2015年02月07日

授業レポート

「デザインをベースにした市民参加型のまちづくりを考える」 1/24 南雲勝志先生の講義レポート

モジュール8では、社会の中で科学技術コミュニケーションの領域を意欲的に開拓されている方々をお招きし、これまで歩んでこられたキャリア、活動の背景や現状、課題、未来についてお話を伺います。
 

今回の講師は、NAGUMO DESIGN 代表の南雲勝志先生です。南雲先生は、これまで景観デザイン、環境に調和するプロダクトデザインなどを多数手がけ、グッドデザイン賞を始めとする数多くの賞を受賞しています。

 

 

 

日本全国スギダラケ倶楽部


冒頭、南雲先生は「記憶をつくり、未来に繋ぐデザイン」とおっしゃいました。「繋ぐ」がこの講義のキーワードです。

南雲先生は、新潟県南魚沼市の出身です。ご両親は田畑を耕し、お酒をつくり、山で杉を育てていました。自身も杉林の下草を刈っていたそうです。ところが、高度経済成長を経て、20世紀末には日本の杉の山の価値は二束三文になってしまいました。「デザインも大事だけど、社会がそんなことになっているのはおかしいんじゃないか」と南雲先生は語りました。そして「社会の歪みを元に戻すエッセンスをデザインに詰め込めば面白くなる」とも。そこで立ち上げたのが「日本全国スギダラケ倶楽部」です。国産の杉を使って日本全国を元気にしようとする取り組みです。

お話を聞きながら、南雲先生の杉を素材にした公共空間のプロダクトデザインは、自身の原体験に根ざしながら、未来の社会のあり方を示し導く—記憶をつくり、未来に繋ぐ—ものなのだと気づきました。

 

 

様々なプロジェクト:デザインで繋がる


次に南雲先生は自身の関わった公共デザインの6つのプロジェクトを紹介してくれました。

1つめのプロジェクトは、東京駅と皇居を繋げる行幸通りのデザインです。日本の最先端の技術を用いて、人々の記憶に残る風景をデザインし、デザインと技術を未来へと繋げる活動です。

2つめは、新潟県佐渡のプロジェクトです。明治から昭和の鉱山(近代化遺産)の記憶を、人々に継承するデザインがテーマでした。その活動から南雲先生が気づいたことは、集落の人々と一緒につくりあげることの重要性でした。かかしをイメージしたサインデザインは、冬になると杉板のパネルを住民自らが取り出し、春に再び設置するのです。

3つめは、宮崎県日向市の杉を使ったまちづくりのプロジェクトです。塩見橋の欄干の素材には、日向市の杉が使われています。住民は年に一回、欄干を磨いてワックスを塗るのです。この継続的なかかわりが、住民に地域の記憶を刻み込み、まちを未来に繋げる動機づけになるのです。

4つめは、姫路駅周辺のプロジェクトです。駅と姫路城を繋ぐデザインであり、また姫路城の記憶を未来に繋げるデザインでもあります。そこで使われた杉は姫路から1時間ほどの安富町の山で育ったものです。平均年齢75歳を超えた安富町の森林管理をこれからどうすればよいのか。そこで考えられたのが素材の生産地と消費地を繋ぐプロジェクト「姫路杉活」でした。

5つめは、秋田杉を使った秋田駅西口のバスターミナルです。そのデザインは、厳しく寒い冬の雪のなかで杉のやわらかさと光のあたたかさを感じさせる、雪国の伝統的な雁木のスタイルをエッセンスとして残しながら現在の最先端技術を用いたものでした。

最後は、南雲先生の故郷南魚沼市の図書館プロジェクトです。図書館の黒い外装は杉で作られています。10年経つと色が落ちて味わい深くなるそうです。10年以上先のことを考えたデザインだからこそ、記憶を未来に繋げることができるのです。

 

 

ヤタイ:人と人を繋ぐコミュニケーション装置


南雲先生は「デザインは完成して終りではない、完成したものをどう使うかが大事だ」と教えてくれました。ここではヤタイを使った取り組みが紹介されました。レポートでは二つ取り上げます。

日向市では、小学生が、「移動式夢空間」と名づけられた杉を使ったヤタイを、実際に組み立てました。ヤタイは現在もイベントで使われています。小学生が実際にまちづくりに参加したのです。小学生は今では18歳になり「私が与えられた夢を今の小学生に与えたい」と市役所に就職しました。ヤタイを媒介にして世代が繋がるのです。

震災で被災した大槌町のヤタイプロジェクトでは、地元の人が資材を出し、ゼロからヤタイを作りあげました。そのヤタイは、被災した人、外部の人、悩んでいる人が語り合える場になったのです。

ヤタイを作り、使うことで、人と人が繋がっていくのです。

 

ポロクル


ポロクルは札幌のサイクルシェアの取り組みです。南雲先生は、自転車のデザインだけでなく、ポロクルソングの作詞も担当しています。住民は、ポロクルに関わることで、暮しをゆたかに心地よくするために、自発的に交通ルールや挨拶を見直しました。つまり、ポロクルを通じて住民自身が、地域のルールをデザインしたのです。

 

ポロクルプロジェクトの立て役者 安江哲さん(株式会社ドーコンモビリティデザイン社長)が飛び入りゲストで参加され、お話してくださいました

 

 

講義を通じて、デザインの力を実感しました。南雲先生ありがとうございました。

 

種村剛(2014年度CoSTEP選科A)