2019年07月12日

授業レポート

「映像メディアと科学技術コミュニケーション」(06/29)早岡英介先生の講義レポート

     

    松本啓太郎(2019年度 選科B/学生)

     

    ディレクターと科学技術コミュニケーター
     

    今回はCoSTEP特任准教授の早岡英介先生に映像メディアを通した科学技術コミュニケーションについてお話いただきました。

     

    早岡先生は新聞記者を経て、テレビなどのディレクターを務めたという経歴をお持ちです。ディレクターに求められる能力とは、スタッフ・出演者をまとめる「マネジメント能力」、魅力的に伝える「情報加工力」、取材相手と関係を築き、その魅力を引き出すための「コミュニケーション能力」。速報性が求められる新聞に対し、作成決定から放映までが長いため、ディレクターには企画を通す力が求められます。早岡先生は、この3つの能力は科学技術コミュニケーターにも必要だと言います。

     

     

    映像メディアの利点―理解のスピード—
     

    お話は主題である表現についてに移ります。専門家でない、市民に対する情報発信の手段として、動的なコンテンツへの注目が高まっています。その理由は簡単に言うと、「動いているものに目がいってしまう」という私たちの性質にあるそうです。

     

    映像は、文字と比較するとより多くの伝えたい情報を、瞬時に伝達できるという特性があります。一方、削ぎ落される情報もあるため、受け手に合わせた情報発信手段を考えなくてはなりません。

     

    受け手に応じたアウトプット
     

    科学情報の受け手として、科学情報に興味のない「一般市民」、興味のある「関係者」専門家である「研究者」を仮定します。映像を通した発信の果たす役割は、興味のきっかけを作り、「一般市民」を少し「関係者」寄りにすることです。

     

    早岡先生が強調されたのは、3種の受け手のどれに自分が属するかは、情報の内容によって相対的に決まるということでした。発信の際には、いわゆる「一般市民」の感覚を大切にすることが大切になります。

     

    さらに、最近話題になっている、地球惑星科学の学会における、『ブラタモリ』とアウトリーチ活動に関する講演と絡めつつ、アウトプットにおける必要十分な省略の重要性を紹介。伝える内容を俯瞰することの大切さについて話されました。

     

     

    映像表現ならではの科学技術コミュニケーション
     

    映像で発信を行う際には、その特徴を活用した、興味のきっかけになり、なんとなく見てしまうものを作るのが理想です。ドローンやジンバルなどの新しい技術が、それ自体見ていて面白い映像の誕生に繋がっています。

     

    また注意点として、文章で伝えるべき内容なのか映像を用いるべきなのかの吟味や、インパクトに拘った結果の、「ひねりすぎ」への留意が求められます。

     

     

    物語性と共感
     

    ここまでの内容で、映像は、科学技術に関心の無い層の好みを的確に捉え、興味を引きだすのに向いたメディアであることが分かりました。映像に視聴者を引き込むのには、彼らが共感できるポイントを表現の中に埋め込むこと、映像に物語性を付与し、その世界の中に彼らを引き込むことが求められます。しかし、物語性は、科学・学問を定義づける客観性と矛盾します。映像における共感、感情移入を求める演出は、両刃の剣であることを、心にとめるべきだと早岡先生は言います。


    今回は映像作品の作成に携わってきた早岡先生ならではの、映像を利用した具体的な発信に対する講義でした。科学と社会を繋げることがCoSTEPの大きな活動目的の1つですが、短時間で本質を伝達できる映像の果たし得る役割の大きさが伝わってきました。情報の簡略化と正確性の保持の、出来得る限りの両立を目指しつつ、映像メディアを活用していきたいと感じました。