24号に対するアドバイザーコメント

JJSCでは外部のご意見を頂き、編集方針等を改善していくため、アドバイザー制度を設けています。第24号に掲載の論考についてアドバイザーから、コメントをいただきました。公開の許可を頂いたコメントについて公開いたします。

 

吉澤剛 オスロ都市大学 労働研究所 リサーチフェロー

1. 掲載原稿の内容について

伊藤論文について、医薬品情報に関するコミュニケーションは科学技術コミュニケーションにおいてどういう位置づけにあるのかわかりませんでした。東日本大震災後で問題となったことは科学研究や技術システムの不確実性にも起因するコミュニケーションの難しさでした。本論文はそれに対して、《確立した》科学的知識をめぐる理解や認知、行動のズレです。また、専門家と非専門家というわかりやすい区分自体への自己批判が必要だったと思います。奥本論文は北大での科学技術コミュニケーター養成教育の成果について、科学技術コミュニケーションの歴史を俯瞰的に振り返っており、CoSTEP受講初期と後期でのアンケート結果の比較分析はとても興味深い結果です。ただ、低意識群の存在が非常に気がかりなまま論文が閉じられているので、属性分析やインタビューなどによる質的分析といったトライアンギュレーションが加わるとより良かったかもしれません。続く四報の報告は、科学館からゲーミフィケーション、クラウドファンディング、リスクコミュニケーションまで多様なテーマが揃い、2017年以降の本誌における科学技術コミュニケーション論の新たな展開を強く感じさせます。


2. 掲載原稿のカテゴリー(論文、報告、ノート)について

本号は特集がないため余計にそう思うのかもしれませんが、本号の掲載論文・報告の特徴、あるいはそれに関わらず科学技術コミュニケーションとして、現在、研究や議論しなければならない点についてハイライトするようなエディトリアルが欲しいと思いました。特に当該分野の研究者でなければいずれの論文・報告も読み通すのが難しいかもしれませんし、より広い読者が当該分野について興味関心をもってもらえるような導入となるカテゴリーはあってもよいのではないでしょうか。


3. 掲載原稿の著者について(分布等)

前回のコメントに引き続き、公募原稿の著者の多様性が望まれます。著者の多様性を確保するために、巻頭言のようなゲストエディトリアルを幅広い分野の研究者・実務者に対してお願いするというのもありえるでしょう。


4. 装丁(印刷物)

前回と同様です。


5. 編集体制・投稿規定・執筆要領について

前回と同様です。


6. その他

CoSTEPが編集・発行する科学技術コミュニケーションのジャーナルとして10年が経過し、その間に科学技術コミュニケーションを取り巻く現状は大きく変わりました。CoSTEP自身の取り組みを振り返ったり、日本における科学技術コミュニケーションの歴史的な研究はありますが、本誌の位置づけという再帰的な議論においては政治的・制度的言及が弱く、結局のところ査読付の大学紀要を大きく超えるものではないのかという、なかなかもどかしい思いがします。科学技術コミュニケーションという分野を日本で先導し、世界においてもユニークな役割を果たすという気概があるのか、そうではなく、CoSTEP関係者に出版機会を与えることが優先されるのか、編集委員会のメンバー構成を含めて検討の余地があるかもしれません。STS分野全般に言えますが、正直なところマンネリ感は否めず、若手にとっての魅力が乏しくなりつつある印象があります。個人的には科学コミュニケーション研究会や日本サイエンスコミュニケーション協会、あるいはメディア/医療/情報分野におけるコミュニケーション系の近隣団体と合同で特集号を組んだり、そうした他団体との公開ディスカッションや相乗り企画を実施したり、他誌も含めたサイエントメトリクスを行うなどして、各団体の役割を再確認し、本誌の役割を差別化することが必要ではないかと思います。本誌が危機感を持って、それを率先して行うことができれば、科学技術コミュニケーションの先駆者としての矜恃も示せるのではないでしょうか。
DOIが付与されたのはとても良いことだと思います。ご苦労さまでした。

(2019/3/15)

2019年3月15日