フレッシュアイズ


#88 scienceとhumanityの二刀流でエボラに挑む(2)~お侍先生 おすすめの本~

2017年09月21日

 

前回の記事では、エボラウイルス研究に取り組む高田礼人さん(人獣共通感染症リサーチセンター 教授)に研究や学生時代のお話を伺いました。今回は、3冊の本を通してさらに高田さんに迫ります。

【湯川朔弥/志村繁尚/伊藤百・総合理系1年】

(お侍さんのような風貌の高田さん)

                                                                 

 

私の人生に影響を与えた一冊

『ブラック・ジャック』 手塚治虫 著 (秋田書店/1974-1995)

 

週刊少年チャンピオンで連載されていた手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』。医師免許は持っていないが超一流の医療テクニックを持った主人公ブラック・ジャックと、様々な患者との関わり合いを描いています。

「最初に読んだのはチャンピオンで連載していたとき、小学生ぐらいだよ。解剖のシーンがあって、ちょっとぎょぎょっとした記憶があるけどね。あの時代で安楽死をテーマに描いていることもすごいと思う。やっぱり医療、医学の永遠の課題かもしれないけどさ、それをキリコとブラックジャックというキャラを使って、考えさせる組み立てじゃない? でも当時読んだ時には、ただ単に知識として受け入れていたかな」

(「ウイルスに関する話は無いよね。寄生虫はあったかな…」とページをめくる高田さん。

開いているのは中部アフリカのガボンを舞台に、治療法のない「ブラックジャック病」に立ち向かうエピソード)

 

「ブラックジャックの気持ちは分かるよね。金持ちからはたくさん手術料を取って、貧乏な人からは取らない。美徳として素直に受け入れられるキャラクターじゃないかな。どういうのが、人間としてかっこいかを考えさせられるね」

 

高田さんの他にも、医療現場に携わる多くの人々に愛読されている『ブラック・ジャック』は、医療者のバイブルなのかもしれません。

 

 

学生に読み継いでほしい一冊

『武士道 BUSHIDO』 新渡戸稲造 著 ・ 須和徳平 訳 (講談社インターナショナル/1998)

「どうして宗教無くして道徳観念を身につけることができるのか?」。外国人教員にこう問われた新渡戸稲造は、独自の考察を重ね、それをまとめたものを1900年にアメリカで『Bushido: The Soul of Japan』として出版しました。本作は英語原文と並べて日本語訳をつけたものです。

 

「実は学生の時には読んだことが無かったんですけど、何のタイミングだったか…新渡戸稲造のことを調べようとなって、10年くらい前に読んだんです。僕はよく外国に行くでしょ。その時に、日本のことを説明しなきゃならないことが結構あるんですよ。僕自身、剣道をやってたので、剣道や侍の説明する時に、武士道にはちょっと触れたいってのもあります。ちょっとありきたりな回答かもしれませんが、日本人が失っていってるものが確かに書かれてるかなと思うんで、若い人にも読んでほしいね」

『武士道』には、今の私たちがともすると「古い」「時代遅れ」と感じてしまうような、失われつつある精神について説明されています。読めばそうした「古い」武士道精神の美徳を理解できるかもしれませんし、あるいは、自分の中に今まで気づかなかった「武士道」の断片を発見できるかもしれません。

 

 

今ホットな研究がわかる一冊

「エボラウイルス研究の現状と最新の知見」 高田礼人 著 『グローバル感染症最前線:NTDsの先へ(Vol.3)』 医学のあゆみ 258号 (医歯薬出版/2017)

 

高田さんは、、5種類のエボラウイルスに全て対する免疫力をつけるワクチンや、治療薬の開発をしています。さらに、感染経路を明らかにするために、エボラウイルスが共生している動物が何なのかを突き止めようとしています。これらのエボラ研究の現状について、高田さんが専門雑誌にまとめたのが表題の記事です。

(コウモリから採血する高田さん(左)。コウモリはエボラウイルスの自然宿主であることが疑われているが、確実な証明はまだなされていない)

<写真提供:高田礼人さん>

 

「中央アフリカでは毎年ほとんどどこかの国で流行が起きている。実際報告されていないだけで実際はもっと多いかもしれない。エボラ出血熱の流行を抑えるために一番大事なのは、感染した人を早く見つけて、他の人と接触させないこと。でも症状だけでは判断できない。それに最新の医療設備がないところでも診断できなければいけない。だからどこでも使える診断キットを開発したんだよ。でもね、治療薬とセットじゃないと理想的じゃない。診断キットであなた感染してるよってなっても、感染したら死ぬイメージが定着しているから、エボラに感染したーってひどく動揺だけさせてしまう。だから何割かでも救える薬ができたら、少しだけでも安心してもらえると思うんだよね」

 

エボラ出血熱にかかった人が、死の絶望を意識するのではなく、治療への希望を見出すことができるようにと、診断キットと治療薬の実用化を目指している、高田さんの強い意思を知ることができました。

 

 

------

生粋の北大生ともいえる高田さんは、今もアフリカでエボラウイルスと戦っています。そんな高田さんが私たちに最後に贈ってくださった言葉は「北大生なら、『都ぞ弥生』は必修です」でした。100年以上の歴史をもつ恵迪寮歌の代表『都ぞ弥生』。私たちも歌を覚え、そして共に歌える仲間をつくっていきたいと思います。

 

※ ※ ※ ※ ※

この記事は、湯川朔弥さん(総合理系1年)、志村繁尚さん(総合理系1年)、伊藤百さん(総合理系1年)が、全学教育科目「北海道大学の”今”を知る」の履修を通して制作した成果物です。


同じシーンの記事