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#236 北大一人気な授業?!を担当している平本さんとは(1)~研究者としての一面と先生としての一面〜

この記事を読む北大生の皆さん、「社会体験ワークショップ」という授業をご存知でしょうか?
この授業では、北海道大学の卒業生が経営する企業や、北海道に根付く企業の方々を招いてお話をしていただくという特色ある取り組みが行われています。授業時間の90分のうち60分を質疑応答にあて、学生が積極的に参加しながら自分の将来について考えることができる点が特徴です。今年の初回授業では履修登録者の上限をはるかに上回る数の生徒が集まり、教室に入りきれず外で話を聞く人が出るほどの人気ぶりでした。
今回私たちは、この授業を担当されている平本健太さん (北海道大学 大学院経済学研究院 教授)にお話を伺いました。前編の記事では、独特の授業に込められた狙いについて、さらに「戦略的協働」をはじめとした平本さんの研究内容についても深堀りしてきました!

【関崎悠琥・総合理系1年/奥野美月・獣医学部1年/佐久間理子・総合理系1年/今村江奈・法学部1年/飯塚瑞人・総合文系1年/須藤孝埜・医学部1年】

全学教育「社会体験ワークショップ」の狙いとは?

関崎: この大人気の授業は自分も受講していて、主に1、2年生がこの授業を受けていると思うんですけど、こういうことを学んでほしいなどはありますか?

平本: 広い意味ではキャリア教育というようなジャンルとしてやっています。大学っていうのは社会に出る前の最後の学校なので、これから世の中に出ていくにあたって、自分がどんなキャリアを積むことになるのかなぁっていうイメージを少し膨らませるとか、自分の将来についてのイメージを作ってほしいなということを学んでほしいなと思います。

関崎: 将来のキャリアを少しでも想像できるためにも、いろんな業種の方のゲストスピーカーさんを招いていらっしゃるんですか?

平本: そうですね。毎年北洋銀行さんに企業のコーディネーターお願いしていて(※)、その時にバラエティに富んだ10社にしてくださいということは、最初からずっとリクエストしています。

※全学教育「社会体験ワークショップ」は平本健太さんと知人の宇野健司さん(元・大和総研)が、北洋銀行と共同で行っており、毎週ゲストスピーカーとして10社の北海道を代表する企業を招いています。

関崎: この授業は4年前(授業開始当初)から同じ方式で行っているのですか?

平本: だいたい同じ方式です。ただし、4年前はまだコロナの影響でほとんどオンラインだったんですね。で、ゲストスピーカーの方が教室に来るようになったのは一昨年からで、一昨年は半分ぐらい来たかな。去年は1社だけどうしてもオンラインだったんだけど、今年は10社すべてオンサイトですね。

関崎: オンラインでの授業と対面での授業で違うところはなにかありましたか?

平本: それはやっぱりね、その同じ空気を吸ってることによって伝わることっていっぱいありますよね。その場にいてくれれば、同じ空気を吸っていろんなことが見えるじゃない。よく人のコミュニケーションの9割は言語以外のノンバーバルなコミュニケーションだっていうけれど、まさにノンバーバルも含めてきちっとコミュニケーションを図れるといったところはオンサイトのほうが圧倒的にいいよね。

どういう人にこの授業を受講してほしいか

関崎: どういう人にこの授業を受けて欲しいか教えてください。

平本: できれば単位とか成績が目的じゃなくて、本当に自分のキャリアを考えたいとか、積極的にゲストスピーカーの人と関わりたいと思っている人たちにとってほしいというのが偽らざる本音です。

(カメラ目線の平本さん。明るく気さくな方で取材班の緊張もほぐれました)
平本さんの研究のキーワード「戦略的協働」とは?

佐久間: ところで、先生の研究を少し調べると「戦略的協働」という言葉が鍵となっていますね。

平本: あれは僕たちが使っている用語で、ほとんど他の人は使ってないですね。企業セクター、行政セクター、それからサードセクターと言われる非営利セクター、市民セクター、この3つのセクターが、一つまたは二つではなく三つ全部が関わって社会の課題を解決するような価値を作り出す、そういう協働のことを、戦略的協働と定義しています。

佐久間: なぜ一つや二つではなくて三つ全てが関わることが大事なんですか?

平本: それにはそれぞれのセクターが大事にしている資源を考えると整理できます。まず、企業のセクターは資本、つまりお金が資源となっていますね。政府とか行政のセクターは正当性が資源になっています。やっていいこといけないことが行政によって法律だったり条例だったりで決まっていて、行動に正当性を与える権限をもっているのが行政のセクターです。最後に非営利セクター。社会的に必要なんだけど、市場になるとうまくいかないような財を、従来は行政が担っていたんだけれども、お金が足りなくなると、どうしてもそれを何らかの形で一部行政から切り離さなきゃいけない。そこで注目されてきたのが非営利セクターです。そんな非営利セクターが持つ資源はミッションとか使命感です。こういうことをやらなきゃいけない、こういう社会にするべきだっていうことですね。
それぞれ持っている資源と、足りない資源っていうのが違うわけですね。だからこそ、それぞれの異なる資源を発揮しながら3つのセクターが一緒に集まって重なり合うことで、実現される社会的な価値ができるのです。だから三つ全てが関わることが重要なんです。

(平本さんの著書『戦略的協働の本質ーNPO,政府企業の価値創造』にある三つのセクターの関係図)
研究の大きなテーマや目指す先とは?

佐久間: 過去の研究内容をみると、協働とかコワーキングとか「関わり」みたいなものを重要視しているように感じたんですけれども、そういう概念が研究のテーマになっていたりしますか?

平本: 僕の専門領域って経営戦略論っていう領域です。個別企業の経営戦略、競争戦略にももちろん関心があるんだけれども、もう一方の隠れテーマは組織間関係論なんです。企業と企業の中の関係をつなぐのと、企業と企業の外の関係をつなぐためのインターフェースが情報システムであり、これが私が過去にやっていた研究内容です。だから若い頃は明示的に意識してなかったんだけど、関係性を明らかにすることがおそらく僕の興味の本質です。組織の中のクローズドな関係性というよりは、組織と組織の間の関係性に興味があったんだろうなと、研究を始めて15年ぐらい経って40代の半ばぐらいに気づきました。遅いよと思うんですけど(笑)

佐久間: 最後の質問ですが、平本先生の研究の最終的な目標を教えてください。

平本: 究極の問いですよね。大学院生の頃に、お世話になっていた先生のひとりに「平本君は将来どんな研究者になりたいんだ」って言われて、「本当に良い企業ってどんな企業かってのを明らかにしたいです」って言ったら、その先生が固まって、「はあ、それは究極の問いやなあ」って言ったんだよね。で、そうかな、そんな究極の問いなのかなと思ったんだけど、その時は。でもやればやるほどやっぱり難しいんですよね。だから、良き経営とは何かとか、良き企業とは何かということについての、まあ最終的にその自分なりの見解が出ればいいなと思って研究をしています。

(身振り手振りを使って明るく話して下さった平本さん)

前編では平本さんの研究内容を中心に、全学教育「社会体験ワークショップ」について幅広くお話を伺いました。ユーモアを交えながら分かりやすく説明してくださり、取材に赴いた私たちもかなり楽しみながら取材することができました。

後編では、幅広い友人をお持ちの平本さんに人との付き合い方を、ご自身の経験も交えながらお話ししてもらいました。

《後編に続く》

この記事は、関崎悠琥(総合理系1年)、奥野美月(獣医学部1年)、佐久間理子(総合理系1年)、今村江奈(法学部1年)、飯塚瑞人(総合文系1年)、須藤孝埜(医学部1年)が、一般教育演習「北海道大学の”今”を知る」の履修を通して制作した成果です。

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2025.10.08

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