2020年10月23日

授業レポート

「サイエンスライティングの基礎」(7/11)内村直之先生講義レポート

細谷享平(2020年度 本科/学生)
 
モジュール2第3回目の講義は、CoSTEP客員教授の内村先生により、「サイエンスライティングの基礎」という題で行われました。現役の科学ジャーナリストとしても活躍されている内村先生の、ライティングに対するスローガンは「書くことは考えること 考えることは書くこと」。私たちは書くことで思考を記録として残し、書きながら思考を結び付けていくのです。そして書けるようになるには、とにかく書いてみることだといいます。本講義では、中でも科学技術について誰にでもわかる説明的文章を書く際に気を付けるポイントを、豊富な文章例と共にご解説頂きました。
 
 
1. 説明するとは、わかるとは、何か
 
文章の書き方のお話に入る前に、そもそも「説明する」「わかる」とは何を意味するのでしょうか?例えば「細胞」という言葉を調べてみると、広辞苑、百科事典、生物学辞典で、説明の仕方はかなり異なります。このことからわかるように、説明の仕方はその相手や目的によって大きく変わってきます。
 
この説明の複雑さの裏には、理解の多様性があるといいます。私たちはなんとなく「わかる」と使っていますが、そこには、「BによってAが起こる」という因果関係を知る、「Aという出来事がいつどこで起き、どんな影響を及ぼしたか」という時間的空間的広がりの中での位置を知る、「Aというシステムのインプットからアウトプットまでがどうなっているか」という構造を知る、などなど複数種類の「わかる」が存在します。
 
そして当然、説明の仕方、わかった気にさせる方法も、様々にあります。実例をあげたり、二つのものを対比させたり、比喩やアナロジーを使ったりなどいろいろな手法を使って、私たちは説明し、相手が「わかる」文章を書いています。
 
2. 文の「ピントを合わせる」
 
ここからより実践的な話へと移っていきます。まずは文章の構成以前に、文の「ピントを合わせる」ことが必要になります。すなわち、一文一文を、言うべきこと・言いたいことを正確に伝えられている文にする必要があるのです。
 
どうしたら、文のピントを合わせられるようになるのでしょうか?それは、練習と経験あるのみ、と内村先生は言います。例えば文章を読んだときに、よくわからない文や違和感を覚える文について、筆者がその文で言いたいことは何かを考えながら直していく。そのような練習を積み上げることで、ピントを合わせるセンスが磨かれていきます。
 
講義ではここで、ピントの合っていない文例をいくつか取り上げ、内村先生自身が「ピントの合った」文に改善しながら、そのコツをご教授頂きました。主述の対応、助詞の用法、時間の流れや因果関係などなど、たくさんのポイントを、実例をもとに解説していただきました。
 
3. パラグラフ・ライティング
 
ここまで文単位で見てきましたが、そこからより大きな単位であるパラグラフ(段落)へと視点を移します。
 
パラグラフは、キーセンテンスとそれを支える文からなります。キーセンテンスとは、そのパラグラフで最も言いたいことを含んだ一文のことで、基本的に1つのパラグラフで言いたいことは1つのみです。そしてその他の部分は、キーセンテンスの内容を発展させたり、根拠を述べたり、具体的な事例を紹介したりと、様々な仕方でキーセンテンスを支えます。
 
それぞれが持つ役割を考えながらパラグラフを組み立て、パラグラフ間の関係性を考えながらそれらを組み合わせていくことで、文章は出来上がります。ではこれらは実際に、どのように行われていくのでしょうか?
 
ここで、内村先生が過去に書かれた記事に対し内村先生自らパラグラフの構造を解剖しながら、一つの事例としてパラグラフの組み立て方をご紹介いただきました。取り上げられた記事は、iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中教授に関連して、科学界の伯楽について考察された文章です。実体験を入れて臨場感を出す、具体的な実例や数値でキーセンテンスに説得力を持たせるなど、どのような考えのもとに書きあげたのかを細部まで解説していただきました。
 
 
4. おわりに
 
本講義では、豊富な実例をもとに、相手が分かる文章を書くための手法や技術をご教授頂きました。さらに合間の質疑応答では、受講生が抱える書くことに関する困りごとにもお答えいただき、講義はもちろん質疑応答からも、ライティング力を向上させるヒントをたくさん得られた90分間でした。また本科生にとっては、ライティング演習での学びを整理し、深める機会にもなったのではないでしょうか。
 
ライティング力を高めるには、練習あるのみです。私も本講義での学びを自分の力にするべく、まずは本講義で課された自習課題から始めていきたいと思います。
 
内村先生、ありがとうございました。