フレッシュアイズ


#77 博物館で大学院生と高校生が学ぶ(2)~社会とつながる研究

2017年01月12日

 

大学ってどんなところ? 北海道登別明日中等教育学校4回生(高校1年)の皆さんが、北大に一日インターンシップにやって来ました。後編の今回は戸田実里さん、金子聡美さん(農学院修士1年)、田中穂乃佳さん(医学研究科修士1年)の3名が総合博物館を案内しながら、北大と研究の世界についてお話しします。大学院生はこの日のために準備を重ねてきました。研究内容と熱意は伝わるでしょうか。

 

物質循環による環境汚染 / 2階 獣医学部展示

【宮城栞太・登別明日中等教育学校4回生】

獣医学部のウシの骨格標本を背に戸田実里さん(農学院修士1年)がスライドを使ってわかりやすくプレゼンをしてくれました。「牧場の無駄をなくそう」という戸田さんのフレーズを聞き、牧場の農地でも減らすのだろうか? と私は考えました。しかし、そんな単純な話ではなく、牧場をもっと大きくとらえて「物質循環」に着眼している点に驚きました。牧場での物質循環とは、えさや肥料などを構成する物質が、家畜に食べられたり直接牧草などの栄養になったりして、かたちを変えながら環境中をめぐることを指します。この過程で、えさや肥料はふんや尿として排出され、それらがN₂OやNO₃⁻となり環境汚染につながります。

この現象について生産者はあまり知らない、という現状を戸田さんから聞き、もっと知ってもらうべき、どのように知ってもらおうか、と私も考えました。利益をふやすためには、生産量の増加が不可欠ですが、そのためにえさや肥料を増量しても環境への悪影響が増えるだけです。戸田さんはこのような悪影響をなくすことを目指し、実際に牧場を訪ねて話を伺い、牧場の実態にあった研究を進めているそうです。


今回話をうかがった展示ゾーンにはシカのはく製もあり、とても印象的でした。そして「物質循環から無駄をなくしていこう」という戸田さんの研究にかける思いが、話している顔の表情からとても伝わってきました。

 

 

青い花に青い遺伝子を足すと? ~遺伝子組み換え研究 / 2階 農学部展示

【森勇樹・登別明日中等教育学校4回生】

私は遺伝子組み換えについて金子聡美さん(農学院修士1年)に、農学部の展示ゾーンでお話を聞きました。遺伝子組み換えとは、ある生物に他の遺伝子を足して新しい形質を与えることです。例えば、お米に黄色いスイセンの遺伝子を足すと、ビタミンAのもとを多く含む黄色いゴールデンライスを作ることができます。また、大豆に光る遺伝子を足せば、光る大豆もできてしまいます。実際に農学部展示で、カラフルに光るきれいな大豆を見ることができました。

「じゃあ、もし青い花に青い遺伝子を足すとどうなるとおもいます?」と金子さんからここでクイズがでました。私は色が変わらないだろうと思いましたが、驚いたことに、遺伝子同士が打ち消し合って、青い色がなくなるそうです。金子さんは、この現象をいかして新しい綺麗な模様の花を作りたいと、私たちにうれしそうにお話をしてくれました。

このお話しを聞いて、私の遺伝子組み換え=危険というイメージが変わりました。食品と異なり、お花のような人体には直接の影響がないような使い方もある、ということが理解できました。そして何より、研究という名の仕事に取り組んでいる大学院生の方々が、私たちに受験の話や研究内容の話をしつつ、研究のやりがいを背中で教えてくれました。今回は受験と将来について考えられるいい機会となりました。今後は、やりがいを考えて、大学や仕事を選んでいきたいと思いました。

 

 

健康なこと / 3階 医学標本の世界

【依田時生・登別明日中等教育学校4回生】

皆さんはどのような状態が健康であると思いますか。病気でないことが健康という訳ではありません。WHOによる健康の定義は、「身体的、社会的、精神的に健全であること」となっています。では身体的、社会的、精神的に健康になるためには、どのようなことをするのが良いのでしょうか。

「その一つの方法は、笑うことだと考えられています」と田中穂乃佳さん(医学研究科修士1年)は教えてくれました。1970年代、アメリカのとある病院に、強直性脊椎炎という体が痛くなる病気で、寝たきりになった患者さんがいました。その患者、ノーマン・カズンズは病気の原因をストレスと考え、毎日面白いテレビを見て笑うように心がけたところ、一年後には会社に戻り仕事ができるほどに回復したそうです。

 

その後さらに健康と笑いの研究は進み、はにかむ程度ではなく声を出して笑うのがよい、は行で自然に笑うのがよい、笑いの原因は何でも良い、といったことが分かってきているそうです。

 

田中さんは現在、健康と食の関係について研究しており、今回は話題を広げてお話をしていただきました。田中さんは、「研究は社会に貢献できるものが望ましい」と笑顔で言っていました。僕もそのとおりだと思います。研究をすることは人々の役に立ち、社会の健康につながるのではないでしょうか。将来僕も、研究を通して少しでも社会に貢献したいです。まずは皆さん、声を出してたくさん笑いましょう。

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前後編にわたりお送りした高校生一日インターンシップ。高校生には、大学院生が自分の研究についていきいきと話す様子が印象に残ったようです。大学院生にとっては自分の研究をふり返るいい機会になりました。高校生も大学院生もBe Ambitious!

 

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この記事は、北海道登別明日中等教育学校のインターンシップにCoSTEPが協力し、大学院共通授業科目「大学院生のためのアウトリーチ法」としてて実施した成果の一部です。

 【取材・執筆:宮城栞太、森勇樹、依田時生・登別明日中等教育学校4回生+CoSTEP】

 

戸田さんの所属研究室はこちら

農学院 共生基盤学専攻

環境生命地球化学研究室(内田義崇 テニアトラック助教)

研究室HP 

 

金子さんの所属研究室はこちら

農学院 生物資源科学専攻

植物育種科学講座

細胞工学研究室(金澤章 准教授)

研究室HP

 

田中さんの所属研究室はこちら

大学院医学研究科

社会医学講座

公衆衛生分野(玉腰暁子 教授)

研究室HP


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