2015年06月17日

授業レポート

「社会の中での科学技術コミュニケータ―の役割~科学技術ジャーナリストを例に」6/13隈本邦彦先生の講義レポート

 

レポート:小坂有史(2015年度選科 研究補助員)

 

隈本邦彦先生(江戸川大学・教授)は元NHKの記者ですが、現在は大学に籍をおきつつ、医療や災害分野を中心に活躍されています。隈本先生は科学と社会の関係について、佐渡の金山を例にお話を始めました。

 

 

科学と社会の関係

 

かつて「金山からどうやって金を取り出すか」といった科学技術の知識や問題は、庶民は知らなくてよいとされていました。しかし、今は科学技術の成果が国の存亡や市民の生活に大きく関わる時代です。科学だけでは答えることができない「トランスサイエンス問題」の存在が注目され、科学技術の問題に市民が参加する時代が訪れました。このように科学と社会との関係は、世の中の変化とともに「一部の人だけのもの」から「全市民に関わる事」へと変化したのです。

 

科学者と社会のギャップ

 

さらに隈本先生は写真を見せて、こう問いかけました。「この写真のように便座に飲み口の付いた水飲み場で水を飲みますか? ガラスの天板越しに使い古された靴が敷き詰められているテーブルで食事をしたいですか?」それに対して、「不安」「なんだか嫌だ」と私たちは思います。しかし、データや研究結果に基づき判断する研究者は、その感情が分からなくなる事があります。

 

また研究者たちは、市民の感覚とは裏腹に、自分の研究成果は人々から評価されるものだと思いこんでしまうこともあります。このような、社会(市民)と科学者の間のギャップを埋めるのが科学技術コミュニケーションであり、その担い手の一つが科学技術ジャーナリストです。

                                                  

科学技術ジャーナリストの役割                                                      

 

私達は物事を判断するとき、時間をかけてより詳細な情報を集めて判断する「中心的ルート処理」と、詳細な情報まで求めずに他人の意見などを参考に判断する「周辺的ルート処理」という二つの手段を取っています。前者は膨大な時間と労力が必要なことから、ほとんどの判断は後者によって行われています。

 

メディアは市民が後者の方法で判断をしようとする時に重要な役割を果たしており、従って市民が科学的事象の判断を行う上ではメディアの一部である科学技術ジャーナリズムが果たす役割は大きいと言えます。

 

 

科学技術ジャーナリスト(コミュニケータ―)ができる事

 

現代の私たちが直面しているトランスサイエンス問題に対して、科学者たちは「科学の限界を明確にする事」を第一の使命として求められています。一方で科学技術ジャーナリストは、科学者たちにその「第一の使命」を果たすよう促すことを求められています。さらに、「科学者が伝えたい事」ではなく「一般市民が知りたい事」を伝える事、そして情報の受け手側のニーズに合わせ、偏った(誤った)見方を促さない伝え方をする事も求められています。これらは専門家と社会が同じ問題について一緒に考えることを実現するために必要な事であると言えます。

 

CoSTEPで科学技術コミュニケーションを学ぶ私たちは、この事を常に意識しなければならないと、改めて気付かされた90分でした。隈本先生、ありがとうございました。