらノートに綴っていき、そこから徐々にデザインしていきました。チラシはA5で印刷されるので、A5無地のルーズリーフに、頭に浮かんだデザインをシャーペンで描いては積み上げました。初めは、人工光合成というキーワードから思い浮かぶイメージをとりあえず好きに形にしていき、一通りアイデアを出し切ったら一度冷静になって、よく考えるとテーマから外れているものや、必然性のないものを捨てていきました。

 

 

池田先生との話し合いの末、葉っぱや木をベースにすることにして、北欧調の柄を使った案と、花火をモチーフにした案の2パターンを考えました。それぞれにちゃんと意味があります。北欧柄はトーンがかわいらしく、子供にもウケが良いはずだと考えました。また、よく見ると顕微鏡で拡大した葉緑体に見えるような仕掛けにすることで、「見えないものを見るセンス」を表現する狙いがありました。花火案は、引いて見ると花火だけれど、火花の一つ一つが葉っぱに見えるような形に作り込むことにしました(もともとは、対話班メンバーの岩澤さんのPCにびっしりと整然と貼られたステッカーからヒントを得ました!笑)。

 

(元祖「北欧案」(左の3つ)と、元祖「花火案」(右))

 

クライアントとの協議

 

作り込み始める前に、これらのラフ案を対話班と共有し、クライアントとデザイナーの感覚に相違がないか確認する機会をつくりました。そこで、「花火だと必然的に夜になってしまうので、太陽光をエネルギーとして使う光合成のイメージから離れてしまう」「人工光合成の研究では顕微鏡でも確認することのできないほど微小な世界をあつかうので、顕鏡時の視野を模したデザインでないほうがいいのではないか」という、カフェ自体のコンセプトに関わる重要な意見をいただきました。加えて、「木をメインモチーフに使ったデザインも見てみたい」「もっと色とりどりのポップな感じが欲しい」というリクエストが来ました。

 

 

ここから、改稿と協議の日々が始まる

 

実は、グラフィックデザイン実習班内では花火案が一押しだったので、まずはこれを元に練っていくことにしました。夜空に花火をやめて、青空に太陽が輝くデザインに変えました。そして、イベント開催予定日が晩夏ということも考慮して、太陽にも向日葵にも見えるように工夫しました。

 

 

対話班の皆さんに見てもらったところ、「太陽の光の一つ一つがもっとはっきりと葉っぱに見えるようなデザインも見てみたい」と意見をいただいたので、以下のように改稿しました。

 

(右の案は、「手でつかむ」感じを入れてみてほしい、とのリクエストに応えたもの)

 

 

また別のパターンとして、リクエストに応えて木をメインモチーフにしたものと、「色とりどりでポップ」を意識してカラフルな葉っぱを散りばめた案を作りました。

 

 

 

失敗が生んだ奇跡!

 

私はその頃まだIllustratorの操作に慣れていなかったので、池田先生が大量の葉っぱの配置を手伝ってくださったのですが、そのとき素晴らしい偶然が奇跡を生みました。操作ミスで、せっかく並べていた葉っぱがばらばらぐちゃぐちゃになってしまったのですが、よく見てみるとまるで葉っぱが壁を伝って零れ落ちるような、流れのあるデザインになっていて、「これは面白い!」ということになりました。

 

しかもデザイン的に面白いだけでなく、葉っぱが下に溜まっていく様は、エネルギーの蓄積や、研究によって知見が蓄積されていくことの象徴としてもピッタリでした。科学の発見のように、失敗から成功が生まれた瞬間だったと思います。さらにデザインに必然性を与えるべく、人工光合成の世界が少しずつ明らかになっていくという時間の流れと、見えないものを徐々につかんでいく研究者の姿勢を表すために、葉っぱの色をグラデーションにすることにしました。

 

そしてできたのが、この案↓です。

 

(対話班との協議中に出た「デジモン風」に寄せて、背景をグレーに)

 

 

方向性は定まった。が!

 

対話班の方々にも、この葉っぱの流れ案は好評でした。しかし、上のデザインだと「あまりにもシックで、カフェのターゲットである子供向けのイメージからは外れてしまう」と指摘を受けました。ここで私達はやっと気づきました。対話班が期待する「Eテレ感」と、グラ班が思い浮かべる「Eテレ感」が、微妙にずれていたのです。「考えるカラス」じゃなく、「ねほりん ぱほりん」だったんだ!と。

 

そこで、初期にお蔵入りしていた北欧テイストを復活させることに。

 

 

さらに、「もっとモチモチした感じで!」との要望を受け、葉っぱを黒枠で囲み、角を丸くしました。葉っぱのレイアウトをさらに工夫し、やっと完成したのがこれ↓です。

 

(完成稿1 :9月ver.)

 

 

季節感を考えてマイナーチェンジ

 

しかし、9月6日、北海道胆振東部地震が発生し、このイベントは11月中旬に延期されることとなってしまいました。日本全国に発送されてしまった後だったので、マイナーチェンジをして送り直すことが決定しました。グラ班としては背景色を変えることを提案しようと思っていましたが、対話班の皆さんがこの水色を気に入ってくれたとのことで、背景色はそのままに、なんとか寒々しい秋の空に見えるように、葉っぱの色のほうを変えることにしました。

 

(完成稿2 :11月ver.)

 

 

コミュニケーションの重要性

 

チラシ作りから学んだことは、チラシは自分ひとりのものではない、ということです。私は当初、自分の好きなデザインを求めるあまり、クライアントである対話班の人達の意見をうまく飲み込むことが出来ていませんでした。しかし、クライアントが考えるコンセプトに合ったデザインでなくては、当然、チラシを見た方にもどんなイベントなのか伝わりません。相手の意見を見失わず、それでいて自分の考えも盛り込み、なおかつ、これから見る方々のことも考える。チラシ作りでは、多方面とのコミュニケーションの姿勢が常に求められることを痛感しました。

 

 

全体の印象を大きく左右するもの

 

また、文字情報のレイアウトの大切さを知りました。私はPC操作が物凄く苦手です。作業中に何度も変な所に文字が飛んでいってしまったり、テキストボックスを意味も無く大量に貼り付けてしまったり、とにかく一つの動作をするのに物凄く時間がかかりました。そんな私には、タイトル、カフェの情報をミリ単位で並べる作業は本当に苦行で、ここまで細かくそろえる必要なんてあるのかな?もうこれでいいんじゃないのかな?と何度も思いました。一般的にも、チラシデザインの中心はメインモチーフだと思います。私も、「文字情報なんて、せいぜい読めて、デザインの邪魔にさえなっていなければ、なんだっていいのでは?」と思っていました。ですが、きちんとバランスを考えてレイアウトする前と後では、紙面全体の印象が全く違いました。適当に文字情報を置いただけの状態では全体にぼやけた印象だったのに、レイアウトに気を配ると文字情報がしっかり伝わるだけでなく、メインモチーフも際立って見えるのです。これが今回、チラシ製作を体験したことでほんとうに身に染みてわかったことです。

 

 

 

終わりに

 

イメージしにくい事柄をデザインするのは難しく、悩んだことも多かったですが、周りの皆さんに助けられ、最後は形にすることができました。製作にあたり、優しく丁寧にご指導してくださった池田貴子先生、支えてくれたグラフィックデザイン班のみんな、具体的な意見をくださった対話の場の創造実習班の皆さん、種村先生、本当にありがとうございました。