2014年11月11日

授業レポート

「感染症の問題から『科学と社会を結ぶ』思考枠組みを学ぶ」 10/25 岩田健太郎先生の講義レポート

今回の講義には、神戸大学大学院医学研究科の感染症リスクコミュニケーション分野で教授をされている岩田健太郎さんが来てくださいました。現在話題となっているエボラ出血熱などを例に、科学的な問題を扱うときに陥りやすい思考法について説明されています。ユーモア溢れるしゃべりで笑いを起こしながら、切れ味鋭く問題の患部を指摘していく岩田先生独自の講義が繰り広げられました。

 

 

エボラ出血熱の本当の問題

現在アフリカの一部の地域を中心に猛威を振るっているエボラ出血熱ですが、そもそもなにが怖いのでしょうか? 岩田先生の突然の質問に対して、受講生が頭をひねりながら答えました。そんな中で出てきた回答のひとつが「感染力」でした。国をまたいで広がるほどの強い感染力を持つと思われているエボラウィルスですが、そもそも「感染力」とはどう定義したら良いものなのでしょうか?この質問には受講生も言葉が少なくなります。

 

岩田先生は言います。ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインが「言語ゲーム」という言葉で表しているように、言葉の定義が曖昧でもあまり問題ではない場合は確かに存在します。例えば「美女」という言葉は、個人の感じ方の違いもあり厳密に定義することは難しいものですが、それでも人はコミュニケーションを成り立たせることができます。同じように、私たちは感染力という言葉を、定義を曖昧にしたまま使っているのです。

しかし、科学の世界においては、定義づけをおろそかにしてはなりません。つまり、何の話をしているのかを常に明確にしておくべきだといいます。エボラ出血熱が怖がられている本当の理由は、高い致死率であり感染力ではありません。感染力ならば毎年数百万〜数千万人がかかるインフルエンザのほうが遥かに高いのです。本来は感染力と高い致死率の危険性は分けて議論されるべきであるのに、一緒くたに議論されることがしばしばみられます。その結果、高い致死率というインパクトの強さが感染力という別の要素にまで加味されてしまい、リスクの正しい評価を妨げてしまっているのです。

 

 

「わからない」と言える人ほど賢い

また岩田先生は考え方の一つの姿勢として、質問することの大切さを説いていました。これからの時代は社会の情報化が加速していくと考えられ、各分野の専門知識や情報量が膨大なものとなるため、一個人がすべての知識を学びとることは不可能となるといいます。専門性も増々細分化されます。そんな中で最も大切になってくることが、自分が知らないことをしっかりと質問できる力なのです。

 

質問をするには、自身のわからないことをしっかり自覚する必要があります。ここで、わからない自分を恥じてはいけません。知識の総量は少ないかもしれませんが、知性として劣っているわけではないのです。むしろ、自身の知識の外側の世界に目が行っているため、賢いといえるでしょう。逆にどんなに豊富な知識を持っている人でも、自分の知識の中で勝負しようとしている人は井の中の蛙です。

例えば、例えば1950年当時の医学知識が倍に増えるのには50年かかりました。しかし、2020年の医学知識はわずか73日で倍に増えると予測されています。これではどんなに頭がいい人がどれだけ勉強したところで、知識の増加に追いつくことができません。知らない知識が、知っている知識よりもはるかに多い状況となります。

 

 

イマジネーション = 人間がもつ大切な力

ノーベル賞を受賞するような科学者のもつ素晴らしい能力の一つは、豊かなイマジネーションです。彼らの素晴らしさは豊富な知識を持っていることではなく、自身の知識の外側を絶えず想像しながら生きていることです。どんな分野においても、ブレークスルーを起こしていくためには、知識の境界の外側をイメージする力が最も大切になるといいます。

 

豊かなイマジネーションを養うために私たちができることは、出会う様々なことに対して質問していくことではないでしょうか。質問を考えるプロセスを何度も経験していくことで、自分の知識の外側にも自然と目が向けられるようになるのだと思います。

 

 

本日の講義では、情報溢れる社会で生きていくのに大切な、考え方の心構えを学ぶことができたと思います。

岩田先生、ありがとうございました。

 

 

上海一輝(2014年度CoSTEP本科/工学院修士2年)