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研究内容をより多くの人に届けるために。 教職員向け講座「研究者のための文章術とプレスリリースのコツ」が開催 されました。

2017年12月06日

 

電子科学研究所とURAステーションが共催する教職員向け講座「研究者のための文章術とプレスリリースのコツ」が2017年11月6日(月)から9日(木)にかけて開催されました。講師は浅羽雅晴さん(北海道大学 電子科学研究所 客員教授/科学技術振興機構(JST)「産学官連携ジャーナル」アドバイザー/読売新聞東京本社・社友/日本科学技術ジャーナリスト会議 会員)です。

 

プレスリリースを中心に、研究成果をより多くの人に届け、理解してもらうために必要な文章術や研究広報のスキル全般を講義と実践的演習で学ぶものです。4日間の集中講座には、日頃プレスリリース作成や広報文書作りに悩みを抱えている研究者や研究支援の教職員らが真剣に耳を傾けていました。

 

(豊富なパワーポイント資料を基に説明する浅羽さん)

 

初日

 

6日(月)は午前に「課題のレビュー」、午後には「文章作成の基本・心構え/一般向け文章を研究者が作成する意義」の2本立てで講義がありました。「課題のレビュー」ではJSTと他大学による分子センサー開発のプレスリリースをテキストに、それぞれが気づいた点を発表する形式で進めました。言葉の表記や定義、冗長な言い回し、言い過ぎな表現など受講生の鋭い指摘に対し、文章作法を的確にコメントしていました。中でも見出しが重要で、ひと目で内容がわかる魅力的な見出し作りに力を入れて欲しいと強調していました。

 

文章を分かりやすくする一つのコツは、身近な人に読んでもらうことといいます。科学記者時代には書きたての原稿を家族などに読んでもらい、意味の取りづらいところ、読みづらいところを指摘してもらったそうです。誰でも独りよがりの文章を書きがちですが、これがそれを防ぐ第一歩と話します。特に科学原稿は分りにくいケースが多いだけに、ひと工夫ふた工夫が大切ですね。

 

(研究を伝えるにはどうしたらよいか、日ごろの悩みを解決するヒントを掴もうと熱心に耳を傾けていました)

 

午後の「文章作成の基本・心構え」では、よい文章とはなにか、例文を示しながら解説しました。よい文章の心得として次の4つのポイントを挙げています。

 

1.見栄えがよい

2.耳ざわりがよい

3.一度でスッと理解できる

4.“飽きない”毎日の御飯のような言葉使い

 

中でも耳ざわりの良さを重視しているように見受けられました。すなわち音読の重要性を指しています。自分の文章を声を出して読み直してみて、つっかえたり、息継ぎが苦しい時は、きっと読みにくい文章になっていると指摘します。自分が音読することと他人の音読とを比較して違和感の無い文章は「スッと理解できる」のでしょうね。

 

 

 

(大学人はみんなが「広報マン」であってほしいと力説)

 

二日目

 

7日(火)は「広報担当部署の機能/一般向け文章作成のための具体的なノウハウ」です。この講義は“大学力”を強化するための研究広報のあり方について考えました。優れた研究は論文を書いただけでは完結しません。発表後にプレスリリースを出すことで、研究がメディアで大きく紹介され、外部資金の獲得にもつながる可能性が高まります。専門語を羅列したり漫然と書いていたのでは、ほとんど見向きもされません。そこでメディアをはじめたくさんの人に読んでもらうコツは、タイトルや見出し、概要に工夫を凝らすべきだと浅羽さんはいいます。

 

(初日を上回る出席者数となりました)

 

また、研究広報をプロデュースするための姿勢として、「広報PINC論」を提唱しています。PはProducer、演出家となって大学の活動を社会に向けて発信すること、IはInterpriter、翻訳家となって専門用語や難解な表現を一般向けに置き換えること、NはNegotiator、交渉人となって気鋭の研究者を見つけ売り出すこと、CはConcierge、コンシェルジュとなって社会の要請に応じることを意味します。技術的な事柄に加え、「広報PINC論」で研究広報に必要な姿勢を学ぶことで、これまでとは違う視点で情報発信ができるようになるはずです。

 

 

 

(講座の後半は少人数での合評会が行われました)

 

三日目

 

8日(水)からは後半戦です。午前は「プレスリリースの作り方」に続き、北キャンパス図書室の千葉浩之さんによる企画レクチャー「業績評価指標の仕組みと調べ方 -Top10%論文を中心に」の講義がありました。午後は少人数での合評会に入りました。ここでは参加者が事前に作成した文章や、仕事を通じて制作したパンフレット、催事案内などの印刷物を持ち寄り、みんなで批評し合いました。

 

(自作の案内文について説明する宝満健太郎さん)

 

(宝満さんの制作物。病院の待合室に張り出す目的で作られました)

 

参加したのは4名の教職員。その一人、宝満健太郎さん(医学研究院 整形外科学教室 博士研究員)は研究協力者を募るために制作したポスター「あなたの歩きかた、病気のサイン出していませんか?」について、他の受講生から批評してもらいました。(*ロコモとは筋肉や関節などに障害が起こり、運動機能が低下する状態をいいます。)

 

(「患者様」の表現に対し考えを述べる青沼仁志さん)

 

よい文章のポイントの一つである「耳ざわりがよい」かどうかを確認するため、代わる代わる音読しました。受講生の一人、青沼仁志さん(電子科学研究所 附属社会創造数学研究センター 人間数理研究分野 准教授)は文章中に使われている「患者様」の表現に違和感を覚えた一人です。「患者様とすると病気の人だと決めつけてしまうため、『ロコモについて関心のある方』、あるいは『お悩みの方』といった表現にしてはどうでしょう」とコメントしました。これには宝満さんも大いに納得しました。このように受講生同士のフラットなやり取りを通して、言葉を大切にし、建設的な意見を出し合い、制作物をより良く磨きあげることができるのが合評会の特長です。

 

 

 

(最終日は2名の教職員が合評会に参加しました)

 

最終日

 

9日(木)は4日間にわたる本講座のフィナーレ。前日に引き続き、少人数制での合評会が開催されました。出席したのは徳永透子さん(大学院工学院 マテリアル設計分野 組織制御学研究室 助教)と越谷(こしや)由紀さん(理学部 事務補助員)です。

 

(理学部の広報リーフレットの説明をする越谷由紀さん/写真左)

 

越谷さんは高等教育推進機構オープンエデュケーションセンターに設置されている、科学技術コミュニケーター養成プログラム(CoSTEP)の2016年度修了生です。CoSTEP在籍中に学んだ広報スキルを活用して、高校生にも分かりやすい理学部の案内リーフレットを作成しました。この文章をみんなで音読し議論しました。

 

内容は好評ながらも、使われた写真をもう少しバランスよく配置したほうが良くなるとの提案が出ました。写真は非言語コミュニケーションの最たるもので、多くの情報が含まれています。一方で、写真の出来映えやレイアウトの善し悪しで、紙面の出来映えががらりと変わります。越谷さんはさっそく、理学部に興味を持ってもらうためにはどんな写真がよいか、顔の向きはどうか、登場人物を一人にするか二人がよいかについて、浅羽さんや徳永さん、本講座を企画した天野麻穂さん(URAステーション URA/CoSTEP2015年度修了生)から貴重なアドバイスをもらっていました。

 

(本講座を企画した天野麻穂さん)

 

浅羽さんはこう話します。「広報は一日にしてならずです。研究成果を社会に伝えることを常に考え続けることが大事。これがいま大学に求められているのです」と。本講座には持続的に考えるためのヒントが随所に散りばめられていました。技術的なこともさることながら、広報の取り組みや、一緒に考えてくれる仲間作りも大切です。本講座に参加して、学んだことや気付きを、これからどのように成果としてつなげていけるかが楽しみですね。いいね!Hokudaiではウォッチしていきます。


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