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#28 星の誕生を見つめる、北大の電波望遠鏡(3)

2013年02月22日

 

北海道大学が苫小牧にもつ電波望遠鏡。研究はもちろん、教育のためにも大いに活用されています。

徂徠和夫さん(理学院宇宙理学専攻 准教授)と、徂徠さんのもとで学ぶ大学院の学生さんに話を聞きました。

 

 

<徂徠さんにうかがいます>

 

苫小牧に電波望遠鏡を持っていることに、どんなメリットがあるのでしょうか

 

メリットは、自分たちの望遠鏡ですから、占有して使えることです。長野県の野辺山に、国立天文台の口径45メートルという立派な電波望遠鏡がありますが、多くの研究者が利用を希望するので、“面白そうだけど、成果が出るかどうかわからない”リスキーな研究には、なかなか使えません。

 

 

かつて僕たちは、星が生まれるガスのなかでも、かなり初期の段階にあるガスからの電波を、苫小牧の電波望遠鏡で探しました。それまでは、“きっと検出できる だろう”と予想されるところばかり探していたのですが、僕たちはそれよりずっと広い範囲をざーっと探すことをやったのです。これは大型の共同利用装置では、なかなかできないことです。

 

 

教育の面ではどうですか

 

学生の教育にも、たいへん役立っています。苫小牧の望遠鏡でいろいろやらせて、電波望遠鏡を自由に使える状態にまで教育し、そのあと野辺山天文台での研究プロジェクトなどに送り出しています。この研究室で育った人たちが、活躍してくれています。

 

 

<大学院修士課程1年の、田代貴美さんと瀬川陽子さんに聞きます>

 

学部4年生のときに苫小牧の電波望遠鏡を使って卒業研究をまとめたそうですが

 

3人で交替して、夜中も1時間おきぐらいに様子を見ながら、3カ月観測しました。基本は札幌の研究室でしたが、装置が故障して遠隔操作で対応できないときは、苫小牧に行って直しました。楽しかったよね。ドライブというか、先生といろいろ話しながら行くのも。(田代さん)

 

鏡面の掃除もやったし、苫小牧を自分たちで運営しているんだという実感、一体感があったよね。望遠鏡を“トマオ”と呼んだりして。(瀬川さん)

 

(インタビューに応じてくれた、田代さん(左)と瀬川さん)

 

 

就活を始めたそうですが、どんな仕事に就きたいのですか?

 

この研究室では、自分の研究テーマとは別に、一人一つずつ“開発課題”を与えられるんです。私は、望遠鏡での観測に必要な気象データを収集して表示させると いうプログラムを、Windowsで作られていたのを、Linux化するという課題を、学部時代から担当しました。こうして学んだことは、通信関係や規模の大きなシステムの開発など、天文以外にも活かせると思います。天文というサイエンスをやっていくのは難しいかもしれないけど、少し視野を広げればいろいろな仕事があって、この企業はまったく関係ないというところはないです。(田代さん)

 

 

電波天文学の分野に進もうと思ったわけは?

 

学部3年の時に、徂徠先生に観測実習で野辺山に連れて行ってもらいました。そのとき、自分たちの手で大きな観測装置を動かしてサイエンスをするということに、すごく面白みを感じたんです。・・・“天文にはロマンがある”という徂徠先生の言葉にも、惹かれました。(田代さん)

 

 

※ ※ 取材後記 ※ ※

 

「子どものころ、望遠鏡は買ってもらえなくて、肉眼で星を見ていた」という徂徠さん。今でも「たまに光学望遠鏡で研究しているところにいくと、妙に新鮮な気がします」とのこと。

 

若い人たちに天文学の魅力を伝えようと、積極的に働きかけてもいます。オープンキャンパスのときには、中華鍋をパラボラアンテナの替りにして衛星放送を受信する、というイベントを計画したそうです。

 

(「中華鍋にボールを落とすと、ほら、必ず同じ一点に向けて跳ね返るでしょ」)

 

 

学生たちと苫小牧に行ったときは、名物のホッキ貝を堪能します。

 

(左から、加藤裕太(学部4年)梅井迪子(博士課程1年)南原甫幸(修士課程2年)そして徂徠和夫の皆さん)

 

 

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