南保明日香さんからのバトンは、遺伝子病制御研究所の梶田美穂子さんにわたりました。
滋賀県出身の梶田さん。小学生の時に、抗がん剤の副作用に苦しむ患者さんの記事を読んだことがきっかけで、「副作用のない抗がん剤を作りたい」と思い、研究者としての道を歩んできました。大阪大学を経て、2007年から約4年間、ロンドンで研究生活を送ります。北大では、細胞を立体的に見ることのできる特別な顕微鏡を使って、がん細胞を研究しています。研究に欠かせないのは、その顕微鏡と細胞。細胞は約マイナス196℃の液体窒素の中で保存します(下写真)。新しいがん治療に繋がる研究に手ごたえと充実感があり「今が研究者として一番充実しているかな」。
北大に来たのは、2011年。ロンドンの研究所で出会った藤田恭之さんに声をかけてもらったのがきっかけで、北大の藤田さんの研究室に助教として加わりました。梶田さんと藤田さんはロンドン時代に「ヤス」「ミホコ」と名前で呼び合っていたのだそうで、藤田さんが上司となった今も「ヤスが」と親しみをこめて呼んでいます。ちなみに、藤田さんは「身分はフラットに」がモットーで、研究室(通称ヤスラボ)の学生たちにも「先生」と呼ぶのを禁じています。「みんな、ヤス、とか、ヤスさん、と呼んでいるんです」
時には、研究に行き詰まりストレスがたまることもあります。そんなときのリラックスツールは、「歴史小説+スコッチウィスキー+お香」の組み合わせ。これが至福のひと時なんだとか。研究室でも、いろいろなところにスコッチウィスキーグッズを見ることができました。
(左)ラボメンバーの居場所を示す表。梶田さんは、ウィスキーのラベルでおなじみ、キング・オブ・ブレンダーのマグネットを使用。 (右)お気に入りの1品、アイラ島蒸留所見学で見つけた、シングルモルト・スコッチウィスキー「ラフロイグ」の瓶を模したUSBメモリー。
「理系女子」ですが、「歴女」としての顔もお持ちです。一番好きな歴史上の人物は竹中半兵衛。魅力を聞くと、「生き方が美しいんですよ!!! “男”ではなく“漢(おとこ)”という漢字がぴったりくると思うんです!」と力説していました。君主に忠義を尽くし、信長の誘いには簡単になびかなかった軍師の、一本筋の通った潔さが魅力だとか。「稲葉山城を占拠したときの鮮やかさ、またそれを放棄したときの潔さ、欲がなく、その後は秀吉の補佐に徹した生き方も魅力ですね。」
子供の頃からの夢を実現させた梶田さんにも、一本 筋の通った潔さを見た気がしました。
梶田さんのバトンは、免疫学が専門の和田はるかさん(遺伝子病制御研究所講師)に渡ります。お楽しみに!