バトンは、綿貫豊さん(水産科学研究院 教授)から工藤秀明さん(水産科学研究院 准教授)に渡りました。
札幌で生まれ育った工藤さんにとって、サケは秋になると必ず食卓にのぼる、身近な食材でした。しかも、子供時代には、“カンバックサーモン”を合言葉に、札幌市内を流れる豊平川にサケを呼び戻す運動が盛んで、“サーモン=サケ”は、工藤さんにとってなじみのある言葉でした。とはいえ「まさか自分がサケの研究をするなんて思わなかった」とのこと。
子供のころから、消防士、海上保安官、船乗りといった、制服を着る仕事に憧れていたという工藤さん。北大進学時、水産学部を選んだのは「船に乗りたい」から。もちろん頭の隅には”制服”という存在もついていました。でも船に乗るには、どうしたらいいのか工藤さんは考えました。思いついたのは、「海に関する研究だ!」。学部1年生のときに、サケの発生学を学んだことをきっかけに、生物学の研究を始めました。博士課程を終えると、地元を離れ、福岡の産業医科大学の解剖学助手となりました。シャケの回遊よりやや長い10年後、多くの先生方の力添えで、故郷の北海道に戻ってきました。
水産学部の授業では、やはり大好きな「船」に乗っています。おしょろ丸の実習では、約50人の学生が12日間の航海を体験し、流し網の実施などの実習を行います。2年前の5月には、ちょうど航海ルートだったこともあり、中・高時代の天文部の血がうずき、「学生にも金環日食を見せたい」と、乗船前に観察メガネを用意し、実習の合間を縫って見事撮影にも成功しました。
陸の上では、ラジコンヘリを使って、川に上ってきたサケを空中から追いかけます。川の上・中・下流にわけ、画像からサケの個体数や遡上数を分析するのです。練習用機から現在は4号機を稼働中です。ヘリ本体よりも、搭載する撮影システムのほうが高額で、資金面にも苦労しているとのことです。
実はカメラ好きだという工藤さん。本棚にクラシックカメラを発見しました。
しかしカメラよりも目を惹いたのは、シャケ・コレクション。
最後に研究の必須アイテム、最近導入したという最新のレーザー顕微鏡を見せてくれました。モニターに映る赤いフリルのように立体的見えるものは、シャケの鼻の断面図です。シャケがふるさとの川に戻るには、川のにおいを覚えているからとも言われています。
学生時代、顕微鏡写真がきれいだった事に感動し、今でも顕微鏡で見るのが大好きだそうです。「当時の教員に、“形態学はウソがない”と教わった。学生たちにもどんどんこの顕微鏡を使って研究を進めてもらいたい」。
次のバトンは、札幌キャンパスに戻り、上野洋路さん(水産科学研究院/環境科学院 准教授)に渡ります。