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墨が描く世界〜比田井天来の展示を訪ねて

2019年01月31日

 

 

(展示の入り口)

 

真っ白な雪で包まれた札幌キャンパスを歩き、服に軽く積もった雪を落として博物館の扉を開けると、そこには書の世界がありました。

 

現在、総合博物館では「没後80年記念展 比田井天来 北海道大学総合博物館-書・拓本-所蔵コレクション」が開催されています。 「近代書道の開拓者」「現代書道の父」とも呼ばれる比田井天来(ひだい・てんらい)は、1872年に生まれ、1939年に68歳で亡くなるまで、数多くの作品を残しました。今年(2019年)は没後80年にあたり、初公開のものも含め、北海道と所縁の深い貴重なコレクションが展示されています。

 

(展示会場の様子。多数の書と拓本が一種の迫力を放っています)

 

会場に入ると、数々の作品が一望できます。その中でもひときわ目立つのは、中央奥に展示されている屏風です。この屏風は北海道大学総長室が所蔵している天来による「六曲屏風」です。なんと、一般公開されるのは初めてのことだそうです。

 

(「六曲屏風」。解説と一緒に展示されています)

 

天来は北海道で数多くの書家を育てました。その一人が北大出身の書家・金津墨岱(かなつ・ぼくたい)です。彼が所蔵していた貴重な拓本類も展示されています(現在は北大総合博物館蔵)。拓本とは、石碑などに刻まれた文字に墨を塗り、紙を押しあてて写し取ったものです。

 

(「奏山金剛経」拓本)

 

(「顔勤礼碑」拓本。776~779年)

 

(「高貞碑」拓本。523年)

 

(「始平公造像記」拓本。498年)

 

その他にも、褚遂良(チョ・スイリョウ)書で孟静素という女道士の「孟法師碑」、鄭道昭の作品の中で最も古い「鄭羲下碑」の半紙臨書(肉筆)の傑作も展示されています。書に関する基礎知識がなくても大丈夫です。キャプションで説明されているので、楽しく鑑賞できます。

 

(「孟法師碑」642年)

 

(比田井天来書の「朝露啓暉」)

 

書の世界は深く、作品の鑑賞方法も様々です。私は「楽」の文字から離れられなくなり、しばらく見つめていました。知っている文字でありながら、それを書いた人の魂、環境、気持ちが感じられるような気がします。また、意味が分かっている文字であっても、書や拓本に近づいてその部分をじっと見ると抽象的な絵画を鑑賞しているようにも感じてきます。また、拓本に写し取られた、文字の周りの石の表情が、積み重なった時を語っているようにも見えました。


「奏山金剛経」の文字「楽」。近くでみるとまるで別の絵画をみるようです
 

(「爨宝子碑」拓本(405年)の中の「楽」。飛び立とうとしている鳥を思わせます)

 

鑑賞を終え、墨が描く力強い書の世界から白い雪が眩しい世界に戻ると、なんだか雪の表面にあるつぶつぶも、木の枝も、書の一部に見えてくるような気がしました。

 

1年でもっとも寒くなるこの時期に、とても合う展示です。現代書道の父とも呼ばれる比田井天来の未公開作品にもたくさん出会えるチャンスでもあります。展示は2月17日まで、無料で開催されています。お時間ある方はぜひ足を運んでみてください。

 

 

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没後80年記念展 比田井天来 北海道大学総合博物館-書・拓本-所蔵コレクション

日時: 2019年1月16日(水) 10:00~2月17日(日)17:00

場所: 北海道大学総合博物館 1階企画展示室

入場料: 無料

詳細は【こちら】


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