23号に対するアドバイザーコメント

JJSCでは外部のご意見を頂き、編集方針等を改善していくため、アドバイザー制度を設けています。第23号に掲載の論考についてアドバイザーから、コメントをいただきました。公開の許可を頂いたコメントについて公開いたします。

 

吉澤剛 オスロ都市大学 労働研究所 リサーチフェロー

1. 掲載原稿の内容について

小特集の序文には、「人と動物との関係性」をテーマとし、特に「感情」に焦点を当てた議論を試みたとあります。これまでの科学技術コミュニケーションにはあまり見られないテーマで、シンポジウム登壇者の方々の顔ぶれも寄稿内容も目新しく、小さくまとまりつつあった本分野の新たなフロンティアを切り拓こうという意気込みを感じました。ただ、勢いが余ったのか、科学技術コミュニケーションという分野において今回のテーマがどのようなつながりや広がりを持ったものなのかという説明が不足している印象があります。可愛いとか怖い、気持ち悪いという感情によって個別の動物の保護・処分を判断するのではなく、幅広い生態系のあり方にもとづいて長期的に対策していくという、コミュニケーションの二面性と意思決定との接続。動物の殺処分などに伴う職員の精神的ケア。そして、パネルディスカッションで示唆された人と動物とのコミュニケーション。このテーマは、コミュニケーションにおける非論理性、非言語性、ケアとしての側面を浮かび上がらせており、科学技術はコミュニケーションの対象であると同時にツールとしての役割もあります。前回、前々回の小特集ではアートが主題となっており、その意味でこれまでの科学技術コミュニケーションを超克して先に進もうという強い意図を感じますが、従来の読者を含めて、もう少し丁寧に雑誌の理念や焦点の変容を説明する機会があればよいと思います。
公募原稿の二報はそれぞれコミュニケーションの方法論的検討と政治的文脈の変化を扱っており、どちらも時宜を得た題材で綿密な調査研究を経た成果として、じっくり読ませる内容となっています。


2. 掲載原稿のカテゴリー(論文、報告、ノート)について

本号は論文のカテゴリーがなく、小特集以外では報告とノート、それぞれ一報ずつ掲載されています。ここ数年、特集原稿に比して公募原稿が少ない傾向があるため、従来の本分野の研究者にとどまらず幅広く投稿を呼びかける努力があってよいかもしれません。また、論文というカテゴリーには必ずしも量的分析を必須としないといった方法論での間口の広さも訴えてはどうでしょう。


3. 掲載原稿の著者について(分布等)

小特集では新たな、そして幅広い専門性を持った著者の獲得に成功しているものの、公募原稿の著者の多様性が望まれます。


4. 装丁(印刷物)

定期刊行誌としての装丁の一貫性は評価できる半面、特集内容に関したデザインや写真を盛り込むなど、表紙を通して幅広い読者とコミュニケーションしようという気概がもう少し欲しいです。人工知能学会誌はリニューアルした表紙によって炎上しましたが、その後に購読者や幅広い市民とのコミュニケーションを強く意識するようになったと聞きます。一般公募や有志を含めデザイナーやサイエンスイラストレーターとどのように表紙を作成するのか、どのような内容を込むのか。予算などの制約があるとはいえ、オンラインが中心でコミュニケーションを主題にしている雑誌なのですから、アイデアを駆使していろいろ挑戦してもらえればと思います。


5. 編集体制・投稿規定・執筆要領について

創刊から10年が経過し、科学技術コミュニケーションという分野も、ジャーナルという学術誌のあり方もずいぶん変わりました。より充実した運営体制によって、掲載原稿の質を高め、幅広い投稿者と読者を獲得するという目的を追求するのであれば、本誌の出版母体を大学から切り離し、投稿原稿の掲載料は有料にする、などの改革も考えられます。


6. その他

オープンアクセスの時代であり、多様な関係者とのコミュニケーションを促進するという観点から、北海道大学の学術成果コレクションとしておくだけでなく、DOIへの登録を進め、国内外に幅広く研究成果を共有できる体制が望ましいのではないでしょうか。


*吉澤先生のご指摘を受け、JJSCではDOIを全ての掲載論文について付与しました。

(2019/3/15)

2019年3月15日