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触媒としてのサイエンス・カフェ札幌②
双方向性を重視した
コミュニケーションを積み重ねていく

触媒としてのサイエンス・カフェ札幌イメージ

1. 協同的な学びの促進

一つ目は、CoSTEPが運営する「科学技術コミュニケーター養成プログラム」の受講生に対する「学びの場」を提供しているということです。サイエンス・カフェ札幌という実践は、教員の指導の下にプログラムの受講生によって担われており、受講生が科学技術コミュニケーションを社会の中で体験的に学んでいくための非常に有効な機会となっています。

ゲストである北大の研究者と交渉や協同作業を重ねながら、実際に市民の方々を迎えて科学技術コミュニケーションのイベントを実施することは平易なことではありませんが、そのハードルを乗り越えることによって得るものは、決して座学では補うことができません。サイエンス・カフェ札幌は、いわば「協同的な学びを促進するための触媒」と位置づけることができるのです。

2. 研究者・参加者への影響

二つ目は、カフェにゲストとして招いた研究者や、来場する参加者に少なからぬ影響を与えているという点です。ゲストの研究者の中には、最初は研究以外のことに時間を割かれることに抵抗感をもったり、サイエンスカフェの意義や効果に疑問をなげかけたりする方もいるのですが、カフェを運営する受講生との真摯なやり取り、そして本番での参加者からの積極的な反応を体験したあとでは、ほとんどの方が「やってよかった」「ぜひまたやりたい」とおっしゃってくれます。

また、参加者だった学生の中には、ゲストの研究者の話に魅了されたことがきっかけで、その研究者のラボに入ることをめざして学業に励み、現在晴れてラボの一員として活躍している方もいます。

3.カフェをきっかけにした活動の広がり

三つ目は、サイエンスカフェの「スピンオフ」とでも言えるような様々なイベントが、CoSTEPでサイエンスカフェの企画運営に携わった修了生を中心に各地で広まっている点です。

修了生を核に、サイエンスカフェが札幌のみならず小樽や旭川、函館でも開催されるようになり、さらに道外でも、職場の担当者として、あるいは一市民として、CoSTEP修了生はサイエンスカフェの創設ないし恒常的な運営のために大きく貢献してきました。CoSTEPでのサイエンス・カフェ札幌を通じた実践的な教育の成果が全国に波及していることを顕著に示す事例だと言えるでしょう。修了生が創設した、あるいは実行委員として関わるなど重要な役割を果たしたサイエンスカフェをいくつか挙げると、以下のようなものがあります。

  • Bizサイエンスカフェおたる
  • 北大 de Night Cafe(北海道大学創成研究機構)
  • 人文学カフェ(北海道大学文学研究科)
  • 北農研サイエンスカフェ「クラークの丘から」(北海道農業研究センター)
  • 気象サイエンスカフェ(札幌管区気象台 ※日本で唯一、地元の気象台が開催するサイエンスカフェ)
  • あさひかわサイエンスカフェ(あさひかわサイエンスカフェ実行委員会)
  • 科学夜話(サイエンス・サポート函館)
  • サイエンスカフェにいがた(サイエンスカフェにいがた)
  • サイエンスカフェ神戸(神戸大学ヒューマン・コミュニティ創成研究センター)

特筆すべきは、名古屋に2009年6月に誕生した、世界初の常設・民間運営のサイエンスカフェ「ガリレオ・ガリレイ」は、本プログラム修了生の協力があってこそ実現したものだということです。この協力は、「サイエンスカフェがビジネスモデルとして成立し、全国に展開されれば、市民の科学技術に対する理解の促進に大いに寄与する」という観点から行ったものです。

サイエンスカフェの拓く未来

もちろんサイエンスカフェを実施するだけでさきほど述べたようなトランスサイエンス問題が簡単に解決されるわけではありません。実際には、コンセンサス会議や討議型世論調査など、トランスサイエンス問題により特化した科学技術コミュニケーションの手法が開発され、併用されています。しかしサイエンスカフェはなにより、これらの手法と比べて気軽に実施できるのが利点です。

長期的に見れば、サイエンス・カフェ札幌のような機会を多数設けることによって、それらが「触媒」としてはたらき、専門家と双方向のコミュニケーションを行う文化が社会に根付き、市民が「科学技術とのよりよいつきあい方」を身につけていくことができるのではないでしょうか。

私たちはそのような未来構想を描きながら、日々の活動に取り組んでいます。

  

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