クローズアップ


#62 ものづくりを通じて社会とつながる

2015年11月16日

 

近年「ものづくり」に注目が集まりはじめています。札幌にも多くの「ものづくりカフェ」が誕生しています。今回は、2016年2月に北海道大学札幌キャンパスで「テクノロジーアート展」を企画している青木直史さん(大学院情報科学研究科 助教)に、ものづくりとその魅力についてお話しをうかがいました。

 

(ライトセイバーをもつ青木さん)

 

ものづくりから「人間」の理解へ


ものづくりには「物理」「情報」「人間」の三つの側面があります。「物理」は実際にものを組み立てる際には欠かせない要件です。「情報」はものを組み立てるための設計図を書いたり、実際につくったものを動かすためのプログラミングを行なったりすることを指します。

 

「物理」や「情報」は、法則にもとづく設計の正しさや、作図やプログラミングの正確さが求められます。ものづくりの面白いところは「物理」や「情報」だけではなく、つくったものを使う「人間」の側面があるところです。

 

たとえば、私が制作したこのライトセイバーは、根本から6段階で光らせていくことで、剣が伸びていく様子を再現しています。このとき、スイッチを押した瞬間に音を鳴らし始めても、実際のライトセイバーのようには見えません。実は、光が伸びきった瞬間に音が鳴り終わるように、音を鳴らすタイミングを少し遅らせてプログラムしています。そうすることで初めて、「本物らしい」ライトセイバーを再現することが可能になるのです。

 

人は現実を脚色したり、省略したり、付け足したりします。ものづくりのためには、演出された世界にシンクロする「人間」の認識のしくみを知る必要があります。ものづくりのいきつくところは「人間」についての理解なのかもしれないと考えています。

 

(ライトセイバーを前に説明をする青木さん)

 

ものづくりは「妄想」の再現

 

現代社会では、誰もが比較的容易に、高性能・高品質の製品を手に入れられるようになってきました。しかし、ものづくりにとってみれば、それだけが大事なのではなくなってきたとも思うわけです。

 

たとえば、私たちが YouTube に求めているのは、映像の高画質化ではないのかもしれません。むしろ、イマジネーションをかき立てるような面白いコンテンツに積極的に関わることができるという場を提供している社会装置であることこそ YouTube がヒットした理由なのだろうと思います。

 

YouTube には大量の CGM(Consumer Generated Media)コンテンツがアップされています。ユーザーが求める「こんなことできたらいいな」や「こういうものを見てみたい」などの思い、いわばユーザーの「妄想」を再現する場を提供することが、今のものづくりに求められている大事な部分であるように思うわけです。

 

(NC工作機械で制作したトルーパー(右)これも「妄想」の具現化)

 

インターネットがもたらした、ものづくり「ルネサンス」

 

ものづくりの革新は、3Dプリンタに代表される、道具の進化によるものだけではありません。道具よりも、ものづくりをしている人たちがネットでつながり、自分のつくったものを他者にアピールすることができるようになったことが大きいと思います。「こういうものをつくってみた」とネットにあげれば「これは面白い」や「こうしたらもっと格好いい」などの反応が返ってきます。制作者同士が共鳴する状況が、現代のものづくり「ルネサンス」をもたらしたのだと思います。

 

 

ものづくりと「場」づくり

 

私は2004年から「サイバー鳴子」の制作を始め、2005年から YOSAKOI ソーラン祭りで販売を始めました。そこで、お客さんが鳴子を買っていく様子をみると、とてもうれしいんです。思わず「これ作ったのは僕なんですよ」と話しかけたこともありました。お客さんからは「これちょっと高いよ」と言われたり。でも、そのとき、ユーザーと制作者が直接出会って、意見を聞く機会があることはとても重要だと実感しました。ユーザーからの意見を聞くことで、自分の求めているものだけではなく、人が何を求めているかを知ることができるのです。だから、ひとりよがりではない、他の人も「面白い」と思ってくれるものをつくることができるようになる。それだけではありません、自分が作ったものをこの人が使ってくれるんだと思うと、制作者は手がぬけなくなるんですよ。ユーザーの顔を見ることで、制作者とユーザーの間の信頼関係が生まれてくるのです。だから、ものづくりには、他の人からのフィードバックを受けるために直接会って対話する「場」が大切なのです。

 

(サイバー鳴子について説明する青木さん)

 

制作者とユーザーの交流する場の創造:テクノロジーアート展

 

2008年に東京で、今の Maker Faire Tokyo の前身である Make: Tokyo Meeting が開催されました。じつは、私も出展者として参加したことがあるのですが、ものづくりを楽しんでいる人がこんなにたくさんいることに驚きました。

 

このような場が札幌にももっとたくさんあったら、と思ったのが、来年の2月20日に北大のクラーク会館で行なう「テクノロジーアート展」を企画したきっかけになっています。アートの定義にはいろいろな考え方があるかとは思いますが、個性を発揮する場をつくることもアートの大事な要素と思います。「心をとらえるもの」「役に立つもの」なにをつくってもいい。そして、市民がキャンパスに入って制作物を実際に見たり触ったりすることができ、制作者同士の感想を交換することができるような、北大ならではの場をつくれたらと思っています。

 

興味を持たれた方は、ぜひ、次のウエブサイトをご覧いただければ幸いです。

 

テクノロジーアート展:https://www.facebook.com/events/817351478383861/


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