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#230 サンゴの時空旅:Kure Atollの秘密が語る地球の物語

「君が出す研究結果は世界初だ!」と教授に言われた2023年6月、私の研究は始まりました。ハワイの最北西に位置する環礁「Kure Atoll」に生息しているサンゴの骨格を分析することで、過去の水温とその変動傾向を考察するのが目的です。Kure Atollは他の環礁とは違って緯度が高く、様々な海の流れや風の影響を受けやすいような場所にあるのが特徴です。そして、これまでここでの調査は行われたことがありません。そこに魅力を感じて、この研究を始めることにしました。

【中山夢斗・理学院修士2年】

 
Kure Atoll(クレ環礁)ってどんなとこ?

私の研究を語るには、まずKure Atollとサンゴについて話しておかなくてはなりません。環礁とは、隆起してできた地形の周りにサンゴが多く生息するようになりできた島のことを言います。Kure Atollはハワイの最北西に位置します。熱帯気候の下にあり、暖かく透明度の高い海水が特徴です。また、環境保護区として2000年から人間が一切立ち入ることができなくなりました。このこともあり、この島では、現地での水温や降水量の測定が1900年までしか進んでいません。

(Allen H Andrewsら(2016)を一部改変)
サンゴの世界へようこそ

さて、さきほど環礁とはサンゴの島だと説明しました。では「サンゴとは?」ときかれたら何を思い浮かべますか?・・・海・・・綺麗!・・・南の島!!・・・すべて正解です。そうです、サンゴは南の島の暖かい海に生息している綺麗な生物なのです。サンゴの研究ときくと生態系研究のイメージが強いと思いますが、そんなサンゴを使って私は、おそらく皆さんが想像もしないちょっと変わった角度から研究をしています。サンゴは驚くべき力を持っているんです。

それは、サンゴを使用して、過去の水温や海流、降水量などを推測するという研究です。サンゴを使用して、どうやって過去のデータを推測するの?と疑問に思いましたよね?今回は、この研究の手法について、私の研究を踏まえてお話ししたいと思います。

サンゴはどんな生き物?

サンゴは、温暖で浅い海域、主に熱帯や亜熱帯の海域に見られ、浅瀬やサンゴ礁、岩礁、砂礁などに生息します。サンゴ自体が生物の住処になり、生態系を豊かにすることで有名です。また、サンゴには「褐虫藻」と呼ばれる藻類がすんでおり、彼らは太陽光で光合成を行いサンゴに栄養を提供します。あの鮮やかなサンゴの色彩はこの褐虫藻によるものなのですが、水温変化や日射量の低下などの環境ストレスを受けると、サンゴは褐虫藻を手放してしまいます。するとサンゴが色を失って白くなる「白化現象」が起こります。栄養の供給源を失ったサンゴは、やがて死んでしまいます。

(サンゴと褐虫藻の共生関係と、白化現象のメカニズム)
サンゴを「測定」する

サンゴと褐虫藻の話はこれぐらいにして、さぁ、そろそろ私の研究の中身を覗いてみましょう。あらためて、私の研究は、サンゴに含まれている化学物質の量と場所を測定することで、例えばいつごろ水温がどのぐらいだったかを「復元」したり、傾向などを調べるというものです。サンゴを「測定」するには、何段階もの準備の作業が必要です。掘削→X線撮影→カッティング→ミリングという工程を経て、やっと測定できるようになります。

(サンゴを掘削中)

まず、サンゴの一部を掘り採取します。採取してきたサンゴをX線撮影し、サンゴが成長していく方向を特定してカットします。実はサンゴにも年輪があり、それをX線撮影により観察するのです。白い線と黒い線の1セットで1年(「1バンド」といいます)とします。実際の写真がこちらです。皆さんも、このサンゴが何歳なのか年輪を数えてみてください!

(正解は「63歳」でした!)

この年輪から、採取したサンゴが西暦何年から何年のデータを持っているのか特定することができます。その側面を「ミリング」という機械で0.1mm間隔で削って粉にすることで、やっと測定のための準備が整います。50cmもあるサンゴを削っていくのですが、0.1mmを削るのに6分かかるので・・・恐ろしいほどの時間がかかるのがわかると思います。

サンゴの年齢を「月解像度」で調べる

このミリングという作業が研究のミソです。計算では、1バンドにつき12サンプル以上取れれば、月ごとの測定が可能になる仕組みです。こうして、我々の研究室の最大の強みである月ごとの詳しい測定、いわゆる「月解像度」での測定ができるのです。

(ミリングのイメージ)
いよいよ測定開始!!

ここまでの工程を経て、さあやっと測定に入ることができます・・・が、安心するのはまだ早い。ここから更なる試練が待っています。ICP-OESという化学物質の量を測定する機械を使用するのですが、この機械、95サンプル測定するのに8時間もかかるんです。50cmのサンゴから採れる粉は5000サンプル。5000÷95・・・考えるだけで気が遠くなりますね。

(この機械で測定します)
なんでサンゴの世界へ?

自然や生物が好きな人にとってきっと憧れの地、西表島。私の将来は、この島によって作られました。この島でダイビングをしたことのある人なら、その理由がわかると思います。ダイビングで見られる景色は、私の中で一番だと思います。そんな中、ひときわ輝いていた美しい花のような生き物、それがサンゴでした。そんなサンゴに、ひ・と・め・ぼ・れ してしまいました。どんな生物?どんな生活史?どのように加工される?など、気づいたら陸にいる時もサンゴのことばかりを考えるようになっていました。皆さんはもうお気づきでしょう。「恋」です。

中山夢斗 23歳。あの時からずっと、サンゴに恋をしています。

 

参考文献:

  1. John J. Rooney et al., Geology and Geomorphology of Coral Reefs in the Northwestern Hawaiian Islands (2008).
  2. Yves J-P Veillerobe et al., A THESIS SUBMITTED TO THE GLOBAL ENVIRONMENTAL SCIENCE(2004).
  3. R.W. Grigg Darwin Point: A Threshold for Atoll Formation Coral Reefs (1982)1:29-34 (1982).

この記事は、中山夢斗さん(理学院修士2年)が、大学院共通授業科目「大学院生のためのセルフプロモーションⅠ」の履修を通して制作した作品です。

中山さんの所属研究室はこちら

理学院 自然史科学専攻 地球惑星システム講座 渡邊研究室(渡邊 剛 教授)

 

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2024.10.18

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