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#4 子どもから信頼できる証言を得るために 仲真紀子さんの研究

2013年07月29日

 

取り調べの進化形とも言うべき「司法面接」について研究する仲真紀子さん(文学研究科 教授)に話をうかがいました。

 

 

 

どんな研究をしているのですか

 

子どもから、より信用度の高い証言を得るにはどうすればよいか、認知・発達心理学の観点から研究しています。また、そうした証言を得るための「司法面接」という方法について、研究開発を行なっています。

 

なぜ子どもに着目するのかというと、証言の信用性は子どもの発達と関係しているからです。子どもは脳が発達途上にあり、外部からの新たな情報によって記憶が書き換えられてしまう傾向性があります。また、語彙が少なく、表現力も乏しいという問題もあります。そのため、裁判で子どもの証言を用いる場合、その信用性が問題になりやすいのです。

 

以前、3歳の子どもが証人となったことがあります。このように,幼児であっても証言能力があるとされることはありますが、その証言は、信用性が無いという理由で却下されてしまいました。証言をしても、信用できないというのでは意味がありません。より信用性の高い証言を得ることが、求められています。

 

(司法面接を模擬的に行なうための部屋もあります)

 

 

取り調べと何が違うのですか

 

現在、証言を得るために一般に行われている方法は、最適とはいえません。例えば、「やったか、やっていないか」、「YesかNoか」など、選択肢で答えるような質問の仕方をすることが多いという問題があります。こうした聞き方では、答えの幅が限られてしまい、ありのままの体験を話しにくくなってしまいます。質問に含まれる情報によって記憶が変わってしまう恐れもあります。

 

こうした問題は、脳が発達途上にある子どもを相手にする場合には、特に、無視できなくなります。上記のような方法で得られた証言は、信用性が低いとされても仕方がないでしょう。

 

このような方法に代わる司法面接では、より信用度の高い証言を得ることを目指します。信用性の高い証言とは、「体験した出来事をよりよく反映し、外部の情報と合致する度合いの高い証言」です。そうした証言を得るには、被面接者の体験記憶に干渉することなく、できるだけありのままを話してもらうことが重要です。

 

(面接の様子は別室でモニタリングされます)

 

 

司法面接では、面接室などの環境や、面接官の質問の仕方(面接法)などに配慮し、ありのままに話してもらう体制を整えます。たとえば面接室は、あたたかい雰囲気を保ちつつも簡素にし、おもちゃなど注意をそらすものを置かないのが一般的です。面接者も、あたたかいけれども中立的、客観的な態度で、たんたんと話を聞いていきます。

 

こういった方法は、子どもにできるだけ多くの情報をできるだけ正確に報告してもらうこと、繰り返し報告を求めることで精神的二次被害を与える、ということのないようにすること、を第一に考えて作られています。過去の事例で、適切な供述を得られなかった原因を調査し、そうした原因をできるだけ排除しようとすると、そのような面接法ができあがってくるのです。

 

(イギリスで作られた最初の司法面接ガイドライン)

 

 

司法面接は今後どうなっていくのでしょうか

 

司法面接の重要性は、ますます増していくのでは、と思います。児童虐待や子どもへの犯罪、供述弱者(知的障がいをもつ人など)への事情聴取などへの関心が高まり、正確な情報収集への需要が高まってきているからです。

 

DNA鑑定などの科学捜査技術が未熟だったころは、自白や証言が事件を決定づける特に重要な証拠だと考えられていました。しかし最近では、科学捜査技術の発達に加え、カードの利用履歴やCCTV(別室でのビデオを通しての尋問)などを調べることで、大量の客観的情報の収集ができるようになりました。その結果、自白や証言は、それらの物的証拠を時系列でつなぎ合わせるものとして用いられるようになってきています。

 

ですから最近は、「やったか、やってないか」のような短絡的な証言でなく、「いつ、どこで、なにをしたか」といった、詳しい説明的な証言が必要とされています。そしてこのような証言を得るには、従来型の取り調べよりも司法面接のほうが適しているのです。

 

司法面接はもともと子どもに対して行なわれていましたが、最近では子どもだけでなく大人に対しても使われ始めています。ありのままを話してもらうという姿勢は、大人にも有効だからです。

 

研究の成果を積極的に社会に還元するため、司法面接の研修も行なっています。研修に来てくださるのは、これまでは主に児童相談所の職員の方でした。でも最近では、検事さんや警察の方も司法面接に興味を持ってくださり、研修に参加してくださいます。また、これらの専門家の面接の様子を見て、助言をさせていただくこともあります。そして、そこから様々なフィードバックをいただいて、研究に活かしています。

 

(模擬面接室で仲さんに取材する吉田一史さん(左))

 

この記事は、全学教育科目「北海道大学の今を知る」を受講した、吉田一史さん(法学部1年生)の作品です。


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