2018年10月01日

活動報告

リスクコミュニケーション実習による福島訪問2018

今年はCoSTEP修了生など有志が中心となって、2018年9月22〜24日まで福島県川内村、大熊町、富岡町、田村市を訪ねました。

メンバーは、村田祥子さん(北海道大学農学院修士1年)、越後谷駿さん(同理学部4年)、堤光太郎さん(社会人、CoSTEP13期生)、古澤正三さん(社会人、同12期生)、山本淳博さん (社会人、同12期生)です。スタッフとして、早岡英介CoSTEP特任准教授、信濃卓郎センター長(農研機構東北農業研究センター農業放射線研究センター)、鳥羽妙尚絅学院大学准教授、本田紀生さん(NPO法人元気になろう福島理事長・大熊町ふるさと応援隊理事・事務局長)が参加しました。

 


■秋元さんの農家民宿を体験
今回の訪問の主な目的は昨年度、調査でお世話になった川内村・毛戸(もうど)地区にある秋元通(とおる)さんと、その妻の一子(いちこ)さんの農家民宿で宿泊し、お話を伺うことでした。豊かな山林に囲まれ、手入れされた花々が咲き競う庭で、ぜいたくな時間を過ごすことができました。また通さんが作った見晴らし抜群の露天風呂も最高でした。

 

山菜の天ぷら


今年2月にCoSTEP受講生とスタッフが3名宿泊していますが、今回は大勢で押しかけたにも関わらず、季節の幸をふんだんに使った料理でもてなしてくださいました。
近くの林で実っている甘い栗のお菓子や、自宅でとれた梅干し、育てているナツハゼの実を使った果実酒、採れたてのウコッケイの卵など、ぜいたくなごちそうの数々。通さんがご自宅周辺で取って、一子さんが料理した山の幸を今回はじっくりと味わうことができて、理屈抜きにまた川内村を訪れたいと思わせてくれる素晴らしい体験でした。

 

秋元通さんからウコッケイの卵を見せていただく

 

ヤマメの塩焼き

 

 

■大熊町「じじい部隊」の今
2日目は富岡町を視察した後、大熊町の坂下ダムの管理事務所を拠点に、防犯や清掃、施設の管理を担ってきた、人呼んで「じじい部隊」のお2人、元大熊町土地改良区職員の杉内憲成さんと、元消防士の中島孝一さんにお会いして、大熊町の最新状況に関してお話を伺いました。2014年11月にもCoSTEPでは大熊町を訪れ、じじい部隊の皆さんにお話を聞いています。

 

中島孝一さん

 

杉内憲成さん(右)

  

今年4月から帰還に向け長期滞在できる「準備宿泊」が始まり、来春には大川原地区に町役場が再開して町民の帰還も始まる予定です。じじい部隊の仕事も来春をめどに終える予定と伺いました。町民が帰還できるよう大熊町を長い間、見守ってきた皆さんの活動には頭が下がります。以前、斜面にブルーシートで描かれていた「かえろう」の文字が、じじい部隊の皆さんによって「おかえり」に変わっていたことが非常に印象的でした。

 

大熊町の坂下ダムより福島第一原発をのぞむ

 

 

■かわうちワインの取り組み
3日目はかわうちワイン株式会社の高木亨さんにワイン畑を案内していただきました。川内村は、ブドウの栽培とワイン製造を村の新しい産業と位置づけています。ひんやりとした気候の高台には、ぶどう畑だけでなく、醸造施設やレストランなども作って観光客など多くの人に集まってほしいという構想があることを教えていただきました。

 

川内村大字上川内の高田島地区にある約3ヘクタールのワインぶどうの圃場「高田島ヴィンヤード」

 

高木亨さん(右)

 

 

2月にボランティアで参加したCoSTEP修了生は、秋を間近にして苗木が大きく育ったことに感動した様子でした。また近くには慶応大学の学生ボランティアも参加して、作業の拠点となる小屋を作っているところでした。ワインを軸にここから新しい川内村の文化を発信していくということで、今後が非常に楽しみです。

 

■川内村の天山文庫を訪ねる
詩人の草野心平(1903-1988)の別宅、天山文庫が公開されています。茅葺き屋根にガラスを使った開放的な空間が特徴の古民家で、まるで別世界に来たように落ち着いた気持ちになれる場所です。天山文庫を管理されている川内村出身の志賀風夏さんに案内していただきました。

志賀風夏さん(中央)

 

 

新宿にあったバーを再現したカウンターや、人間味あふれるエッセイや詩、野球大会の写真など、心平と川内村の人々とのふれあいから、文化や芸術を大事にしてきた村の歴史を知りました。志賀さんのお話からも、自然と調和して日々を楽しむこの村の暮らしが気に入っていることがひしひしと伝わってきました。

 

 

今回、震災から7年半が過ぎた福島を訪ねて、課題とともに、未来へ向けた様々な取り組みがあることを知ることができました。福島を訪ねることで、単なる津波や原発事故の被災地という側面を超えた様々な教訓と知恵を学ぶことができます。これからもCoSTEPでは機会があるたびに福島を訪れ、受講生たちの学びの場にさせていただきたいと考えています。

 

 

■参加した受講生、修了生の感想

山菜やヤマメなどの食べ物がとてもおいしく、豊かな自然に囲まれた川内村にまた行ってみたいです。
ただ、震災後そのままと思われる建物やまっさらな土地を見て、約7年半たっても復興の進んでいない現状も知りました。福島の状況について聞く機会が減っていく中、自分自身で今を感じられたことは、大変良かったです。
越後谷駿(理学部4年、CoSTEP13期生)

 

今回、じじい部隊の方にお会いできたことは大きな学びとなりました。震災直後、奮闘された話の凄まじさにはただ驚くばかりでしたし、現在まで活動を「続けてきた」力強さには自身の考えや行動を見つめ直すきっかけになりました。
一方で、震災直後のイメージ(まだ厳重な防護服を着て作業をしている)で現在の福島を見ていた部分もあったことに気づき、一度ついたイメージの根深さはどうすれば良いのか、今も考えています。
堤光太郎(社会人、CoSTEP13期生)

 

福島に訪れたのは、実は今回が初めてでした。震災の爪痕や、地元の皆さんの姿。
現場に足を運ばなければ、実感できないことばかりでした。
出発前から体調を崩しておりましたが、非常に有意義な時間を過ごすことができ、無理をしてでも行った甲斐がありました。企画ありがとうございました!
村田祥子(農学院修士1年、CoSTEP受講生)

 


本実習は、文部省科学研究費補助金(科研費基盤C)「リスクコミュニケーター養成手法の開発」(課題番号:16K01000 代表:早岡英介)の支援によって実施しています。