匠のわざ


#5 北海道大学附属図書館HUSCAP〜世界リポジトリランキング上位を維持する理由とは〜

2019年01月10日

 

2018年11月の世界リポジトリランキングで、北大のHUSCAPが46位にランキングされました。HUSCAPとは「北海道大学学術成果コレクション(HUSCAP; Hokkaido University collection of SCholarly and Academic Papers; ハスカップ)」、つまり誰でもインターネットで読める学術資料のコレクションです。今回、結城憲司さん(附属図書館 研究支援課長)と、高石しのぶさん(同 研究支援企画担当)に、世界46位、日本国内で3位というランキング上位を維持する「わざ」と北大の強みについてうかがいました。

 

 

ーーHUSCAPについて教えてください

 

北海道大学の機関リポジトリです。正式運用は2006年4月からです。北大の研究者や大学院生などが著した、学術論文や学会発表資料、教育資料などを登録して、一般に公開しています。HUSCAPに登録すると、検索しやすいように書誌情報が整備され、永続的な閲覧が可能になります。現在の登録数は約59,000件、これまでの累積ダウンロード数は約6,970万件です(2018年12月現在)。HUSCAPの特徴の一つに、登録された文献の本文を読める点があります。他の機関リポジトリの中には、タイトルは登録されていても、本文の登録がないものもあります。でも、利用者さんが、文献を探しても、アクセスして本文を読めないと、がっかりしてしまいますよね。本文をつけて登録するのは、HUSCAPのこだわりのひとつです。

 

(結城憲司さん(右)と高石しのぶさん(左))

 


ーー機関リポジトリとはなんですか

 

機関リポジトリとは、大学や研究機関が作成した、学術論文や教育資料、場合によって研究データをデジタル情報として公開する場のことです。研究成果を公開することで、その利用を促進し、学術研究のさらなる発展を目指すしくみです。また、機関リポジトリは、いわば「大学の研究のショーケース」の役割も担っています。どのような研究が大学で行われているのかを、整理して公開し、多くの人に知ってもらうことは、大学の説明責任を果たすことにもつながります。
このように、機関リポジトリでは、それぞれの機関に所属する研究者の学術研究の成果を集め、必要ならば出版社に許諾を得て、多くの方に無料で公開できるようにしています。このような考えかたを「オープンアクセス」といいます。

 

(結城憲司さん)

 


ーー「世界リポジトリランキング」について教えてください

 

世界リポジトリランキングは、オープンアクセスの促進を目的として、スペイン高等科学研究院が実施しています。2004年頃から始まり、一般に年2回、世界の大学や研究機関を対象としたランキングが公表されます。評価基準は公開されていないのですが、今回はおそらくGoogle Scholarの収録データ件数に基づいてランク付けがおこなわれていたのではないでしょうか。

 


ーーHUSCAPは今回世界で46位にランキングされていますね

 

はい、今回は北大のHUSCAPは世界で46位、国内では京都大学、大阪大学についで3位です。北大は日本の大学における総論文数は現在7位にランクづけされています。これに対して、リポジトリランキング国内3位ということは、北大は他と比べて論文の公開が進んでいるともいえるのではないでしょうか。HUSCAPは2013年以降、国内で常に5位以内、世界でも150位台より上位を保っています。

 

(高石しのぶさん)

 


ーーなぜ、ランキングで上位を維持できるのでしょうか

 

HUSCAPに登録されているデータは大きく三つの種類に分けることができます。一つめは、北大の教員の方々が国内外の学術雑誌に投稿した論文です。世界的な学術データベースである Web of Science に登録された論文を図書館で検索して、執筆者に確認し、出版社の許諾を得たうえで、HUSCAPに登録して公開していきます。HUSCAPの運用後、比較的早い時期から、継続的にこの作業を実施したことで、学内の認知度も高まってきたように思います。
二つめは、大学の学部や学科が出している研究紀要です。バックナンバーも含めて、北大の電子ジャーナルとして公開します。そして、三つめは、北大の大学院生が執筆した、博士論文です。北大を含め、日本の大学では、2013年4月より、博士論文のインターネット公開を義務化しています。これらの登録作業を進めることで、収録データを増やしていっています。この作業は、図書館の本館だけではなく、2010年4月からは部局の図書室とも協力して、北大の図書館全体で行っています。今は年間3,000件のHUSCAP登録を目標にしています。

 

 

ーー他にはどのような工夫が行われているのでしょうか

 

HUSCAPではかなり初期から、GoogleやGoogle Scholarで検索すると、登録されている論文が上位に表示されるように工夫をしています。このような見えないところの工夫も、HUSCAPが上位を占めている理由かもしれません。

 


ーー今後HUSCAPは、どのように発展していくのでしょうか

 

これからは、研究データの公開にも取り組んでいきます。研究データを公開することにより、他の研究者の研究が促進されます。このような研究データの公開の取り組みは「オープンサイエンス」のひとつとなります。これからHUSCAPでは、論文だけではなく、研究データも公開できるしくみを整えていきたいと考えています。

 

(HUSCAPの公式マスコット、はすかっぷちゃんとともに)

 

 

取材を終えて

 

今回の取材で、HUSCAPが世界リポジトリランキングの上位に位置づけられる理由として、北大の研究力による学術論文や教育資料のアウトプットの数だけではなく、オープンアクセスとオープンサイエンスの二つの理念に沿った、北大附属図書館全体の、きめ細やかな公開のための取り組みがあることがわかりました。快く取材に応じていただいた、結城さん、高石さん、ありがとうございました。


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