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#132 大学教員のためのオンライン研修~コロナ禍におけるファカルティ・デベロップメント~

2020年11月25日

新型コロナウイルス感染症は未だ収束せず、各地での陽性判定者数はメディアでも連日取り上げられています。長引くコロナ禍、その対策に大学教育の現場も強く影響を受けています。大学教員の場合、オンライン授業の準備や実施において試行錯誤を強いられる状況が続いています。

 

従来から大学では、大学教員の授業改善を手助けするファカルティ・デベロップメント(FD)という取り組みが行われています。FDは「教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称。その意味するところは極めて広範にわたるが、具体的な例としては、教員相互の授業参観の実施、授業方法についての研究会の開催、新任教員のための研修会の開催などを挙げることができる」と説明されます1)。

 

今回は数多くのFDを実施している高等教育研修センター(以下、センター)の山本堅一さんを訪ね、コロナ禍における大学教育のこと、そして、これからの大学教育について伺いました。

 

【小林良彦・CoSTEP特任助教】

 

(山本さんのオフィスで話を伺いました。)

 

 

――まず初めに、ファカルティ・デベロップメント(FD)とは何か、教えて下さい。

 

FDとは…うーん。権利なんですよね。大学教員が自分自身の教育能力を開発するための権利。だから、大学側がその機会をしっかりと提供してあげないといけない。

 

 

――教育能力を伸ばす機会を大学が提供せねばならない。その理由は何なのでしょうか。

 

進学率が上がって、いろいろな学生が大学に進学するようになったので、しっかりとした教育をしないといけない、という機運が高まってきたからですね。

 

 

――山本さんが所属されているセンターはどのようなことをしている組織なのでしょうか。

 

一番は、研修を受ける機会を全教職員に提供することです。あとは、学部・学科ごとに依頼があって、その学部・学科が抱える固有の悩みを解決するためのお手伝いをする、ということもしています。

 

 

――学部・学科が教育で困ったときにセンターを頼るんですね。

 

そういった雰囲気が出来上がっていると思います。北大は。国内で見れば、北大は古くからFDをやっていることも理由だと思います。

 

 


――コロナ禍において、センターが提供する研修にも変化はありましたか。

 

我々の研修は、対面が基本でしたので、しばらくは何もできなかったですね。授業もオンラインに変わって、前期は大変でしたね。研修は急いでやる必要はないので、しばらくはやらなくても良いのかなと思っていました。そう思っていたところ、学生がオンライン授業で大変だから何かできないか、という話になって。そこで初めて、オンラインの研修を行いました。

 

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山本さんたちが7月に開催した研修は以下です。

学生はオンライン授業をどう受け止めているのか
日時:2020年7月9日(木)
詳細は【こちら
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実は元々、研修はオンライン化する予定だったんですよ。オンラインといっても、リアルタイムではなくて、オンデマンドです。オンデマンドコンテンツをたくさん作って、大学教員の皆さんが時間のあるときに、いつでも見られるような体制にしようと思っていました。なので、タイミング的にも、オンライン研修をやるしかないかな、という感じでしたね。

 

 

――コロナ禍以前で、山本さんはオンライン授業やオンライン研修を行った経験はあったんでしょうか。

 

全くないです(笑)。

 

 

――山本さんにとってもオンラインでの授業や研修は初めての経験だったんですね。

 

3月の頃は、北海道はコロナ禍も落ち着いて、5月くらいには対面で授業ができるようになるだろうと思っていたんです。それが4月になって、対面で授業ができなそうだとなってきたときに、学生に接する機会が奪われてしまうと思って、めちゃくちゃ落ち込んだんですよね。ちょっとお酒の量も増えたりして(笑)。

 

 

――あの時期はみんな大変な思いでしたよね。そこからオンライン授業、さらにはオンライン研修を開催するまでにはどのような経緯があったのでしょうか。

 

悩んでいたんですけど、4月の下旬に北大が授業をオンラインで実施する方針を出したときに、じゃあオンラインで授業をやるしかないか、と思いました。それでちょっと教材を作ってみたんですね。機材はどういうものが必要なのか、動画編集はどうやれば良いのか、ネットなどでいろいろと調べながら。

 

やってみたら意外とできたんですよ。自分でもできるぞ、と。そこから授業をオンラインでやっていきました。リアルタイムはZoomを使って、予習教材としてオンデマンドコンテンツを作って、とか。それが、まあ、ある程度できるということが分かったので、これならオンラインの研修もできるなということでオンラインの研修をやり始めたんですよ。

 

(デスクに備え付けられたオンライン授業用の機材を説明する山本さん。)

 

 

――オンライン研修の参加者のリアクションはどうでしたか。

 

まずは研修への参加のハードルが下がったと思います。いろんな人が言っていました。研究室にいながら、パソコンで見られますから。気軽に参加しようと思ってもらえたのは良かったと思います。今までは来なかった人も参加するようになりました。

 

 

――研修に参加する大学教員が増えているんですね。新たな展開ですね。

 

参加者が増えていることは喜ばしいことです。ただ、参加者同士の情報交換がなかなか出来ていないんですよね。それを考えると、オンライン研修の効果はどうなのか、ということは感じていますね。参加者の満足のいく研修を提供できているのか、ということです。

 

今までの対面の研修では、参加者と私の名刺交換よりも参加者同士の名刺交換の方が活発に行われるくらいだったので。そういった大学教員同士の情報交換ができていないのは残念ですね。

 

ただ、情報交換もZoomのブレイクアウトルームを使えば、代替できると思うんですよね。これからは、ブレイクアウトルームも活用した研修を少しずつやっていこうと思っています。

 

(オンライン研修を行う山本さん。)

 

 

――コロナ禍が長引いています。対面ではなく、オンラインで授業や研修を行う期間は続きそうですね。

 

これからの時代を考えたら、対面かオンラインかどちらかに偏るんではなくて、どちらも提供できる体制を整えないといけないと思っているんです。なんとかこの一年を乗り切れば、と考えている人が多いんじゃないかな。いやいやそうじゃないでしょ、と思います。

 

オンラインはオンラインで良いところもある。コロナ禍が収まったら100%対面授業に戻しましょう、というのは時代遅れです。たとえコロナ禍が収まっても、オンラインで授業や研修に参加したい人はオンラインで参加すれば良いんですよ。そういう時代になっているんだということを大学教員の皆さんに感じてもらって、対応できるようになってほしいんですよね。

 

だからそのために、自分にもできるのかしらと思っている大学教員に、意外とできますよ、ということを研修で伝えたいですね。

 

(山本さんが集めているカエルのコポーの置物。集めている理由は「カワイイから」とのこと。)

 

参考文献:
1) 中央教育審議会 2005:『我が国の高等教育の将来像(答申)』


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