いいね!Hokudai

  • About

Categories

  • 歳時記
  • クローズアップ
  • フレッシュアイズ
  • ジョインアス
  • チェックイン
  • 匠のわざ
  • ようこそ先輩
  • バトンリレー
  • みぃつけた
  • おいしいね
  • 過山博士の本棚から
  • フォトコンテスト

#29 綿貫 豊さん(水産科学研究院 教授)

バトンは、綿貫 豊さん(水産科学研究院 教授)に渡りました。

長野県で山を見ながら育った綿貫さん。海鳥研究(繁殖)の第一人者です。鳥の研究をしたいと北大農学部に入学した綿貫さんと、山ではなく「海の鳥」の出会いは、学生時代。天売島に1週間キャンプをしたことがきっかけでした。7月はじめの天売島は、ちょうどウトウの繁殖時期です。周囲わずか12キロの小さな島に、数万単位のウトウが飛来するその光景に圧倒され、「研究してみたい!」と思ったそうです。しかし「当時は日本に海鳥の研究者はいなかったんですよ」。ライバルはいなかったのですが、アドバイザーもいない状況でした。卵の採り方、測り方が分からない。ウトウが餌とする種類を突き止めて「大発見だ!」と喜んでも、既に海外で発見されていることもあったといいます。情報は海外の論文のみ。英語と日々格闘したそうです。

手にしているのは、天売島の絶滅危惧種、オロロン鳥の模型。この模型をオトリとして、オロロン鳥が繁殖しそうな崖にたくさん並べます。そこに繁殖場所だと思った鳥が寄ってきて、卵を産みます。「最初は、広い岩場に設置したので、カラスに卵を取られました。でも翌年からは、場所を変えてカラスが止まりにくい狭い岩場においたら、うまくいったんですよ。既に10羽のつがいが産卵し、3シーズン目を迎えます。」前例がない調査は1つ1つ確認しながら進めます。

フィールドワークを大事にする、綿貫さん愛用の調査道具です。右手には、耐水性の野帳(フィールドに持っていくためのノートのこと)。中には、鳥の認識番号、巣の番号、性別などが書き込まれています。左手の双眼鏡は、就職して初めて買った愛用品で、26年近く使っています。中央に刻まれた “West Germany” がその年代を物語っています。そしてもう1つ欠かせないのが、馬の並んだブランドの長靴。もう何代目かは数えられないそうですが、学生時代から調査には欠かせない相棒です。

魚捕獲の瞬間を撮影したのは、先端に小さなレンズがついている、10cmほどの小型機器です。これで1分おきに3日間分の写真を撮ることができます。一緒にGPS(手前)も取り付け、得たデータから、海鳥の行動範囲、生態、餌などの情報を分析します。ウミネコが餌をとるのは海の表面、ウトウは少し潜ったところ、ウミウはさらに潜り、海の底にいる魚を食べます。またGPSのデータからは、海鳥の行動範囲がわかります。

こういった小型機器(データロガー)を、海鳥に取り付ける方法を見つけるのにも、一苦労ありました。今から約26年前、極地研究所の勤務時代に、南極のアデリーペンギンの調査を計4回行いました。綿貫さんのチームは、エポキシという強力な接着剤で、ペンギンの羽にくっつける方法をとっていましたが、剥がす際に羽を傷めます。一方、ドイツのチームは、特別なテープで、機器を巻きつける方法でした。綿貫さんは、その方法を論文で読んではいましたが、半信半疑だったそうです。しかし、現場で、多くの海外チームがその方法を使い、安定的なデータを得ていることを知ったのです。

機器取り付けに使うテープ。

当時を振り返り、「それまで国際的なプロジェクトへの参加経験がなかったので、南極で海外の研究者と多く出会えたことは、情報交換の機会、交流の場としても、とても貴重でした。」

「自分たちが学生の時代には、仲間同士、時に無駄話をしながら研究を進めたものです。そんな自由な中から、たくさんのひらめきが生まれました。今の学生たちにも、たとえ与えられた研究テーマであっても、自ら方向性のちがう “なぜ?” を見つけて欲しいと願っています。」

研究スタイルを自ら切り開いてきた綿貫さん。そのスピリットが次世代にも受け継がれるといいですね。

他教室の学生と一緒にコーヒータイム

次のバトンは、鮭を研究している工藤秀明さん(水産科学研究院 准教授)にわたります。

Information

Update

2014.05.30

Categories

  • バトンリレー
  • Twitter

投稿ナビゲーション

Previous
  • 歳時記
札幌にも田植えの季節がやってきました。
2014.05.29
Next
  • 歳時記
札幌キャンパスに大鷹?
2014.06.03

Related Articles

    • バトンリレー
    いいね!Hokudaiシリーズ記事、総点検〜音声コンテンツ「中の人会議」シリーズ〜
    2024.01.09
    • バトンリレー
    #45 中の人会議 第4回 ~高機構前、新聞とともに~
    2023.12.07
    • バトンリレー
    #44 中の人会議 第3回 ~いいね!Hokudai南へ~
    2023.08.09
    • バトンリレー
    #43 中の人会議 第2回 ~元祖と本家~
    2023.05.26
いいね!Hokudai
Official
Site