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#52 地球温暖化を知るには南極の海から?

2014年11月21日

 

地球温暖化で極地の氷がとけている――しばしば耳にすることではありますが、氷がとけるという現象にどんなイメージを持っていますか? 私たちの見えないところで着々と進行する世界規模の温暖化。その実態を知るには、実は南極の氷とそれらを取り囲む海が重要なのです。

2014年11月、IPCCの第5次評価報告書に関する統合報告書が公表されました。最新の科学技術をもとに気候変動についての知見をまとめたこの報告書、その中で海洋調査に関する部分の主執筆者を務めた青木茂さん(低温科学研究所 准教授)に話を聞きました。

 

【新谷双葉・CoSTEP本科「対話の場の創造実習」】

 

 

IPCCとは何ですか?

 

「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)」の略称です。気候変動に関する情報の評価と公表を目的として設立された国際的な組織です。各政府から推薦された科学者が参加し、5~6年ごとにその間の気候変動に関する最新の研究をもとにして評価報告書をまとめます。IPCCは第一から第三部会に分かれ、それぞれ気候変動の、(1)自然科学的根拠、(2)影響と適応策、(3)緩和策・削減策に関する調査・研究を担当しています。この三つの部会からそれぞれ分厚い報告書が出され、それら3つを踏まえて最後に作られるのが「統合報告書」です。この統合報告書が11月2日に公表されました。

 

 

青木さんはIPCC報告書のどのような部分を担当されたのですか?

 

第5次評価報告書の第一部会において、気候変動について「自然科学的にどういうことがわかってきたのか・それはどういう原因なのか」を明らかにする調査・研究を担当しました。その中でも第3章「観測~海洋~」の執筆に携わりました。

 

(IPCC第5次評価報告書の第一部会担当パート。続いて、第二部会・第三部会のパート、そして統合報告書が発表されました。)

 

 

なぜ海が地球温暖化に関係あるのですか?

 

太陽からふりそそぐエネルギーを地球は受け取ります。人間が二酸化炭素などを出すことによって地球の表層がそのエネルギーを余分に蓄えることになるのが地球温暖化です。ではその余分な熱エネルギーはどこへ行っているのか、というのが大きなポイントです。実は、余分な熱を貯めこんだ量は、大気や陸地よりも海洋のほうが圧倒的に大きいのです。よって、地球温暖化は海洋温暖化だという言い方もできます。そして、世界全体の海を冷やす役割をしてきたのが南極の海なのです。

 

 

 

南極の海がどのように地球全体の海を冷やすのでしょうか?

 

海洋には一般によく知られる表層の海流のほかに、深いところをめぐる深層循環といわれる流れがあります。これらは世界の海を巡るベルトコンベアのような流れです。この起点の一つが南極にあります。南極の海で氷が新たに作られることで、この流れに海水を供給しています。しかし近年の南極では冷たい流れが以前ほどは作られなくなった可能性があること、世界の海洋の深いところが温まっていることがわかってきました。私はこうした点について研究しています。

 

 

(出典:ブロッカー博士記念講演『我らが青い星“地球”の気候システムが危ない』旭硝子財団 H8年度ブループラネット賞)

 

 

海の上はそれほど寒くない! 南極の海の調査とは?

 

南極というと越冬隊のようなモコモコの装備でないと耐えられないような極寒を想像されるかもしれませんが、それは南極大陸の氷の上での話です。周りの海の上はもちろん寒いのですが、観測をするのはほとんど夏なので、実はそれほど寒くありません。ですから、調査中はああいった装備でなく、オホーツク海の漁師さんとほとんど変わらない格好をしています。ただ、冬に調査を行うときには、バッチリ着込む必要があります。調査は、船上から筒のような装置を海底まで下ろして海水を採取したり、海氷などがある場合には氷に穴を開けて計器を沈めたりして行います。

 

(海水の温度や塩分、計測場所の深度を計る装置。調査に使われた計器類のほか、氷に穴をあけるための大きなドリルなども見せていただきました。)

 

 

冷たい海の「ホット」な研究なのですね

 

私の研究分野である海洋の温暖化は今すぐに私たちの生活を脅かすようなものではないのかもしれません。しかし、今後世界にどのような影響があるのかを知る手がかりとなる研究です。気候変動による影響には大きなタイムスケールで向き合ってみてほしいです。

 

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青木さんをゲストに招いた第78回サイエンス・カフェ札幌「つめたい海が氷をとかす~南極の海流と気候変動~」が11月23日(日)16時より紀伊國屋書店札幌本店前で開催されます。地球の海を冷やす流れと南極の氷の関係についてくわしく、わかりやすく、そして熱く語っていただきます。南極海の観測で実際に使用した計器や装備なども展示する予定です。ゲストと一緒に、南極を出発して世界を巡る、海の深く大きな流れに思いを馳せてみませんか。

 

日 時:2014年11月23日(日)16:00〜17:30(開場15:30)

場 所:紀伊國屋書店札幌本店1階インナーガーデン

ゲスト:青木茂さん(低温科学研究所准教授/海洋物理学)

参加費:無料。当日会場にお越しください。

主催: 北海道大学CoSTEP

 

詳しくはこちら

http://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/costep/contents/article/1245/

 

 

 

 

 

 


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