取材の編 ~ことから知る~

 取材の編では、〝こと〟を書くことを伝授する。ここでの〝こと〟として「北大祭」や「北大マルシェ」のようなイヴェントものを例にあげる。取材計画を立て、必要な道具を揃えて、取材に向かわねばならない。取材から掲載までの時間は短く、速報性の高い記事を書かねばならないので、行動には集中力と瞬発力が必要とされるのだ。

第一章 準備編

其の壱 取材先を知るべし

 目標のイヴェントを設定したら、事前にチラシやプログラムなどいろいろな資料を入手する。あればウェブサイトの確認も行おう。会場が広範囲だったり、催事が同じ時間帯に複数行われたりする場合は、プログラムなどを詳細に検討し、取材の場所や時刻に応じて、優先順位の検討を行なおう。
 事前に事務局などイヴェント責任者への取材申し込みが必要だったり、注意事項などの確認をしておかねばならない場合もあったりするから注意しよう。

其の弐 取材道具を用意すべし

    筆記用具 日頃使い馴れたもの。まさかのために予備も準備しよう。ペンのインクやノートの白紙が切れたらみっともない取材になる。

    カメラ 一眼レフを最良とするが、コンパクトデジカメクラス程度は用意したい。携帯・スマホは手軽だが、相手に安っぽさを感じさせ失礼にあたることもある。

    ボイスレコーダー スマホの録音アプリも様々あるが、音質・指向性はどうしても専用機がまさる。スマホを使うならせめて外部マイクを用意しよう。また、出来ればレコーダーを二つ用意して、予備録音があればなお安心だ。

    名刺と資料 自己紹介だけなら名刺で十分だが、実例として掲載誌バックナンバーや、掲載サイトのプリントを渡すと、取材相手に信頼感を持ってもらえる。

 これら「七つ道具」を持っていざ取材へ。ただし、カメラ、ボイスレコーダーなどでは電池切れやメモリー不足のないように十分チェックし、予備も用意すること。また、ボイスレコーダーは確実に録音されているかどうか、取材の初めでの確認は必須だ。

第二章 撮影術編

其の壱 枚数で勝負すべし

「はい、チーズ!」などと言って写真を撮るわけではないので、撮れた写真を見ると目を瞑っていたり、ブレていたりと、期待ほど良い写真は撮れないものだ。パラパラ漫画が出来るほど多数回のシャッターを切ってこそやっと奇跡の一枚が撮れると思った方がよい。また暗くなってきた時には、フラッシュの使用の有無で写真のイメージは変わるので、いくつもののモードで撮っておくことも忘れずに。

其の弐 位置・角度・大きさによる効果を考えるべし

 撮影する目線の違いは写真の雰囲気を大幅に変える。たとえば、大群衆を前にして、普通にカメラを構えても、数人からせいぜい数十人しか画面に収まらない。脚立の上に立って高い位置でカメラを構えれば、遠くまで俯瞰できて大群衆の全体が画面に収まる。高い位置が取れない場合でも、カメラを頭上にかかげて撮影するだけでもその効果はある。
 その場の雰囲気がわかるようにするには、広角度でねらって被写体の周りの景色も写し込もう。逆に品物などを撮るときは、モノに迫って撮って全体が画面に隙間なく収まるようにしよう。
 人物を撮るときは、全身、腰から上、胸から上、顔のアップ、さらには目とか耳とかのパーツのクローズアップを撮り分けよう。ズームイン・ズームアウトを考えるのは大切だ。
 人物像に迫るときは正面からだけでなく、左右両方から撮ったり、下から仰ぎ見る、上から見下ろすなどいろいろな構図で撮ろう。記事のレイアウトによっては左右が必要になることもある。雰囲気に合わせた写真が必要なのだ。撮る角度とズームイン・ズームアウトを組み合わせれば、写真表現にさらに幅が出る。

其の参 比較対象物・看板など、写真の補足になるものを写し込むべし

 品物などの紹介は、その大きさがわかるように、誰かに持ってもらったり、十円玉など大きさのわかりやすいものを横に並べたりして撮ること。
 場所やモノの説明となるような看板やポスターやチラシなども一緒に写すと、一目瞭然。文章やキャプションの字数減、あるいは省略に役立つ。
 ただし写し込んではいけないものの代表が電柱による「串刺し写真」。人の頭を貫通するように、電柱や柱などが写った写真をこういうそうだ。

とにもかくにもカメラを構えたら「一歩でも二歩でも前へ」が鉄則。邪魔なものはどかしたり、効果的な小物を置いたり、人に持ってもらったりと、(過剰でない)「演出する」ことも必要。一旦、カメラのファインダーを覗いたら、あなたの目は読者の代わりとなって、貪欲に被写体に食らいついていこう。

第三章 取材に臨む心構え編

其の壱 一期一会と思うべし

 取材したい〝こと〟が目的なので、そこで会う人々はまさに一期一会。これこそが取材の醍醐味だ。会うことの無かった人と会い、聞くことも無かった話が聞ける。そこから交流が生まれることもある。故に人への関心や興味もまた良い記事を書く原動力となる。

其の弐 遠慮は無用と思うべし

 取材を受け入れてもらった以上、あとはこっちのもの。とにかく聞きたいことは何でも聞くこと。写真を撮るときも、ポーズや立ち位置など、どしどしリクエストすることが、良い結果を得る最短距離だ。

其の参 笑顔と度胸と好奇心で臨むべし

 なにより取材中は笑顔を絶やさず、度胸を決めて飛び込もう。自分の興味のある取材対象は自ずとは会話が弾むもの。たとえ今は興味が小さくとも、自分が楽しんだり理解したりすることが重要。興味はその後についてくる。何はともあれ好奇心の塊になることは肝要だ。

 取材が終われば執筆に取りかかる。取材メモや写真を見ながら、時にはボイスレコーダーの音声を聞きながら、集めた材料を調理する。
文章がうまくなるには、とにかく書いて、書いて、書きまくるしかない。書くためには取材でネタを集めるのだが、その時に事前の準備と道具、ちょっとした写真の技術が合わさると、格段にその質に差がつく。この虎の巻ではさわりを開陳したまでだ。取材とは書くための材料を集めること。多くの取材を通して、多くの人と知り合い、多くのことに興味を持って、科学技術コミュニケータの腕を磨いて欲しい。

ライティング虎の巻 取材の編 ~ことから知る~
二〇一八年三月十日 発行
執筆者 林忠一
発行所 CoSTEPライティング・編集班実習
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