大野栄三さんからのバトンを受け取ったのは、理学研究院の鈴木久男さん。専門は理論物理学。さらにクリッカーや独自に開発した教材を使い、学部生向け基礎物理学の教育にも力を注いでいます。クイズ番組のようにテンポよく展開される授業は、学生の間で話題となり、日本テレビ「人生が変わる1分間の深イイ話」で取り上げられました。
研究室にお邪魔すると、デスクトップに映し出された美しいバラが目に飛び込んできました。鈴木さんの趣味はバラの栽培。自宅で70種類ほどのバラを育てているそうです。「バラはすぐ病気になるので、気が抜けないんですよ。」
鈴木さんの専門は理論物理学。重力のように「物質にはたらく力」について研究をしています。さらにクリッカーや独自に開発した教材を使い、学部生向け基礎物理学の教育にも力を注いでいます。
クリッカーとは、学生全員に名刺サイズのリモコンを配り、手元で投票してもらうシステム。学生たちの理解度を確認するために「この問題の答えは、1 番から4番のどれでしょう」と質問を投げかければ、それぞれの番号を選んだ学生の数が、棒グラフとなってスクリーンに映し出されます。2007年に導入してから、クイズ番組のようで楽しい、と学生からの評判も上々で、画期的な授業としてテレビ番組『人生が変わる1分間の深イイ話』に取り上げられました。さらに「正解を発表する前に一瞬の“ため”を作るとメリハリが生まれます。」と授業を盛り上げるコツも教えていただきました。
「学生たちの理解度は、教員側の解説の良し悪しにも関わっています。学生の反応を瞬時に把握できるから、教員も教え方を工夫しようと努力します。 自己流の教え方に自信が持てなかった時期もありましたが、クリッカーを使ってからは、学びのツボがどこにあるのか見えるようになりました。」
クリッカーは教員のためのシステムでもあるのですね。
鈴木さんがクリッカーに出会ったのは7年前。初心者向け教育方法の視察に行ったアメリカで衝撃を受けたそうです。「当時の日本にはクリッカーがな かったため、日本で展開してくれる会社を海外で見つけてきました。だから、日本で初めて使ったのは北大なんですよ。」いまでは、多くの大学に普及しました。
最近は、パソコンやiPad用の電子教科書の制作にも取り組んでいます。電子版には写真やイラストだけではなく、動画も盛り込むことができます。 「物理が扱うものは“運動”ですから、動画の方がわかりやすいんです。」プロが使うソフトを駆使して、自らアニメーションを作るほどの腕前。鈴木さんが制作した『科学・技術の世界 ゼロからはじめる「科学力」養成講座』は北大のオープンコースウェアでも公開され、誰でも見ることができます。
「自己流で授業をする大学教員が多いと思います。しかし、研究と同じで、教員同士の経験や使っている教材を共有しあい、改良を積み上げていくことで、質の高い教育に繋げていきたいのです。」
さて次回のランナーは、鈴木さんの教え子でもある山田邦雅さん(高等教育推進機構准教授)です。お楽しみに!