2018年10月31日

活動報告

第102回サイエンス・カフェ札幌「竹取工学物語。〜自然のモノをよろづのことに使ふには〜」を開催しました

 

米田 鈴枝(2018年度 本科/社会人)

 

2018年10月14日(日)、佐藤太裕さん(北海道大学 大学院工学研究院 准教授)をゲストにお招きし、第102回サイエンス・カフェ札幌「竹取工学物語。〜自然のモノをよろづのことに使ふには〜」を開催しました。

 

(ゲストの佐藤さん。スタッフで揃えた竹のペンダントもお似合いです)

 

今回のカフェは、対話の場の創造実習の受講生(大津、大澤、鈴木、米田、六角)が中心をなって企画・運営を行いました。あいにくの雨にもかかわらず、約90人もの方が参加してくださいました。今回のカフェのテーマが「竹」ということで、本物の竹や様々な「よろづの竹グッズ」が展示され、竹が自生しない札幌であることを忘れてしまうような雰囲気の中、カフェが始まります。

 

(3mを超える孟宗竹が参加者のみなさんを出迎えます)

 

(パンフレットには、竹の基礎知識や竹検定。カフェの前に予習です)

 

(「竹取工学物語」と題された本を読むという劇から始まりました)

 


佐藤さんの研究

 

カフェは、物語になぞらえて章構成で進んでいきます。第1章は、佐藤さんの竹に関する研究のお話でした。構造力学・材料力学が専門の佐藤さん。 「中空円筒」という形状のものを対象に研究を行ってきた中で「竹の強さには何か構造力学的な秘密があるのでは!?」と思い、竹の研究を始めたと言います。その秘密は「節」と「維管束」にあるのだとお話してくれました。竹には節がたくさんありますが、均一の間隔で分布していません。札幌生まれの札幌育ちの佐藤さんは、この事実を竹の研究を通して初めて知ったのだそうです。必要な箇所に必要なだけ節があり、節が根元から先端にかけて「密・疎・密」と分布することで、外からの力に耐え、倒壊を防いでいるのです。

 

(佐藤さんの高校時代の恩師と一緒に、力学実験を行いました)

 

もう一つの秘密、維管束。維管束も竹の断面中に均一には分布していません。佐藤さんは、理論的に最適な分布を計算し、実際の竹の維管束分布と比較しました。それらはとてもよく似ていて、予想以上の発見に佐藤さんは驚いたそうです。

 

(尺八製作者からいただいた竹のスライスを参加者に配布し、維管束の分布を観察しました)

 

竹が自ら最適化してきた形態と組織。佐藤さんは、竹が教えてくれたことを「よろづのこと」に使いたいと工学へと展開させています。そして、竹だけではなく様々な植物が教えてくれる智恵を科学的に解き明かし、モノづくりをしたいと今後の目標をお話してくれました。

 


教えて、佐藤さん!

 

第2章では、「教えて、佐藤さん!」と題して会場の皆さんから佐藤さんへの質問を受け付けました。曲げモーメントについての力学的な質問や、竹以外で注目している植物、なぜ自然は自ら組織を最適化できるのか、など様々な質問が会場から寄せられ、丁寧に答えてくれました。

 

(モーメントに関する質問に答える佐藤さん)

 

 

“つかひかたかるた”で考えよう

 

第3章では、生物の種類や性質などを表したカード “つかひかたかるた”を使って、「自然のモノをよろづのことに使ふには」というテーマについて、佐藤さんと会場の皆さんと一緒に考えるワークショップを行いました。席が隣の人と3、4人のグループを作り、自己紹介をするところから始まります。

 

(“つかひかたかるた”考案者の大澤さん。ルールの説明を行います)

 

自己紹介が終わると、いよいよ“つかひかたかるた”を使ったワークが始まります。会場の皆さん一人一人に配布された、生き物かるた・性質かるた・モノかるたをグループ内で協力し組み合わせ、実際に実用化されているモノの例を考えました。サメの肌の性質を利用した水着や、ヤモリの足の構造を利用したテープなどが紹介されると、会場からは驚きや納得の声があがります。

 

次は、アイデアかるたを使って新しい組み合わせを考えるワークです。苦戦しながらもグループ内で話し合い、「ホタルの発光を利用した夜でも安全な傘」など新しいアイデアが会場から挙がりました。その他にも、「うなぎのヌメヌメを利用した◯◯」や「◯◯のひんやり感を利用したひんやり枕」など、あともう一歩で完成するアイデアの卵がたくさん生まれました。

 

(新しいアイデアを考えるワーク。あちらこちらから活発に話し合う声が聞こえます)

 


佐藤さんが目指すもの

 

ワークが終わり、「自然のモノをよろづのことに使ふには」ということについて考えてきたカフェも終わりに向かいます。生物が持つ形態には、何か意味があると佐藤さんは考えます。それらを科学的に解明し、新しいモノづくりの考え方を構築し、そして実際にモノづくりに繋げることが佐藤さんの目標です。「みなさんが“つかひかたかるた”で考えたアイデアが、研究のヒントにもなるかもしれない」ともお話されていました。

 

実際に出来たモノを紹介していただける日がとても楽しみです。

 


自然のモノをよろづのことに使ふには

 

(カフェの終了後も、佐藤さんに質問をしたり竹の展示をご覧になる方が多くいました)

 

私たちのまわりには、自然のモノの特性を使って作られたモノがたくさんあります。普段見ていたモノをいつもとはちょっと違う視点で見てみると、そこには自然のモノの性質や、科学的に得られた知見が隠れていることを発見できるかもしれません。

 

佐藤さん、お越しいただいた皆さん、ありがとうございました。

 

 

対話の場の創造実習:大澤 康太郎、大津 恵実、鈴木  花、米田 鈴枝、六角 美鈴