2021年02月09日

活動報告

第116回サイエンス・カフェ札幌|オンライン「雷研究のひらめき ~原子核の謎から惑星の秘密まで~」を開催しました

2021年1月24日(日)、佐藤光輝さん(北海道大学 大学院理学研究院 教授)をゲストにお招きした、第116回サイエンス・カフェ札幌|オンライン「雷研究のひらめき ~原子核の謎から惑星の秘密まで~」を開催しました。今回のサイエンス・カフェ札幌は、北海道大学 総合博物館にある中谷宇吉郎復元研究室からオンライン配信しました。

 


視聴された方は、アンケートにもぜひご協力お願いいたします!

 

今回のテーマは雷でした。雷が起こる仕組みから雷研究の新展開まで、ゲストの佐藤光輝さんと共に紹介しました。国際宇宙ステーションから見る雷、雷が起こす原子核反応、木星や金星で発生している雷など、雷のイメージが変わるような話題を取り上げました。

 

 

例えば、雷雲と地上との間に起こる放電現象「落雷」にも意外な性質があります。実は、私たちが見ている光は地上から雷雲へと昇っていく「帰還電撃(リターンストローク)」というものだそうです。

 


今回のサイエンス・カフェの主役とも言えるのは、雷雲のさらに上空で起こっている「スプライト」と呼ばれる雷です。30年ほど前に偶然撮影されたスプライトは、研究者たちの興味を強く引き付けました。

 

佐藤さんもスプライトに魅せられた研究者の一人です。佐藤さんたちは、ジェット航空機からの観測だけでなく、国際宇宙ステーションからも観測を行い、スプライトの研究に取り組んでいます。現在では、雷雲の上空ではスプライトの他にもエルブスや巨大ジェットなど多様な発光現象が起こっていることが明らかになっています。

 

 

地上付近で起こる雷についても新たな姿が解明されています。サイエンス・カフェの中では、雷が原子核反応を起こしていることを確かめた研究について紹介してもらいました。「雷は天然の加速だった」のです。

 

 

他の惑星での雷についても研究が進められています。今回のサイエンス・カフェでは、木星と金星について取り上げました。特に、金星で雷が起こっているかどうかは謎に包まれおり、その解明が待たれています。佐藤さんも参加している金星探査機「あかつき」のミッションでは、その謎を解明すべく、観測が続けられています。近々、大きな研究成果が発表されるかもしれない、というお話も聞けました。

 

 

雷は身近な自然現象ですが、その新しい姿や他の惑星での雷についてもどんどん新しいことが分かってきています。雷研究が見せてくれる“景色”の一旦を今回のサイエンス・カフェでお届けできました。

興味を持って下さった方は、ぜひ動画をご覧ください!

 


 

以下には、ライブ配信で取り上げられなかった質問とそれに対する佐藤さんの回答を載せました。

 

 

どうやったら落雷を撮影できるのでしょうか?

 

雷が光った瞬間の静止画像を撮影する場合は、カメラを長時間露光モードにして絞り値(F値)を大きめに設定して、シャッターを開いたままにし、雷雲の方に向けておきます。あとは、落雷が起こるまで待ちます。それを落雷がうまく撮れるまで繰り返し行います。あるいは、カメラを連写モードにして露出時間を1/1000秒などに設定して雷雲の方に向け、何度も繰り返し連写撮影を行います。ピカっと光る信号を取り込むソフトもあるので、それを活用する手法もあります。


動画を撮影する場合も、静止画像を撮影する場合と同じように、ビデオカメラを雷雲の方に向けておき、連続撮影します。

 


木星の大赤斑の仕組みが知りたいです。

 

大赤斑の場所で、台風のような対流が起こっていると考えられています(ただし、大赤斑の場合は台風とは異なり高気圧性の渦になっています)。ただ、厳密になぜ大赤斑が起きているのかは、実はまだ良く分かっていません。大赤斑のサイズも大きくなったり、小さくなったりするのですが、それがなぜなのかも良く分かっていません。

 


「あかつき」はいつまで観測を続けるのですか ?

 

元々、あかつきは、2010年に打ち上げて、その年の12月に金星観測を開始する予定でした。しかし、軌道投入に失敗して、5年間さまよって、再トライして2015年に観測が始まりました。その時点で5年が経過しているので、観測機も劣化しています。そこから現在までさらに6年経っているので、あとは衛星と観測器が健全な限りなるべく長く続けたい、と思っています。

 

 

「反物質の雲」のようなものも実験で再現できるのでしょうか。

 

実験室で放電を起こしてガンマ線を発生させ、原子核反応を引き起こして陽電子などの反物質を作り出すのは、ちょっと難しいですね。例えば、サイエンス・カフェ中にもお話したバンデグラフで、雷と同じくらいのエネルギーを持った放電は作り出せません。

 

 

地球では地表と雷雲の間で雷が発生しているとのことですが、土星には地表がありません。土星の雷は発生する原理が違うのですか?

 

土星も木星も岩盤の地表がない惑星です。ただ、大気が下層から上層に向かって動くような対流があれば、摩擦電気が生じて雷は起きます。地表があるかないか、は雷が起きるかどうかに対してそれほど重要な要因ではありません。

 

実は、地球の場合も、雷雲と地表の間の放電よりも、雲の中の放電の方が圧倒的に多いです。金星の場合も、地表はありますが、おそらく、雲の中での放電がほとんどだろうと思っています。

 

 

雷のエネルギーはどうやって測定しているのでしょうか?

 

雷のエネルギーには、熱エネルギー、電磁波のエネルギー、光のエネルギーなどいろいろな種類があります。それら全部を総称して、雷のエネルギーと言っています。例えば、光のエネルギーを測る場合は、雷の光の強度から算出しています。熱エネルギーの場合は、「ゴロゴロ~」という音の大きさから算出しています。

 


雷は電気エネルギーとして利用できますか?

 

原理的には、巨大なコンデンサを用意して、そこに雷が落ちれば、電気をためることができます。ただ、雷から電気をためる施設を用意しても、そこに頻繁に雷が落ちないといけません。1年間に1発落ちるかどうかも分からないことのために、施設を作るかどうか、ということを考えるとコストが見合わないと思います。なので、誰もやっていません。

 


太陽系の地球以外の惑星で雷が観測された事例はあるのでしょうか?

 

サイエンス・カフェでもお答えした通り、木星と土星では発生していることが確かめられています。金星はこれからの研究で明らかになると思います。

 

火星では、雲の中に電気がたまって発生するような放電現象はないだろうと思っています。一方で、火星では砂嵐による放電現象が起こっているかもしれないと予想されています。ただ、これについてはまだ証拠はつかめていません。