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コロナウイルスの感染力と致死率を数理モデルで推定

2020年02月28日

 

2月末の現在、中国で発生した新型コロナウイルスが日本各地でも流行しています。本学の西浦博さん(医学研究院 教授)は、コンピュータでシミュレーションする「数理モデル」でこのウイルスの流行状況の特徴を明らかにする疫学研究に取り組んでいます。1月末から共同研究者とともに7本の論文を発表し、記者会見したりメディアの取材に対応したりして、この病気の拡大を抑える基盤となる情報を提供し続けています。

(2019年夏に取材した際の西浦さん)

 

得られたデータから順次結果を発表

 

これまでの論文の内容を紹介しましょう。2月4日発表の論文では、チャーター便3機で中国から帰国した565名の日本人の中から、新型コロナウイルスに感染し、肺炎などを起こした患者が発生したデータから、新型コロナウイルスの致死率を0.3~0.6%と算出しました1)。

 

時々刻々更新されていくデータを使って、病気の特徴は明らかにされていきます。中国でのデータを調べた2月14日の論文では、致死率は5~8%と推計しました。さらに一人の感染者から何人が感染するかという感染力の強さを表す「基礎再生産数」を1.6~4.2としました。基礎再生産数は、ウイルスの感染拡大をコントロールするにはとても大事なデータで、1以上だと感染が拡大していくことを示しています2)。

 

より精密に致死率を推計した2月21日の論文では、もともと別の疾患をもつ高齢者の場合は致死率が1%からそれ以上になること、しかし、健康に問題のない若年成人の場合の致死率は最大でも0.1~0.2%にとどまると推測しました3)。

 

このように、西浦さんらの研究でも致死率の推計はどんどん変ります。他の研究者による報告でも様々な数値が報告されています。これは、正確な感染者の数と状況を直接把握することは極めて難しく、だからこそ限られたデータから推計する数理モデルが威力を発揮するのですが、一方でその限界もあるからです。

 

 

強い感染力が多くの感染者をうむ

 

しかし、この病気に関する様々なデータの分析結果が出揃ってきました。今、わかってきたのは、新型コロナウイルスは、病気を起こしても致死率はそれほど高くない一方で、その感染力は強く、多くの感染者を出す可能性が高いということです。

 

過去に流行したウイルスと比べるとどうでしょう? 2003年に流行したSARSの基礎再生産数は2~5、2012年に流行したMERSは1以下で、今回の新型コロナウイルスでは1.6~4.2となっています。致死率はSARSで約15%、MERS約20%、新型コロナウイルス0.2%から数%となっています。この数字から、先ほどの特徴がわかります。

 

致死率が低いとはいえ、今回の流行が問題ない、というわけではありません。実際、毎年流行する季節性インフルエンザの基礎再生産数はおよそ2、致死率は約0.02%であり、それよりは明らかに「強い」ウイルスです。そして、致死率は低い一方、感染力が強いために多くの人に感染し、結果として感染者数が多くなり、死亡者数が今後も増えていく可能性があるのです。

 

これからどうなるのか。論文ではこのように書かれています。「死亡のリスクが小さいと思われる場合、一般人口の大多数にとって病気は軽度であると主観的に認知される可能性がある。しかし潜在的な併存疾患を持つ高齢者のリスクはかなり大きいかもしれない」3)。また、上記の致死率や基礎再生産数もどのような感染状況でも同じとは限らないことに注意しなければならないでしょう。高密度で感染者がいる状況では、それらの数値は上がるのです。

 

 

感染症研究とは

 

数理モデルを利用した感染症研究はどのようなもので、今回のような流行に対してどのように役に立つのか、基礎再生産数をどうとらえるべきか。この研究分野がこれから我々に何をもたらすのか、このような新興感染症はこれからも出てくるのか……これらの疑問のヒントになる、今年の夏に西浦さんに取材した記事を再掲します。

 

【フレッシュアイズ】#143 数理モデルを利用して感染症を制御せよ!

(1)〜流行を予測し、社会の政策につなげる〜

2019年09月23日

 

 

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今回紹介した研究成果は、誰でもアクセスできる以下のオープンジャーナルにまとめられています。

 

1) The Rate of Underascertainment of Novel Coronavirus (2019-nCoV) Infection: Estimation Using Japanese Passengers Data on Evacuation Flights

 Hiroshi Nishiura ,Tetsuro Kobayashi ,Yichi Yang ,Katsuma Hayashi ,Takeshi Miyama ,Ryo Kinoshita ,Natalie M. Linton ,Sung-mok Jung ,Baoyin Yuan ,Ayako Suzuki andAndrei R. Akhmetzhanov

J. Clin. Med. 2020, 9(2), 419; 04 Feb 2020

 

2) Real-Time Estimation of the Risk of Death from Novel Coronavirus (COVID-19) Infection: Inference Using Exported Cases

Sung-mok Jung ,Andrei R. Akhmetzhanov ,Katsuma Hayashi ,Natalie M. Linton ,Yichi Yang ,Baoyin Yuan ,Tetsuro Kobayashi ,Ryo Kinoshita andHiroshi Nishiura

J. Clin. Med. 2020, 9(2), 523; 14 Feb 2020

 

3) Communicating the Risk of Death from Novel Coronavirus Disease (COVID-19)

Tetsuro Kobayashi ,Sung-mok Jung ,Natalie M. Linton ,Ryo Kinoshita ,Katsuma Hayashi ,Takeshi Miyama ,Asami Anzai ,Yichi Yang ,Baoyin Yuan ,Andrei R. Akhmetzhanov ,Ayako Suzuki andHiroshi Nishiura

J. Clin. Med. 2020, 9(2), 580; 21 Feb 2020


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