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#93 つかめヒカリ みがけセンス~ミライをひらく人工光合成~

2018年09月06日

 

植物が行う「光合成」。おなじみの言葉ですが、光と水と二酸化酸素から、でんぷんなどの複雑な物質と酸素をつくる驚くべき仕組みです。その「光合成」に「人工」を加えた「人工光合成」は、文字通り光合成を人間の力で再現・応用しようという未来へ向けた技術。ここ10年、世界的に研究が活性化しています。11月18日に開催されるサイエンスカフェで、【北海道胆振東部地震のため、9月9日の開催は中止となり、11月18日に延期となりました】人工光合成について話題提供する、石田洋平さん(工学研究院 助教)に、お話を伺いました。石田さんの語る「ケミカルセンス」にも注目です。

【望月貴文・CoSTEP本科生/社会人】

 

(湘南のサーファーを感じさせる風貌の石田さん。趣味は筋トレとトランペット)

 

 

-人工光合成について教えて下さい

 

人工光合成は、光のエネルギーで、単純な物質から複雑な物質を作り出すことです。でも、植物と同じように、水と二酸化炭素からでんぷんを作ったりするのは、まだまだ先の見えない話になりますね。

(光合成の大まかな流れと、人工光合成との共通点(①~④)。植物の光合成では、光を受けて水と二酸化炭素から、酸素とでんぷんの素になるグルコースをつくる。人工光合成も、光エネルギーを化学エネルギーに変換する点が共通している)

 

広い意味では、光のエネルギーで水を分解して水素を作ることも人工光合成と言えます。その歴史は古く、二酸化チタンに光を当てると、水が分解されて水素と酸素が発生する現象が、1968年に「本多-藤嶋効果」として発表されました。これがスタートとなり、後にオイルショックもあって、エネルギーをつくりだす新しい技術に注目が集まり始めました。光のエネルギーで物質の中の電子を動かし、電気エネルギーとして取り出す太陽電池も、広義での人工光合成関連研究と言われています。

 

生物、化学、工学などの分野でいろいろな視点から研究が行われていますが、人工光合成研究の最終的なゴールは、人類のエネルギー源を、現在の化石燃料メインから太陽エネルギーへと置換にすることにあります。

 

 

-石田さんは、何に注目をして研究をしていますか?

 

僕は、人工光合成の一番初めの段階、光をまんべんなく集める仕組みを研究しています。いろいろな方法がありますが、「ポルフィリン」という植物中の色素に似た構造の分子に注目しています。色素は光を吸収する性質をもっていますが、色素分子がただあるだけでは不十分で、色素分子が集合してかつキレイに整列している状態が非常に重要です。

(日本化学会主催の体験入学でやってきた高校生と、葉っぱの色素分子をつかった実験をする石田さん)

 

そこで、「粘土ナノシート」という、厚さ1ナノメートルほどのシートの上にポルフィリンをくっつけ、ある程度規則性をコントロールした配列を作り、光を効率よく吸収するかを調べています。自分たちの手で、より安定に、より効率よく光を吸収する配列を発見し、植物を上回る性質を生み出していくわけです。

(粘土ナノシート上に、ポルフィリン分子を規則的に配列させる。異なるポルフィリンを使うことで、例えば様々な色の光を吸収させることができる)

 

また現在は、すごく小さな金属の粒、ナノ粒子が、色素分子のように光をよく吸収する性質を持つことに着目した研究も行っています。

 

 

-今回のサイエンスカフェではタイトルに「みがけセンス」とありますが、このセンスとは?

 

僕は、このセンスを「ケミカルセンス」と言っています。ケミカルセンスの要素は、一つ目は「何が原因で何が起きているか理解できる」、二つ目は「似た現象から証拠も交えて、そこから類推できる」、三つ目は「純粋な物質観を持てる」、この三点でしょうか。今回のインタビューで、初めて誰かに説明するという形で考えてみました。

 

一つ目は、よく言われる原因と結果の法則というか、因果関係の向きを理解できるか、というものですね。これがないと研究はできない。二つ目は、直接的な証拠はなくても「こうだろう」と推察できる感覚。もちろん証拠に基づいて考える経験が積み上がって、初めてセンスとして身につくものです。三つ目について、僕は、ケミカルセンスって日本語訳すると「物質観」かなと。化学は物質を扱う学問ですから、それぞれの物質が持っている基本的な性質や量、単位を感覚として体に入れる、ということです。

(日本化学会主催の体験入学でやってきた高校生に質問形式でレクチャー。質問を考えることもケミカルセンスを鍛える立派な方法とのこと)

 

 

-最後に、サイエンスカフェで伝えたいことは?

 

化学的な知識云々だけではなく、さきほど話したケミカルセンス、つまり「何かを見て、それを考える」ということを、伝えたいですね。「何かを知る」と「何かを自分で考える」ということは違うんだよ、ということ話したい。

 

逆に参加者から、「科学者ってどう思う?」とか、子どもの参加者であれば、「自分たちが大人になったときに、日本や地球がどうなって欲しい?」とかを知りたい。好奇心の塊、若い人たちのエネルギーを純粋に吸収したいです。

(サイエンスカフェ企画スタッフと一緒に。当日はどんなお話がされるのでしょうか?)

 

 

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石田さんがゲストのサイエンス・カフェ札幌の詳細はこちら

第102回サイエンス・カフェ札幌 つかめヒカリ みがけセンス~ミライをひらく人工光合成~

【本イベントは北海道胆振東部地震のため、9月9日の開催は中止となり、11月18日に延期となりました】

【日 時】11月18日(日)14:30 16:00(開場14:00)

【場 所】紀伊國屋書店札幌本店 1F インナーガーデン

北海道札幌市中央区北5条西5-7 sapporo55 1F(011-231-2131)

【ゲスト】石田洋平さん(北海道大学大学院 工学研究院 助教)

【聞き手】聞き手:CoSTEP 対話の場創造実習 受講生

【参加費】無料

【定 員】60名(申し込み不要)

【対 象】小学生以上

【主 催】北海道大学高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター

科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP・コーステップ)

【WEB】http://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/costep/contents/article/1833/

 


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