2019年08月13日

授業レポート

「科学技術コミュニケーションの事例研究」(7/31)三上直之先生の講義レポート

 

小池隆太(2019年度 本科/学生)

 

今回は北海道大学高等教育推進機構准教授の三上直之先生による講義でした。「科学技術コミュニケーションの事例研究」についてお話しいただきました。

 

 

 

先生本人が携わった事例

 

三上先生はCoSTEPの元教員で、立ち上げの段階から関わっておられたそうです。当時は対話の場の創造実習を担当され、まだ広く一般に知られていなかったサイエンスカフェを月1回のペースで、計42回も開催されたそうです。それが今日まで継続され、先日開催されたサイエンス・カフェ札幌は108回目を迎えることとなりました。また、コンセンサス会議や討論型市民調査といったミニパブリックスを用いた市民対話を行い、それを科学技術コミュニケーションにどう活かせるのかといった研究もされています。最新のプロジェクトとして、「ゲノム編集作物」に関する市民対話や「脱炭素社会への転換と生活の質」に関する市民陪審の例などを紹介していただきました。

 


事例研究

 

事例研究とは、多様な関係者の間で科学技術を巡るコミュニケーションが問題となっていた事例を対象に、インタビュー調査などによって事例を細かく分析し、それを用いて普遍的な論点について考察をしていく手法です。これは、社会の中で科学技術コミュニケーションの在り方を深く学んでいくための一つの方法です。

 

まず、事例研究の具体的な例を紹介していただきました。原発稼働の是非を問う討論型市民調査、社会学の手法をワークショップの分析に応用した研究、討論劇の参与観察、広報冊子の製作過程の分析、サイエンス・アートの分析などの説明がありました。討論型市民調査以外の事例は、CoSTEPが編集している学術誌「科学技術コミュニケーション」に載っているので、後で読んでみようと思います。

 

 

 

事例研究「で」学ぶ

 

事例研究とはどのようなものかを理解した後にやってほしいこと、それは、事例研究を通して学ぶことだ、と三上先生は言います。ここでは事例研究の方法を実際に活用して学ぶための要点を説明します。

 

まず、事例に関する論文そのものはインターネットなどで検索をすれば出てくるので、それを読むことが最初のステップだと言います。読むときはひとりもしくは複数で読み、読んだことを話しあうことで事例研究「で」学ぶことができると言います。また自分で事例研究の論文を書くとより深い学びが得られると言います。その際、自らが行っている実践活動の事例報告を書くことから始めると良いとのことでした。書くことで省察を通じた実践活動の改善や、第三者からの評価などのメリットを得ることができます。

 

論文を書くというとハードルが高いように感じる方が多いと思います。しかし、論文はマニュアル化された形式であり、絵画で言えばデッサンにあたるものです。書くためには、①対象とする事例を決め、テーマを設定する。➁関連しそうな資料・文献を調査する。➂質的量的なデータを収集する。④分析した「データと対話する」ことを通じて考察する、というプロセスがあります。このプロセスに沿って進めていけば事例研究の論文を書くことはそこまで難しくはないと、三上先生は言います。また、サンプルとなる論文を見つけ、どのような要素で構成されているか、同様の要素を書くにはどうすればよいかを考えてみることで、例え論文を書くまでに至らなくても、深い学びが得られるとのことでした。

 

 

 

本格的に学びたい人のために

 

最後に、今後事例研究を使って本格的に学びたい人に向けて、必要なことを説明していただきました。ある事例を共有するかどうかを決めるのは問題意識であり、実際に研究を進めていくにあたってはともに学ぶ仲間が必要不可欠だと言います。また、事例研究とは何か、何のための事例研究なのか、というメタ的な視点を携える必要があるとも仰っていました。

 

自分は卒業論文以外で論文形式の文章を書いたことはありませんが、今回の講義を聴くうちに、事例研究とその論文を書いてみたいと思うようになりました。幸いCoSTEPは身近に事例が多くあるので機会を見つけて実践していきたいと思います。

 

三上先生、ありがとうございました。