クローズアップ


#94 竹取の科学者、札幌にあり

2018年10月10日

 

野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使いけり……竹取物語の一節にもあるように、人は昔々から竹を使って様々なモノを作り、生活の中で使っていたようです。軽くて丈夫でしなやか、そのような竹の特性を佐藤太裕さん(北海道大学大学院 工学研究院 准教授)は、科学的に明らかにしました。構造力学とは、主に「建造物が外から力を受けた時にどのような変形をするのか」を扱う学問です。佐藤さんは、自然物である竹に構造力学を適用したのです。そして更に、その竹が持つ構造と機能を活かして、「モノづくり」をしたいと語ります。10月14日に開催される、北海道大学CoSTEP主催の第102回サイエンス・カフェ札幌「竹取工学物語。 〜自然のモノをよろづのことに使ふには〜」にゲストとして出演する佐藤さんに、お話をお聞きしました。

【六角美鈴・CoSTEP本科生/社会人】

 

 


中空円筒をつきつめたら「竹」に至った

 

佐藤さんは、自身の専門である構造力学の中で「円筒状のもの」の曲がりやすさや折れやすさを研究してきました。大きなものでいくと「水中浮遊式トンネル」から、「カーボンナノチューブ」というナノスケールの目には見えないようなものまで、大きさや材料が違っていても、円筒状のものを研究の対象としています。円筒状のものに負荷がかかった時に形はどのように変化するのか、材料と構造をどのように最適化すれば折れ曲がりにくくなるのか、ということを研究するなかで、佐藤さんは竹に注目します。

 

竹が自生しない、一般的にはあまり竹に馴染みのない北海道で生まれ育ったそうですが、「円筒状のもの」をずっと研究してきた佐藤さんにとっては、竹との出逢いは必然のものだったのかもしれません。「大きなものから小さなものまで、中空円筒をつきつめたら竹だった」と佐藤さんは言います。

 

24時間で1mも伸びることがあるほど竹は成長速度が異常に早く、また木材などと比べても格段に軽いにも関わらず、雨風にさらされる自然環境の中で折れることなく立っていることができる竹には、何か強さの秘密があるはずだと考えた佐藤さん。そこで竹の強さの秘密を構造力学・材料力学の観点から検証したところ、「節の分布」「維管束の分布」にそれぞれ鍵があることを明らかにしました。

 

(実際の竹と理論を比べます)

 

 

折れない竹、その構造の秘訣は「節」と「維管束」の分布にあり

 

円筒は、力がかかり折れ曲りそうになったときに、その断面は真円形を保てなくなり楕円形になります。楕円形がどんどんつぶれてしまうと、筒はやがて折れ曲がってしまうことになります。しかし、円筒に節がある場合、節が断面を真円形に保とうとするため、断面はつぶれにくくなります。さらに言えば、節の間隔が短ければ短いほど、変形の度合いは少なくなります。これを「キャップ効果」といいます。竹の節は、このキャップ効果を果たしているのです。では、節がたくさんあればあるほどいいかというと、単純にそうとも言えません。節がありすぎると重たくなってしまい、竹が自身の重さに耐えられなくなってしまうのです。そのため竹の節は、根元部分など「曲げようとする力」が大きくかかる部分に多めに、つまり、間隔が狭くなるよう、とても合理的に分布しています。

 

また、竹の強さの秘密はもうひとつ、維管束の分布にもあります。竹の中の維管束の分布が根元部分と先端部分では違い、それぞれ折れ曲りにくくなるよう、適切に分布しているのです。竹の根元に近い部分の維管束の分布を見ると、竹の内側の維管束の数に対して、外側の維管束の数が大幅に増えた状態で分布しています。それに対して、先端に近い部分の維管束の分布を見ると、内側よりも外側の方が維管束の数は多いですが、比較的竹断面に平均的に分布します。そもそもに円筒状のものが望ましい構造にある時の理論的な特性と、竹断面の実際の維管束分布を比べてみたところ、その二つは驚くほど近いことがわかりました。竹は、自然環境で生きていく上で、自ずと折れ曲がりにくい構造になっていったのだろうと、佐藤さんは語ります。

 


サイエンスの知見を活かして「モノづくり」へ

 

佐藤さんは、この竹の合理的な構造を「モノづくり」に活かしていきたいと考えています。また、対象も竹だけではなく、木の枝のつき方などに関心を寄せるなど、「植物の合理的な構造や、その周期性」へと研究の幅を広げようとしています。

 

生物の構造や機能を参考に新しい技術を開発し「モノづくり」に活かすことを「バイオミメティクス(生物模倣技術)」と呼びますが、生物に限ることなく「自然のモノの機能・構造」を解き明かし、得られたサイエンスの知見をベースにして「モノづくり」に活かしたいと語る佐藤さん。構造力学では、橋やトンネルなどの建造物が対象となりますが、生物の機能などを力学的にもう一度見直してみたとき、そこに新たな発見は多く、まだまだ未開の地だと佐藤さんは言います。佐藤さんが生み出す新しいモノ、楽しみにしています。

 

(佐藤さんと、サイエンス・カフェ札幌を企画するCoSTEPのメンバー)

 

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佐藤さんがゲストのサイエンス・カフェ札幌の詳細はこちら


第102回サイエンス・カフェ札幌 竹取工学物語。~自然のモノをよろづのことに使ふには~
【日 時】10月14日(日)14:30〜16:00(開場14:00)
【場 所】紀伊國屋書店札幌本店 1F インナーガーデン
     北海道札幌市中央区北5条西5-7 sapporo55 1F(011-231-2131)
【ゲスト】佐藤太裕さん(北海道大学大学院 工学研究院 准教授)
【聞き手】聞き手:CoSTEP 対話の場の創造実習 受講生
【参加費】無料
【定 員】80名(申込み不要)
【主 催】北海道大学高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター
     科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP・コーステップ)

【サイト】http://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/costep/contents/article/1861/


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