2019年03月29日

受講生体験記

学び続けていく、ということ(一つの宣誓)

 

 

北大構内を歩くと、ところどころに設置された掲示板が目に付き、そこには北大内外で開催されるイベントやプログラムについてのチラシが張られています。一年前、そうして見たもののなかに「「科学」をかみ砕くライオンの絵」が描かれたチラシがありました。それがこの一年間受講したCoSTEPの受講生募集チラシでした。

 

 

当時の私は、研究を始めて間もない学部4年生で専門性も科学技術について伝えたいことも特に持たない人間でした。そんな人間でしたが、何かをしなければという衝動に身を任せてCoSTEPの受講を決めました。

 

所属したのはグラフィックデザイン実習です。この実習では主な活動としてイベント(主に対話の場の創造実習が企画運営するもの)のチラシ制作を行い、それを通してグラフィックデザインの手法や心構えを学びます。かねてより視覚情報を用いた情報伝達に興味と問題意識を持っていた私は、迷わずこの実習を選びました。

 

実習班として一年間で五つのイベントチラシを作成し、私はそのうち二つのイベントのチラシを作成しました。一つは、10月に開催された第102回サイエンス・カフェ札幌、もう一つは1月に開催された討論劇と評決ワークショップ。この二つのチラシ作成を通して、Adobe Illustratorという新たな表現の手段を手に入れ、伝えるデザインにとっての心構えを学ぶことができました。

 

 

ここまでは、受講前から想定できましたが、予想外の学びもありました。それは言葉を通じたコミュニケーションの重要性です。一見、グラフィックデザインでは、言語情報は重要でないように思えますし、私は言葉に縛られないコミュニケーションの可能性を期待していました。しかし実際にチラシを作成してみると、その過程では(残念ながら!)言葉を使ったコミュニケーションを頻繁に行いました。実習班内での案出し、イベント企画者とのすり合わせなどで、お互いに「理解した」と思うためには言葉による規格化が必要だからです。私たちはまだ言葉を通してでしか分かり合えないのです。グラフィックデザインをしていくうえでも言語感覚を磨く必要性を感じました。このように、あることを学んでいく過程で、新たな学ぶべき課題が見つかることがあります。

 

(執筆者が実習で製作したチラシで広報を行なった第102回サイエンス・カフェ札幌)

 

 

CoSTEPでは実習以外でも多くの学びの場があります。多様なバックグラウンドを持つ講師陣により毎週行われる講義や、個性的な受講生たちとの交流。それらは自分が今まで持ちえなかった視点を与え、私が何を知らないのか、私には何が足りないのかを気づかせてくれました。

 

 

この一年、大きな成果物として二枚のイベントチラシを作成し、そのチラシは北大構内のみならず、北海道各地、全国各地に貼られました。実際にイベント当日に参加すると、参加者からチラシをみてイベントに参加したというありがたい声もありました。しかし、CoSTEPで過ごした一年間に達成感はありません。それは、何も得るものがなかったわけでも、何もできなかったわけでもありません。多くの学びを通して、さらに学ぶべきことを見つけたからです。

 

CoSTEPでの一番の学びは、この学び続けていこうという姿勢でしょう。私の学びはこれから始まります。

 

 

樫村 尚宏(本科・グラフィックデザイン実習)

北海道大学理学部生物科学科(高分子)4年