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#23 2014年冬、「はやぶさ2」いざ宇宙へ!

小惑星探査機「はやぶさ」は、数々のトラブルに襲われながらも、それらを乗り越え、打ち上げから7年後に地球への帰還を果たしたことで大きな話題となりました。「はやぶさ」の映画が3本も製作されたことも有名です。

その後継機「はやぶさ2」の開発が、2014年度中の打ち上げに向け、急ピッチで進められています。「はやぶさ2」試料回収チーム・初期分析チームの主任研究員を務める橘省吾さん(理学研究院 准教授)にお話を伺いました。

【匿名・総合教育部法学1年】

(橘さんと「はやぶさ2」ミッションパッチ)

「はやぶさ」から「はやぶさ2」へ

小惑星探査機「はやぶさ」は、小惑星への往復探査に必要な技術であるイオンエンジンを実証することを目的に開発されました。2003年5月に打ち上げられ、2005年9月に目的の天体である小惑星イトカワに到着。その表面から物質を採取し、2010年6月に地球に帰還しました。地球と太陽の距離の約40倍に相当する、往復路約60億kmという大航海です。

その間4万時間、イオンエンジンは動き続け、宇宙空間における世界最長稼働記録を達成しました。「はやぶさ」はイオンエンジンが長距離探査に有効であるということを証明したのです。

(「はやぶさ」と小惑星イトカワのイメージ図)〈©池下章裕〉

 

しかし「はやぶさ」の帰還には数々のトラブルが伴いました。今回の「はやぶさ2」プロジェクトではトラブルを起こさない機体を作り上げ、小惑星からのサンプルリターンに再挑戦し成功させることが目標です。

(小惑星から石を採取する「はやぶさ2」のイメージ図。サンプラーホーンと呼ばれる機体の下に張り出した円筒を通して、小惑星表面の石が機体内のコンテナに収納されます)〈©池下章裕〉

 
リベンジ!小惑星の石を回収せよ!

「はやぶさ2」でも「はやぶさ」と同様に、試料回収時にサンプラーから弾丸を打ち出し、それを小惑星表面に当てることで舞い上がった石を採取する方法をとります。この方法には小惑星の表面が砂でも岩でも、試料を採取できるというメリットがあります。

しかし、弾丸が発射されなかった「はやぶさ」の失敗を受け、はやぶさ2ではさらなる工夫をしています。

(サンプラーについて図を描いて説明する橘さん)

「今回の探査では確実にサンプルが回収できるよう、万が一弾丸をうたなくても、着陸するだけで石が回収できるようにサンプラーを改良しています。他にもサンプルを回収する箱の構造と数を変更するなど、最大限の科学的成果を得られるように設計しています」と、理学の観点からサンプラーの設計をとりまとめる橘さんは説明します。

(サンプラーの改良点。サンプラーホーン先端(写真左)の内側に幅2mm、長さ4mmほどの薄板状のツメがびっしりと並べられている(写真右)。これで最大1cmの小惑星表面の石をすくい取る)〈©JAXA〉

 
太陽系と生命と水のルーツを探る旅へ

「はやぶさ2」が狙うサンプル、小惑星の石にはどのような意味があるのでしょうか。そこには約45億年前の太陽系誕生の謎を解く鍵があると考えられているのです。

今回「はやぶさ2」が目指す1999 JU₃と、「はやぶさ」が到達したイトカワの大きな違いは、その中に含まれる物質にあります。イトカワとは違い、1999 JU₃は有機物を含むような隕石と似た物質でできているのではないかと考えられています。そのような隕石は一般にイトカワのような熱による変成をあまり受けておらず、水を構造に含む鉱物も含んでいます。つまり、1999 JU₃はおよそ46億年前につくられたままの状態が保存され、その中には海や生命を作り出した水や有機物も含まれている可能性もあるのです。

(「こんなの入ってたら泣きそうに嬉しいですね」と言って見せてくれたのは1999JU₃と似た組成を持つマーチソン彗星のかけら。1969年にオーストラリアに飛来した隕石です)
「石の声」を聞く、サンプルの分析

2020年、地球への帰還が予定されている「はやぶさ2」。持ち帰った石を分析するチームを取りまとめるのも、橘さんの役割です。

現在、橘さんは「石の声を聞く」ための準備として、実験室に誕生直前の太陽系や生まれたばかりの太陽系を再現して、惑星や小惑星の材料がどのようにつくられ、進化したのかを調べる実験をしています。

(太陽系が誕生する直前の低温の「分子雲」での氷や有機物の進化を調べるための実験装置)

橘さんはこうした実験装置で、これまで宇宙での物質の進化を再現してきました。「1999 JU₃から持ち帰られるサンプルには、太陽系の誕生以前の出来事から小惑星の中での有機物の合成、現在も受けている太陽からの影響など複雑な歴史が刻み込まれていると思います。その歴史を紐解くのは簡単ではないかもしれません。だからこそ楽しみなのですが、事前に実験をして、こういう条件ではこういう物質ができるということを調べておいて、石の声をしっかりと聞きたいと思っています。」と橘さんは語ります。

海外の研究者との協力と競い合い

小惑星からサンプルを採取し、持ち帰る計画はアメリカでも進められています。OSIRIS-RExと呼ばれる小惑星探査機の打ち上げは2016年、小惑星の石が帰還するのは2023年。「はやぶさ2」が少し先行しています。

「はやぶさ2」とOSIRIS-RExはライバル関係にありますが、お互いに協力しあう仲間でもあります。橘さんは最高のサイエンスを実現するために、アメリカはもちろん、世界の研究者と日々ディスカッションを重ねています。

(NASA開発の小惑星探査機「OSIRIS-REx」のチームメンバーと談笑する橘さん)〈写真提供:橘さん〉

このインタビューの前後も「はやぶさ2」に関する海外出張と打合せで大忙しだった橘さん。ありがとうございました! 「はやぶさ2」の成功を祈っています!

橘さんが執筆された本が最近出版されました。太陽系の成り立ちに関する研究について、より詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

  • 『宇宙と生命の起源2 ― 素粒子から細胞へ』小久保英一郎,嶺重慎 編著(2014)
    第6章 太陽系の元素は銀河系から 橘省吾

この記事は、総合教育部法学1年の学生が、一般教育演習「北海道大学の”今”を知る」の履修を通して制作した成果です。

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2014.09.09

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