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#24 南極半島で今、何が起こっている? ~地球温暖化の現状を南極半島に見る~

2014年09月26日

氷河は、南極・北極など、北海道よりもさらに寒い地域に存在しています。そのダイナミックな姿は、映像などで見るだけでも人々を魅了して止みません。

実は地球温暖化のため、この氷河が、現在世界各地で急速に後退していることが観測されています。その中でも、とりわけ南極半島では急激に温暖化が進んでおり、その結果、氷河末端の氷が海へ落ちるスピードが加速してきています。私はこの、地球温暖化の現状を知るための鍵とも言える南極半島の氷河の動きを研究するため、現在念入りに準備を進めているところなのです。
【鉤谷豪志 環境科学院修士1年】

 
 
南極半島ってどんなところ?
 
「南極」と聞くと、みなさんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?おそらく、映画「南極物語」のように寒さの厳しい場所を想像されると思います。確かに寒いことには変わりはないのですが、実際には一口に「寒い」といっても気温には幅があり、内陸側だと年平均気温は-54.5℃、比較的沿岸側だと-10.9℃、南極大陸より北の島では1.8℃と非常に大きな違いがあります。では、私が調べようとしている南極半島はどのようなところでしょうか?
 
南極半島は、南極大陸の中でも「北側」にあります。南極大陸は南半球にあるので、北半球とは異なり南に行くほど寒くなり、北に行くほど暖かくなることにご注意下さい。つまり南極大陸の「北側」に存在する南極半島は、南極の他の地域と比べると比較的温暖なのです(年平均-4.8℃)。また、植物プランクトンを多く含む南氷洋が隣り合っているので、大陸側と比べると生物がたくさん棲息しています。
 
実はこの南極半島、1951年~2006年の間に平均気温が約+3℃上昇しており、地球全体(約+0.7℃)よりも温暖化が速いペースで進んでいる場所なのです。このことは、実は氷河を調べることによって知ることができます。氷河全体の大きさ(質量)は地球の気候変動に敏感なので、氷河がどのくらい後退しているかによって温暖化がどのくらい進んでいるのかを把握することができる、というわけです。

(南極大陸 (Google Earth)) 

 

 

(南極半島の位置(Google Earth))
 
 
氷河のでき方 ~他の場所とは違う南極の氷河~
 
氷河とは、雪や塵が積もって長い年月を経て固められた氷の塊です。氷河は南極だけでなく高山地帯や北極域など、地球上の様々な場所に分布していますが、実は場所によって作られ方が異なるのです。多くの氷河(北極域、南極大陸沿岸部など)は雪などの降水によって作られていますが、南極大陸の内陸部では少し違います。
 
実は、南極大陸全体の降雪量は年間で166mm、内陸に行くと50mmと、意外と少ないのです(ちなみに札幌の年間降水量は約1100mm)。これではほとんど砂漠の年間降水量と変わりません。一方、南極などの極めて寒い地域では、-30℃ぐらいになると「ダイヤモンドダスト」が見られます。ダイヤモンドダストとは、大気中の水蒸気が昇華(=気体が液体を経ずにいきなり固体になること)してできた、ごく小さな氷の結晶のことです。厳冬期の北海道でも観察することができます。南極大陸の内陸部では、これらの結晶が何千年も何万年も降り積もって3000m級の高さの巨大な氷河が形成されるのです。

(氷河に関する図 氷山は氷河からできています)
 
 
どうやって氷河を調べるの?
 
氷河を研究するには、日本にいながら調べる方法と現地に行って調査する方法の2つがあります。日本にいたままでも、衛星データを用いて現地の氷河がどうなっているかを観測することができます。また現地から持ち帰ったデータを分析することもできます。一方現地へおもむいての調査では、氷河内部や氷河の動きについて調べるために熱水を用いた掘削観測を行います。また、現地の気温や降水量を調べるなどの気象観測を行ったり、氷河の位置を確認するためにGPSを使った観測を行ったりします。

(熱水掘削の様子 氷河の穴は青い!)
 
 
そもそも、氷河を研究しようと思ったきっかけは?
 
私はもともとウィンタースポーツが好きで、大阪に住んでいた小学生から高校生にかけての間、わざわざ北海道や信越まで毎年スキーに行っていました。そこで見た雪景色に憧れ北大の門を叩きました。直接、氷河を研究しようと思ったきっかけは、大学3年の時に訪れたアラスカです。デナリ国立公園を車で縦断した時に壮大な山岳氷河が見えて、直感で「こりゃすげー!氷河の上に立ちて~!」と思いました。帰国後、急いで氷河調査のできる研究室を探しました。そして、気が付いたら今の研究室にいたというわけです。

(アラスカ山脈を背後に)
 
 
現地調査に備えて目下訓練中!
 
実際に氷河に行って調査をする際には、普段都市で暮らしている私たちには想像もつかないような様々な危険が伴います。
例えば、高山病、低体温症、クレバスからの落下。そして、なによりも氷河のある場所には殆ど人が住んでいません。人が住んでいないということは、何があっても助けを呼べないということです。たとえ通信で救助を呼んだとしても間に合わないほど僻地にあるので、自らの力で危機に対処するしかありません。
私たちの研究室では、危険に対処するための特別な訓練を行っています。例えば、4月末に行った手稲での実習では、南極観測経験のある先生方に地形図の読み方やロープを使った人命救助法をレクチャーしてもらいました。

(地形図を頼りに目的地へ向かいます)
 

(ロープ一本のみで木に登っています!)
 
しかし、この実習だけではまだまだ足りません!生きるためにはさらに訓練が必要です!
 
 
南極半島への道 ~氷河の研究、そして精神と体力の鍛錬~
 
氷河に関する研究をしている現在の研究室に入ったのは、今年の4月です。実は、研究室に配属されるまでは、自分がどんなテーマで、どの地域をフィールドにして研究をすることになるのかわかりませんでした(グリーンランド、パタゴニアのどちらかだと思っていました)。4月初めの初顔合わせで初めて南極半島に関する研究テーマがあると知り、思わず飛びついて「南極やります!」と答えました。現在はまだ言質調査の準備段階ですが、自分で希望したことなので、気を引き締めて準備を進めたいと思っています。また、氷河の研究は過酷なフィールドに行くことになるので、単に頭を使うだけでなく、過酷な環境下で耐えられる体力が必要です。氷河の研究に取り組むことを通じて、精神面・体力面の両方を鍛えていきたいと思います!

(「雪氷萌え」Tシャツ。調査の時に着て行こうかな?)
 
 
※ ※ ※ ※ ※ 
この記事は、鉤谷豪志さん(環境科学院修士1年)が、大学院共通授業科目「大学院生のためのセルフプロモーションⅠ」の履修を通して制作した作品です。
 

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