書評の編 ~本から知る~

 己が本を読んで感じた驚きや感動をどのようにして他者に届けるか。どのようにしたら本が持つ魅力を他者と共有できるのか。
書評の編では、〝本〟について書く「書評」を通してサイエンスライティングの極意を伝授する。

第一章 本を選ぶ

其の壱 読んでみたいと感じた本を選ぶべし

 タイトルに惹かれた、表紙が目に止まった、仕事で必要だから、本を読む理由は様々ある。しかし、どんな理由でも、自分が「読んでみたい!」と感じる本を選ぶこと。読みたい気持ちがないのに、その本の魅力は理解できない。

其の弐 時事性・普遍性を考慮すべし

 他者にも読んでもらいたいと勧める場合、なぜ、いま、その本を勧めるのか。 一つは、世間で話題となっている、注目を浴びるテーマであるといった「時事性」を考慮することが重要だ。
 また、「普遍性」という観点も重要である。具体的には、常に社会の関心の的となるような科学や哲学などの学問、時を経ても廃れない物語や歴史などがある。

第二章 本を読む

其の壱 通読すべし

 一冊の本を、はじめからおわりまで読みとおす。その本の良さ、魅力を理解するために通読は必須である。

其の弐 気になるところは付箋を貼るべし

 読みながら、ハッとした、思わず感心したなど、気になるところに、付箋を貼っておくこと。効率的に内容を振りかえることができる。

其の参 二度、三度と読み直すべし

 通読した後、すぐ、または、時を経て経験を蓄積したうえで読み直すこと。新しい発見や気づきが得られるかもしれない。

第三章 本について書く

其の壱 届けたい相手を想像すべし

 だれに勧めたいのか。明確にすることが重要である。対象が明確でなければ、伝えたいことが伝わらない。伝える相手は「本を読んでいない」者がほとんどであることも考慮すること。

其の弐 紹介・評価・批評性の三要素をおさえるべし

 その本にどのような内容が書いてあるのか、著者や主題の背景を客観的に「紹介」する。この本は読むに値するかの「評価」を示す。本の内容に対して感じた自身の良し悪しの解釈、感想といった「批評性」もおさえること。

其の参 パラグラフを組み替えてストーリーを工夫すべし

 文章は複数のパラグラフで構成されていることを意識すること。また、ひとつのパラグラフで扱う内容はひとつだけとする。
 パラグラフの順序を試行錯誤して組み替え、伝わりやすいストーリーを見つけ出すこと。

其の四 とにかくメモをとるべし

 感じたこと、気づいたことをとにかくメモすること。書くべき内容が形づくられていく。その際に、第二章其の弐の付箋を活用すると良い。

番外編 ライティング・編集班メンバーの書評

人工知能の核心(羽生善治,NHKスペシャル取材班)2017年

 〜書き出し部分〜
 空前の将棋ブームがやってきた。中学生棋士、藤井聡太四段が14歳でプロ入りから公式戦無敗の29連勝という前人未到の記録を達成した。藤井四段は人工知能を搭載した将棋ソフトを研究に活用していることも話題となった。


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いきものもどき 世の中の「もどき」vs「本家」な生き物が大集合!(山村紳一郎)2009年

 〜書き出し部分〜
 「いきものもどき」と聞いて何を想像するだろう?人間モドキを知っているのは、50代半ば以降の漫画やテレビ好きの少年のなれの果てくらいか。「もどき」とは似て非なるものを指す言葉なので、筆者自身はこのタイトルから「いきものに似て非なるもの」つまりは非生命体を想像してしまう。しかしこの本は、あるいきものに対して外見の似たソックリさんたちのオンパレードの本である。表紙と裏表紙にはそれぞれ一対の「もどき」と「本家」と称されるいきもののイラストが並べられており、本書の内容が一目でわかるようになっている。


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科学は誰のものか〜社会の側から問い直す(平川秀幸)2010年

 〜書き出し部分〜
 科学はだれのものか――こう問われたとき、あなたはどう答えるだろうか。 新しく開発された医療技術を実際に使うかどうか、効率よく農作物を栽培できる遺伝子組換え技術を食卓に並ぶ食品に使っていいか、それらを判断するのは誰だろう。高エネルギーの物質から電力を効率よく取り出せる技術が生まれたとして、それを普及させるかどうか、普及させるのであればどこに施設を建てるのか、誰がどう決断するのだろうか。


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神様のカルテ(夏川草介)2011年、 2013年、 2014年、 2015年

 〜書き出し部分〜
 私はきっと一止(いちと)に恋をしている。
 一に止まる、と書いて一止。縦に並べると正の字になるこの名前は、忙しい毎日の中でも人に対して真っ直ぐに、時に立ち止まって考えようとする彼の性格そのものだと思う。
 本作は、駆け出しの内科医、栗原一止(くりはらいちと)を主人公とする物語である。医学部を卒業後、同輩の多くは大学病院に残る中、一止は“24時間365日対応”を掲げる地域の基幹病院へ飛び込んだ。休みは数か月に1日あれば良い方で、寝不足や頭痛と戦いながらも、患者や取り巻く人々とのつながりの中で、一止なりの「良い医者」を目指す。


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大震災のなかで 私たちは何をすべきか(内橋克人)2011年

 〜書き出し部分〜
 この本は、東日本大震災直後から「大震災のなかで私たちは何をすべきか」と自問自答しながらも現地で活動を続けた33名が、震災の意味、復興の形を綴った文集です。著者は、小説家の大江健三郎さんや精神科医の中井久夫さんをはじめ、医師、ボランティア、作家、学者など多様な立場の人たちです。編者である内橋克人さんの言葉から始まり、「3.11は何を問うているのか」「命をつなぐ」「暮らしを支える」「復興のかたち」の4つのテーマでまとめられています。


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弱いロボット(岡田美智男)2012年

 〜書き出し部分〜
 ロボットとコミュニケーションするのは、人類の夢の一つのような気がする。科学技術はAIを進化させ、コンピューターが人間と会話できるようになってきた。今やスマホにSiriが搭載されて、誰でもコンピューターと喋れる始末だ。それらのプログラムは精密で、たどたどしく「アリガトウゴザイマシタ!」としゃべっていた、あの道端の自動販売機よりはだいぶ人間らしくなった。


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ライティング虎の巻 書評の編 ~本から知る~
二〇一八年三月十日 発行
執筆者 福嶋篤
発行所 CoSTEPライティング・編集班実習
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