渡辺さんがギターを始めたのは高校生のとき。「1日さぼるとひけなくなっちゃうからね」と、調査で乗船する際はもちろん、学会などで長期出張する際にも持っていきます。研究室の隅におかれたギターもよく手入れされているようす。聞かせてほしいと言うと、「人前ではあまり演奏しないんですよ」と照れ笑いで断られてしまいました。奏でるのも聞くのも、主にジャズだそうで「聞くのはピアノジャズが好き。特にビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」など良いですよ、ベタですけど」。研究の息抜きに奏でるだけでなく、ジャズを聞きながらだと仕事もはかどるそうです。
北海道大学出身の渡辺さん。「海の中で水が層になって流れていることで、気候や生態系に影響していることが知られています。この海洋循環の研究がしたくて水産学部に入ったんです」。いまでは、海洋循環の中でも大気と海との物質のやりとりに着目し、化学を使ってアプローチしています。分析に使っているのは、学生が手作りしたという分析機械。機械を自作することで、分析の原理原則をきちんと理解することができるといいます。金属線がむき出しの外観をみながら、「作った学生が見た目にこだわらない性格だったので手作り感のある外見になったけど、ちゃんと測れるんですよ」と愛着たっぷりのようす。
高校での出前授業を頼まれることも多いそう。「地球を30cmの大きさにすると、太陽はどのぐらい遠くにある?」「太陽の光は、何分前に太陽から放たれた光?」など、地球の大きさや成り立ちなどをクイズのようにして紹介していきます。「学部生の授業も同じ。生徒とやりとりしながら、双方向性の授業を展開するようにしています。目を伏せる学生を積極的に当てたりしてね(笑)」。でも、大学院の授業は別で、とびきり難しいのだとか。大学院生として、学部生とはレベルの違うステージにいる自覚を持ってもらうため、だそうです。分からない学生も多いのでは?と尋ねると「知らない、分からない、と言えることは学生の特権。学生の時代に恥をかくことはよいことなので、どんどん学んでいってもらいたい」と語ってくれました。
次は、元アイソトープセンター教授、安全衛生本部の関 興一さんにバトンがわたります。お楽しみに!